魔境注意。
今回の魔境はかなり深い。
興味のない人は今すぐ回れ右。
見たくもない魔境を目にして不快な思いをさせる意図はない。
これからネットワークオーディオを始めようと意気込んでいる人も、こんな話題はネットワークオーディオの本質とは何の関係もないので、特に気にする必要はない。
「ハブで音が変わるとかwwwwwwwwww」という反応は一般的に考えて至極当然であり、正常であり、普通であり、これが現実である。
ではなぜこんな魔境に踏み入るかというと、困ったことに、悲しいことに、私はオーディオマニアでもあるからだ。良い音が実現される可能性があるのなら、興味と意欲と資金が続く限り(ここ重要)どのような営為にも手を染めるという性には逆らえない。
結果的に何かしらの効果が認められれば、一般的には笑い飛ばされるだけという現実は変わらずとも、少なくとも良い音を求める者にとっては価値が生じるのである。
良い音を求めるという営為はただそれだけで楽しい。
一方で、私は常にオーディオマニアとしての私を疑い、監視し、批判し、笑っている。
たとえオーディオの深淵に囚われるとも、自分は深淵にいるのだと判断できる心をその縁に留め置かなければ、様々な意味でのバランス感覚が失われて破局を迎える未来しか見えない。立ち位置の自覚とバランス感覚。
つまるところ、この記事はある種の笑い話として捉えるくらいがちょうどいい。
繰り返すが、こんな話題はネットワークオーディオの本質とは何の関係もなく、ネットワークオーディオ本来の価値とは無縁のものであることを強調しておく。
前置きという名の申し開きはした。
さて、ネットワークオーディオには必然的にネットワークが必要になる。
でもって、接続の安定性の観点から、サーバーもしくはプレーヤーを担う機器は有線での接続が基本となる。
そのため、設置その他諸々の条件から無線LANルーター一台で全ての機器の有線接続を賄えない場合、望むと望まざるとにかかわらず、何らかのハブ(スイッチングハブ)が必要になる。
コレがうちの環境。
ラックの向かって右側にハブを置き、そこからLUMIN A1とLUMIN L1に繋いでいる。ハブには部屋の後ろにあるAV機器用のハブからケーブルをさらに引っ張ってきている。
使っているハブはコレガのBSW08GTX。
金属筐体のそこそこずっしりしたギガビットハブで、今の部屋がおおむね仕上がった三年ほど前から使っている。以来一度の動作不良を起こすこともなく、数多のネットワークオーディオ実験を共にしてきた。
ちなみにトラバーチンの重りを置いているのは、凶悪に硬いaudioquest Vodkaを接続すると筐体が浮いてしまうからである。見た目はアレだが仕方ないね。
なぜコレガのコレを選んだのかは正直なところ覚えていない。
どうせ上記のように設置の関係で必要に駆られ、何となくプラスチックより金属筐体の方がいんじゃね? という発想でしかなかったと思うが。
とにかく、BSW08GTXはハブとして何ら不満を感じさせるものではなかった。
ところが困ったことに、悲しいことに、私はオーディオマニアだった。
特にQNAP TS-119にアナログ電源を使うと音が変わるという体験をして以来、忌々しくも振り払い難いある思いが胸中に渦巻くようになってしまった。
ハブで音は変わるか?
この手の話は何も今に始まったものではなく、LANケーブルほどメジャーではなくとも、ネットワークオーディオの黎明期から繰り返し語られてきたものだ。
で、私のこの手の話に対する態度は今も昔も変わっていない。
別に変わってもいいけど、そんなもん気にする前にやることがあるだろ!
【音源管理の精髄】&【ネットワークオーディオTips】を一通り書き揃え、やることをやったと判断して魔境探検を記事にすることを解禁してからも、ハブの問題は常に喉に刺さった小骨であり続けた。
実際、BSW08GTXはシステムに直接的に接続されている機器の中で唯一「オーディオ用途を一切考えていないスイッチング電源」を搭載している。
スイッチング電源を悪く言うつもりは毛頭ない。しかし、先のTS-119での経験もあり、困ったことに、悲しいことに、オーディオマニアである私は「ひょっとしたら悪影響を与えているかもしれない」との不安を抱いてしまった。
というわけで、ハブで音が云々というよりは、ハブの中のスイッチング電源に意識が向いていた。「ハブで音を良くする」なんて発想はそもそも存在せず、あくまでも「ボトルネックを排除する」という方向である。
ここにきてBSW08GTXの製品仕様が問題になった。
これではTS-119のような対策を打てない。
BSW08GTXには何の罪もない。
悪いのは数年前に今日の状況を予見できなかった私である。
そこで外部電源を使えるハブを新しく買ってもよかったのだが、困ったことに、悲しいことに、私はオーディオマニアだった。
「せっかく買うなら……」と思ってしまったのである。
その結果がコレ。
「ハブで音は変わる」という前提に立ち、「ならどうする?」をとことん突き詰めたハブ。前モデルのNH10の時から注目はしていたが、NH100にモデルチェンジしたことで、これ以上はあるまいという感がさらに強まった。
そりゃもうオーディオマニアとしての私は大喜びである。
まるで自慢できない私のオーディオ史上最も伊達と酔狂を注ぎ込んだ買い物には他ならず、「これで未来永劫不安が解消されるなら安いもんだろ! 最初で最後だから!」というオーディオマニアとしての私の発想に、他ならぬ私自身が一番呆れ果てている。
しかしまぁ、不安がなくなるというのは実際大切だ。
そして、肝心の音だが……
……
…
エージングが要るらしいのでまた今度。
NH100の詳細は別記事で。