【ネットワークオーディオTips】続・理想のネットワークオーディオプレーヤーを考える

理想のネットワークオーディオプレーヤーとは?

 前回の記事から1年以上が経った。
 LUMIN A1を導入したり、OpenHomeなるものを新たに知ったりしたので、色々と違うものが見えてきた。

 なお、この記事で登場する「ネットワークオーディオプレーヤー」とは、「データ処理としての音源再生機能」を有する機器を指す。
 DACを内蔵するか否か(すなわちプレーヤーかトランスポートか)は関係なく、ストレージを内蔵するかどうかも関係ない。

 今まで数えきれないくらいに繰り返していることだが、ネットワークオーディオのシステムにおいて、コントロールはプレーヤーから独立している。
 同じコントロールアプリを使用する限り、プレーヤーを入れ替えたところでユーザビリティには何の変化もない。「特定のプレーヤー専用に作り込まれたコントロールアプリ」が存在することもまた事実だが、それはそれ。
 「音楽を再生する・停止する」といった純粋な操作のみにとどまらず、「ライブラリを閲覧し、聴きたい曲を選び、聴きたいように聴く」という音楽再生に関わる全領域をコントロールアプリが担うことになる。
 そのため、ネットワークオーディオにおけるプレーヤー――ネットワークオーディオプレーヤーとは本来非常に受動的な存在だと言える。ユーザーが手を触れる要素は皆無であり(電源を入れる程度)、プレーヤーの仕事といえばもっぱらサーバーから配信されてくる音源を黙々と再生することのみ。少なくとも音楽を聴く際、ユーザーがプレーヤーの存在を意識する必要は何もない。
 コントロールアプリは言うに及ばず、サーバーと比べても、プレーヤーの「機能」でユーザーが気にしなければならないものは著しく少ない。精々再生可能な音源のスペック程度だ。だからこそ、【ネットワークオーディオTips】において「プレーヤー」の章は「サーバー」と「コントロール」の後に位置付けてきた。

 しかし、「同じコントロールアプリを使用する限り、プレーヤーを入れ替えたところでユーザビリティには何の変化もない」ということを実現するためには、まずプレーヤー側が「快適な音楽再生を実現・保証するプラットフォーム」として機能する必要がある。
 そして残念なことに、それを実現しているプレーヤーは必ずしも多くない。

 というわけで、あらためて考えてみたい。

 理想のネットワークオーディオプレーヤーとはどのようなものか。

○ユーザビリティ全般

・対応フォーマット
 馬鹿馬鹿しいハイスペック論争に涼しい顔で付いていけるだけの対応フォーマットの広さ、あるいはアップデートで対応幅を広げられる余地が必要。
 PCのように再生ソフトを使い分けるなんて芸当はできないので、割と重要。

・ギャップレス再生
 対応しないプレーヤーはさすがにもう存在しないと信じたいが……

・オンデバイス・プレイリスト(On-Device Playlist)
 この記事を参照。
 これがないと音楽再生機器として論外である。

・完成度の高い専用コントロールアプリ
 優れた汎用アプリも色々とあるので、これはあくまでオマケ程度。
 ただし専用アプリの完成度が他と隔絶するレベルにある場合、そのアプリの存在をもってプレーヤーを買う理由にも十分成り得る。

UPnP/DLNAohMedia、他
 大多数のサーバーの組み合わせを考えればUPnP/DLNA対応は必須。
 OpenHome対応はプレーヤーが「快適な音楽再生を実現・保証するプラットフォーム」として機能することの端的な証明に成り得る。
 さらなる汎用性を求めるなら、NFSやらCIFSやらFTPSやら、その手のプロトコルにも対応すればいい。

○ハードウェア全般

・オーディオ機器としての作り込み
 あえて「音質」とは言わない。
 ユーザビリティに一抹の不安もないとすれば、あとはオーディオ機器としての完成度をいくらでも追求できる。
 筐体のクオリティという意味ではLINN KLIMAX DSがいきなり完成形を提示したし、SFORZATO DST-01やLUMIN S1/A1がそれに続いた。
 内部の設計についてはそれこそ各メーカーの腕の見せ所。
 最後は音を聴いて、どう感じるかの勝負。

・ディスプレイ
 だから要らないって。
 私が考えるに、『2001年宇宙の旅』に出てくるモノリスのような形状こそ、ネットワークオーディオプレーヤーの理想である。

・ストレージを内蔵するか否か
 メーカーの考え方次第。
 そしてそれをメリットと取るか否かもユーザー次第。
 もっとも、私は「音源の保存と配信」という要素はあくまでサーバーとして独立させるべきだと考えている。

○その他

 例えば、再生可能な音源のスペックは使用するDACチップで上限が決まってしまう。
 このように、ソフトウェアの改善だけではどうにもならない部分もある。
 機器はそのままに基盤交換等によるアップグレードが提供されるとしたら、ユーザーからすれば非常に喜ばしい。
 メーカーによるアップグレード・パスの提供は将来の不安を払拭するだけでなく、ブランド・ロイヤルティの醸成にも大きく寄与することは想像に難くない。

 対応する音源のスペックを誇るのもいいが、大切なのは「快適な音楽再生を実現・保証するプラットフォーム」であることだ。
 ネットワークオーディオプレーヤーという製品ジャンルのさらなる盛り上がりを願う。
 
 

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