先の記事で、ネットワークオーディオの本質は『コントロール』にあり、スマホやタブレットの登場が、音楽再生におけるかつてない快適さへの道を開いたと書いた。
【音源管理の精髄】もついにここまできた。
音源の背後にあって全てを統括するタグ、全身全霊で構築したライブラリ、鬼気迫る執念で蒐集付与したアルバムアート、己の理想を叶えるために選別したサーバーソフト、十全な操作を受け止め得る仕様を備えたプレーヤー。
血と汗と涙を流しながら取り組んできた音源の管理運用、そして【ネットワークオーディオ】は、まさにこのコントロールアプリで完成・完結する。
ちなみに、第6章のコントロールアプリの部分だけを読んでもどうしようもない。
第1章から第5章までのすべてを理解・把握したうえでなければあまり意味がない。
さて、コントロールアプリである。
スマホやタブレットをネットワークオーディオのコントローラー、要はカラオケのアレとして使うためには必然的にアプリが必要になる。
コントロールアプリはなぜ重要か。
先の記事で、ネットワークオーディオの本質とはコントロールであり、ネットワーク越しに再生機器からコントロールを独立させることだと書いた。
すなわち、ネットワークオーディオにおいては、再生やら停止やらスキップやら、音楽再生に関わるすべての操作はコントロールアプリ上で行うことになる。音楽再生の最後の最後、実際に手に触れる部分を、このコントロールアプリが担うのである。これがどれだけ重要で、どれだけ快適さを左右することになるのか、多くを語る必要はないと思う。
もうひとつ、コントロールアプリは、「選曲時にライブラリを参照して音源を表示する」という重要な役目を担っている。
どのようなインターフェース/デザインで情報を提示するかは、快適な操作に直結する非常に重要な部分である。
ただし、その際コントロールアプリが行うのは(一部例外もあるが)あくまでサーバーソフトが提示するナビゲーションツリーを表示するだけであり、究極的に音源の管理運用はすべてユーザーの手に委ねられている。
魔法は存在しない。
それゆえに、音源の管理運用のことごとくを自分が求めるレベルで完璧にこなしたうえで、初めてコントロールアプリの価値や出来不出来を比較・検証・判断できるようになる。
何かおかしいなと思ったら、まずは自分で構築したライブラリを疑うこと。コントロールアプリの不出来・不具合を疑うのはそれからでいい。
そしてもうひとつ、音源をデジタルファイルとして扱うことで可能になる「アルバム単位から解放された音楽の聴き方」をどのような形で実現するか、これもコントロールアプリに任されている。つまり、再生におけるプレイリスト周りの挙動である。
音楽を快適に聴くには、この部分の完成度も非常に重要である。
このように、コントロールアプリは以下の三点において非常に重要である。
・ネットワークオーディオにおける再生操作を一手に担う
・ブラウズ(ライブラリ閲覧&選曲)時のインターフェース/デザインを一手に担う
・再生におけるプレイリスト周りの挙動を一手に担う
なぜコントロールアプリが重要か、わかってもらえるだろうか。
もっと身も蓋もない話をすれば、コントロールアプリはオーディオ・システムのデモンストレーションにおいて、ほぼ唯一の「表に見える部分」であり、最も注目される部分でもある。タグ、ライブラリ、アルバムアート、サーバーソフト、それらすべてがあってこそのコントロールアプリなのだが、残念ながらそれらはなかなか見えてこない。
そして実際に、コントロールアプリこそ、ネットワークオーディオを構成する最後のピースにして、最終的なユーザー・エクスペリエンスを決定づけるものだ。
ユーザーがネットワークオーディオのデモンストレーションで最も注目するのは、間違いなくコントロールアプリの挙動と完成度である。……そうであると信じたい。いや、そうあってほしい。
ゆえに、誇らしげにネットワークオーディオプレーヤーを出しておきながら、コントロールアプリの重要性を理解せず、完成度をないがしろにしているメーカーは、実に見事に画竜点睛を欠いていると言わざるを得ない。
メーカーは、見やすい操作画面を本体に装備しました! アルバムアートも表示できます! ……という無意味かつ悲しすぎる自慢をする暇があったら、アプリの完成度を磨くことに全力を傾けるべきだ。何百何千というアルバムで構築されたライブラリを、本当にあの小さな画面と貧弱な操作系でコントロールできると思っているのか。
本体に操作画面を付けないとPCやネットワークに詳しくない人には難易度が高くなる? ……ネットワークの何たるかを理解して、正しくシステムをセットアップする時点で、そもそも音を出せるようにする時点で十分すぎるくらい難しいだろうに。それを乗り越えられる人が、アプリについて理解できないはずがない。
さらにたちが悪いのは、機器がDLNA/UPnPに準拠して色々な汎用アプリを使えるにも関わらず、ユーザーにその事実を伝えず、絶望的な出来の自社純正アプリの使用をゴリ押しすることだ。
このような姿勢はユーザーの利益を著しく損なうばかりか、「なんだこのクソみたいな操作性は!」との失望をユーザーに与え、結果としてネットワークオーディオそのものを貶めることになってしまう。オーディオ業界の健全な発展を願うひとりのオーディオ好きとして、かくも無様な現状はまったくもって許しがたい。
世の中には様々なコントロールアプリがある。
メーカー純正のものから、サードパーティー製のもの。
完成度も、「未だにこんなゴミが存在しているのか!」と絶叫したくなるようなものから、ホスピタリティに溢れ快適な音楽再生という夢を叶えてくれるものまで、千差万別だ。
サーバーソフトによる違いも大概だが、コントロールアプリの違いはそれどころではない。
オーディオ業界において、今の今までコントロールアプリの存在は信じられないほどないがしろにされてきた。
きちんと検証しようという意識そのものが欠如していたのである。もっとも、検証すると言ったところで、サーバーソフトの挙動とコントロールアプリの挙動を混同しているような有様だが。
コントロールアプリが媒体に登場しても、「このアプリはレスポンスに優れている」「このアプリは操作性が良い」という具合に一言で片付けられるのが精々だ。なんたる無責任な評価。
え、ほんとにそのアプリをして「快適な操作性」なんて言ってしまうの? 勿論、きちんと使い込んだうえで言っているんだよね? いいの? 本気? 本気の本気? そう……
というわけで、コントロールアプリの本懐も踏まえ、以下の5項目でアプリを検証する。
それぞれの項目について、具体的に関わってくる部分も示す。
【2014/06/30追記】
2014年現在の知見でもって再検証を行い、各アプリの検証記事を更新していく。
詳細はこの記事を参照。
以下に続く文章はあくまで2012年に行った検証に基づくものであることに注意されたし。
【追記おわり】
①インターフェースの洗練度
――再生操作、音源のブラウズ、プレイリスト周りの挙動などすべて
②情報の一覧性
――音源のブラウズ、音源の情報表示など
③速度
――レスポンスの速さ、スクロールの滑らかさなど
④機能性
――「快適な音楽再生」を実現するための様々な独自機能
⑤安定性
――落ちてばっかりじゃ使い物にならない
挙動やデザインの好き嫌いは当然あるだろうし、最終的な良し悪しの判断はもちろんユーザーに委ねられている。
私は私で評価するけどね。
しかし、好き嫌い以前に、客観的に検証・判断できる部分は間違いなく存在する。
ユーザーひとりひとりに、良いものを良いと、駄目なものを駄目と判断してもらえるようなレベルで、徹底的にやる。
まぁ、一年以上前から既にやっていることだが。
これでやっと、昔から書き溜めてきた内容を【音源管理の精髄】の中に統合できる。
『eLyric』(iPad版)
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『ChorusDS HD』(iPad版)
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『SongBook Lite』Version 4.1.0
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『SongBook’11 UPnP』(iPad版)
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『Bubble DS/UPnP』 アルバムアート表示について
私が検証できるのは、LINN DS専用アプリに加え、いわゆる汎用アプリと、いわゆるPCの再生ソフトのリモートアプリだけである。
ネットワークオーディオプレーヤーを作っているメーカー各社の純正アプリは、多くの場合自社製品と一対一の関係になっており、そのメーカーの製品を持っていなければ検証することができない。あぁ残念だ。
アプリの検証は今後も随時行っていくので、乞う御期待。
そしてandroidのアプリも検証していかなくてはと思う今日この頃である。
ぜひ、お気に入りのアプリを見つけ出してもらいたい。