いよいよ魔境も深くなってきた。
デジタルとは云々、エラー補正とは云々、技術的に突っ込んだ情報はいくらでも転がっているし、どのみち私はエンジニアでも何でもないので何も言うことはない。
ただ、聴いて、どうか、というだけ。
一応先に言っておくと、私は「リッピングソフトで音は変わるか?」という問いに対しては「変わってたまるか」という立場であり、「変わらないなら変わらないに越したことはない」という立場であり、「馬鹿馬鹿しい」とさえ思っている。
だから、オーディオのソースとして使うべく本格的にリッピングを始めて5年ほど経つが、ブログを始め、こんな企画でも始めなければ、検証することなど一生なかっただろう。
ただ、魔境の入り口で述べたように、試しもせずに結論を出す気はないし、検証することに意味があると思っている。
それに、結果として変わらなかったとしても、変わらないなら変わらないに越したことはない。
むしろ聞きたい。
変わってほしいのか?
変われば喜ぶのか?
「もっと音がいいリッピングソフトがあるかもしれない」という可能性……という名の不安を永遠に抱えたまま生きていきたいのか?
○検証環境
LUMIN A1
QNAP TS-119 (TwonkyMedia 7.2.7)
BENCHMARK DAC2 HGC(プリとして)
Nmode X-PW10
Dynaudio Sapphire
○検証音源
Corrinne May / Safe in a Crazy Worldより「Angel in Disguise」
学生時代から延々と聴き続けている一曲。HD595を買った時も、ATH-W1000を買った時も、K701を買った時も、Audience122を買った時も、Sapphireを迎え入れた時も、必ずこの曲を聴いた。
空間に俄かには信じ難い広がりを描く冒頭のピアノに始まり、ふくよかで実体感のあるボーカルとコーラス、徐々にテンションを上げて声と溶け合うバックの演奏……数えきれないくらい聴いてきた、Yesの「Roundabout」と並ぶ私のゴールデン・リファレンス音源である。
違いがあろうものなら、すぐにわかる。
○リッピングソフト
使用したリッピングソフトは三種類。
dBpoweramp CD Ripper、MediaMonkey、iTunesである。
iTunesを入れる関係上、リッピングはすべてWAVで行い、出来上がった音源をNASに入れて検証を行った。
各ソフトを用いたリッピングの様子と、出来上がった音源を示す。
なお、わかりやすくするため、リッピングした音源にはそれぞれ使用したソフトの名称をアルバムタイトルに含めている。
・dBpoweramp
Accurate Rip出来ている。
さすがというかなんというか、WAVであろうと充実したタグが付加されている。
・MediaMonkey
必要なタグはきちんと付加されている。
ソファにどっかり腰かけたまま、指先一つでこういった比較が出来るのも【ネットワークオーディオ】ならでは。
目を瞑り、ランダム&リピートに設定して、ひたすら三種類の音源を再生する。
○結論
変わりません。
神妙な面持ちで「いやー変わりますねー」なんてことを堂々と言えるほど私は無責任ではないし、幸いにして“違いの判る耳の良さ”を誇りたいという欲求もない。
もちろん、「変わる!」という意見があることも承知しているし否定もしない。
つまるところは目的の違いだろう。
“快適な音楽再生”への第一歩として、CDからファイル音源を手に入れるためにリッピングをするのか、それともリッピングソフトによる音質差を聴き分けるためにリッピングをするのか。たまたま私が前者だったというだけだ。
「エラーが出るCDの場合はどうなる?」「バイナリは一致しているか?」etc...
こうした疑問を解消したければ、「Accurate Rip」に対応するリッピングソフトを使えばいい。
「リッピングソフトによって音質差は生じない」という話は、「正確にCDからリッピングできている」ことが条件である、ということについては私も同意する。
「リッピングソフトによる音質差は生じない」としても、リッピングソフトは何でもいいというわけではない。ソフトによって、Accurate Ripに対応するか否かはもちろん、使い勝手やタグを扱う能力には歴然とした差が存在する。どのソフトが良くてどのソフトが悪いのかということはここでは控えるが、上の画像を見てもらえば、このことが分かってもらえると思う。
色々なリッピングソフトを試して、自分に合った使いやすいソフトを見つければいい。