いつものようにRoonのボスのEnno Vandermeer氏とやり取りするなかで
「いつもRoonをサポートしてくれてありがと! こっちで協力できることがあれば何でも言ってね!」
と言われたので、いろんな意味で
「ミュンヘンで見たRoon Readyのサインがほしいなー……」
と言ってみたら、
「よし送るわ」
ということで、もらった。
これでも私もRoon Readyだ。
本国のお墨付きである。
しかも光る。
それにしても、LUMIN A1より前に私自身がRoon Readyになるとは思わなんだ。
「音源の管理運用」という観点から、私はRoonのことをかつてない魅力を持つソフトと捉え、様々に紹介してきた。RoonはPC/ネットワークオーディオの領域において常に暗い影を落としてきた「音源管理」の問題を解決する有効な一手となり、クラウドの音源にまで拡大する「音楽の海」は紛れもなく未曾有の体験だ。
一方で、私は既存の優れたプラットフォームの価値を最大限認めてきたし、今でもその立ち位置は変わらない。
例えばLINNやLUMINをはじめとするOpenHome陣営は、「OpenHomeであること」と「優れたユーザビリティが実現されること」がほぼ同義になるまで成熟が進んでいる。OpenHomeはユーザー自身の意思を反映させたライブラリを活用するための極めて洗練された方法であり、Roonが登場したところでその価値は揺るがない。
Roonは単独で万全・完璧なソフトではないし、従来のシステムを否定・駆逐するものでもない。決して馬鹿の一つ覚えでRoonを紹介しているのではない。
「素早く聴きたい曲に辿り着いて再生する」という純粋な音楽再生用途を考えれば、Roon色で染め上げられたライブラリの諸相はユーザーの認識と乖離してスムーズなブラウズを妨げ、インターフェースのデザインは膨大な情報の活用を意図しているせいで煩雑にしてまどろっこしい。また、当然「魔法」にだって限界はある。
そして何より、Roonを使うからといって、ユーザーの手による音源管理とライブラリ構築の必要性が消えてなくなるわけではない。インポートした音源に自らのデータベースから情報を付加できなかった時、Roonが最終的に頼るものは、結局ユーザー自身が付加したタグなのだ。
実際に私は自分自身でライブラリを構築し、OpenHomeのシステムで、それらがもたらす素晴らしい快適性を享受してきた。今後もそれを捨て去るつもりはない。
他のプラットフォームの価値を認め、実感しているからこそ、今までずっと音源管理の必要性と重要性に向き合い、実践の難しさを痛感してきたからこそ、今までにないRoonの魅力も分かるのである。
素晴らしいプラットフォームは幾つもあり、Roonとは体験の質が違うのだから、一人のユーザーとして、それぞれ否定し合うことなく、両立・共存することを切に願っている。
私はネットワークオーディオに大きな可能性とオーディオの未来を見出し、その意義と魅力を紹介してきた。
その意味で、まさに同じ志を共有する者として、Roonとこのような繋がりが得られたことは非常な喜びである。
Roonに限らず、何に対しても無条件かつ全面的な礼賛をするつもりは毛頭ないが、胸を張って良いものを良いと言える姿勢はこれからも貫いていきたい。