【レビュー・暫定版】Eversolo DMP-A8

 Eversoloは中国のAVメーカーであるZidooが擁するオーディオブランドで、専らデジタルオーディオ製品をラインナップしている。約1年前にリリースされた多機能ミュージックサーバー「DMP-A6」が世界的に高評価を受け、それに続いて登場した上位機種となるのが「DMP-A8」ということになる。

 Eversoloの日本導入が決まり、第一弾としてリリースされたDMP-A8をごく短期間ながら試す機会を得たので、暫定版ということでレビューをお届けする。後日、特に機能・運用・音質に関して深掘りした正式版に更新する予定である。

仕様・機能


 
 純粋なオーディオ機器という括りでは、私が今まで試してきた製品のなかで最も多機能と言って差し支えないレベルで、DMP-A8は大量の機能を有する。LUMINやSFORZATOといったハイエンド志向のネットワークプレーヤーと、Bluesoundといったリビング・エントリー志向のネットワークプレーヤーの機能を同時に備え、さらにプラスアルファがある……というイメージ。

 プラスアルファもまた色々あり、RCA/XLR入力を搭載して「純粋なアナログプリアンプとしても使える」という点、強力な内蔵DACに加えて「USB・I2S出力が可能なネットワークトランスポートとしても使える」点などが挙げられる。

 「純粋なネットワークプレーヤーとして見れば」、あるいは「初心者にも扱いやすいリビング志向のオーディオ機器として見れば」、それぞれに特化した製品に完成度で及ばない感もあるが、とにかくその圧巻の多機能をもって「極めて多彩な使い方が可能」という点で、DMP-A8には独自の価値が生じる。

筐体・外観

 6インチという大型の液晶ディスプレイ(タッチパネル)を搭載しつつ、野暮ったさを感じさせない「豪華」なデザイン。AurenderやHiFi ROSEの一部製品といった例外を除けば、最も大きいディスプレイを搭載する部類の製品といえる。

 DMP-A8は仕様面のみならず、デザインにおいてもAURALiCを彷彿とさせる。大型のディスプレイは後述するアプリを用いずとも良好な操作性を提供する。

 音源再生中のディスプレイ表示も様々にカスタマイズが可能。

 フロントパネル・サイドパネル・天板等、筐体を構成する各パーツは充分な厚みがあり、構造そのものは特に凝っているようには見えないが、モノとしての充実度は相応に高い。

 背面の入出力は整然としており、超多機能ながら配線の煩雑さはない。トリガー出力があるのでパワーアンプとの連携も容易になっている。

運用

 大型かつ豪華なディスプレイによって機器本体での操作が行えるとはいえ、ネットワークオーディオ機器である以上、あくまでも純正アプリ「Eversolo Control」を使うのが基本となる。

 Eversolo Controlで行う(行える)操作はDMP-A8の全機能を網羅するが、

・本機に接続したストレージの音源を再生(ミュージックサーバーとして使用)
・外部サーバーの音源を再生(UPnP/DLNA対応のネットワークプレーヤーとして使用)
・ストリーミングサービスの音源を再生
・各種設定

 まとめるとこれらに集約される。

 なお、以降掲載するアプリのスクリーンショットは基本的にiPad Pro 12.9インチのもの。

 
 Eversolo Controlの、DMP-A8に接続したストレージの音源をブラウズする際の画面レイアウトはこんな感じ。画面左側のペインにずらりと項目が並ぶレイアウトは、ネットワークオーディオのコントロールアプリというよりもPCの再生ソフトのような趣。アルバムはタイル表示が可能で視覚的な満足度は高い。

 ただし本機のライブラリ機能は色々と洗練が足りていない印象で、ジャンルの表示が要領を得なかったり(項目自体が崩壊しているのはサンプル機に入っていた音源の問題)、

 ジャンルの下がアルバムを介さずにすぐ楽曲になっていたり(下の例では「Rock」に含まれる全4464曲がドバーッと表示されてしまう)と、パッと見の見た目は豪華だが、使い勝手はそれほど良いとは言えない。

 UPnP/DLNAサーバーのブラウズ時はアルバムの階層でアルバムアートが表示されない&タイル表示オプションがないという仕様で、これまた使い勝手にとってマイナス。


 
 一方、ストリーミングサービスについては特に違和感も問題もなくスムーズに使用可能。

 TIDALは言わずもがな安定しており、TIDAL Maxにも対応済み(再生画面から確認できる)。

 Amazon Musicもしっかりとタイル表示に対応しており、くわえてレスポンスはかなり良好。具体的にはTaktinaと同じくらいには良好。

 
 各種設定もすべてアプリから行える。機能は膨大だが、設定自体はスムーズに行えるように配慮が行き届いている。







 DMP-A8をネットワークトランスポートとして使う際の、出力の設定や接続した機器のパラメーターなどもわかりやすい。

Apple Music対応について

 DMP-A8の仕様には「Apple Music対応」というものがあるのだが、Apple MusicはTIDAL/Qobuz/Amazon Musicのように、サードパーティー製品と統合するような仕組みは基本的に用意されていない。なので「一体どうやって対応してるんだ?」と思ったが、蓋を開けてみれば、「DMP-A8はandroidベースである」という点が巧みに生かされていた。

 まず、DMP-A8とEversolo Controlには「同画面」という項目があるように、本体ディスプレイの表示をそのままアプリの画面にミラーリングする機能がある。

 そして、DMP-A8はandroidベースゆえに、本体機能以外にもアプリをインストール可能である(インストールしたアプリはEversolo Controlの「すべてのアプリ」にまとめられている)。もちろんApple Musicもインストール可能。

 これらを組み合わせると、「DMP-A8にApple Musicをインストールして動かし、それをEversolo Controlにミラーリングすることで外部端末からコントロールする」という仕組みが完成する。

 この場合DMP-A8はあくまで「6インチディスプレイのandroid端末」扱いなので、UIはタブレットに比べるとだいぶ制限されたものになってしまうが、それでも「Apple Musicをネットワークオーディオのスタイルで扱える」というのは実に画期的。

 かなりの力技……もとい、「なるほどその手があったか」と思わせる巧みな実装方法である。

音質

 音質の評価では「なるべくDMP-A8の機能を活用する」というのを基本とし、ボリューム調整は本機のプリアンプを活用する形とした。ちなみにDMP-A8のR-2Rボリュームは音量調整の際に「カチカチ」とハッキリした音を出し、「オオッちゃんとアナログボリュームが動いてんな!」という感覚を醸成する。

 本機の製品価格を考え、音質評価はリビングシステムで行った。再生環境はリビングシステムのレギュレーション上限(システムトータル100万円くらい)とし、プリメインアンプにNmode X-PM9(パワーアンプモード)、スピーカーにDynaudio Emit20を使用した。

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 ミュージックサーバーとして内部ストレージの音源を再生した場合でも、ネットワークプレーヤーとしてストリーミングサービスの音源を再生した場合でも、PCと接続してUSB DACとして使った場合でも、再生音はストレスのない広がりと、その広い空間を満たすだけの豊かな情報量、充実したエネルギー感の存在は共通して感じられた。音の輪郭描写はシャープさよりも滑らかな印象が先立つが、一音一音の分離はしっかりとしており、総じてエントリークラスの機器とは一線を画したオーディオのスリルも存分に味わうことができた。

 サーバーに同じものを使い、ネットワークプレーヤーとして手持ちのSFORZATO DST-LacertaiFi Audio NEO iDSD2の組み合わせ(約30万円)と比べると、DMP-A8は純粋な性能の追求よりも、より厚みのある、聴いていてリラックスできる再生音を志向しているように感じる。情報量といい解像感といい、じゅうぶんに価格を納得させる基本性能/音質を備えているのは確かだが、音源のディテールを殊更に深掘りするような傾向とは異なる。

 HDMI ARCを搭載している時点で、DMP-A8は突き詰めたピュアオーディオ用途だけでなく、リビングオーディオのような、もっとカジュアルなシステムでの活用が意識されていることは明らかだ。それを考えれば、このような音作りも納得ではある。

 そのHDMI ARCを使って、テレビ(LG OLED55C1PJB)の音もDMP-A8経由で再生してみたが、厚みのある音作りは基本的に薄いテレビの音を補う形でうまくハマっている。基本性能という点では同様の機能を持つBluesound NODEとはさすがにレベルが違い、映像鑑賞時にさらなる充実感を引き出すことができた。

 ただしARCとして使う場合、BluOS製品のように自動入力切替でテレビの音声に切り替わるといった機能はないので、テレビと組み合わせる際は手動で一手間必要になる。この辺の「行き届いてる感」はさすがにBluOSに軍配が上がる。

まとめ

 一通りの機能をテストしてみるだけでも短期間では時間が足りず、あくまで「暫定」という形でレビューを掲載する形となったが、表層をさらった程度でもこの通り盛り沢山である。

 ひとつひとつの機能に焦点を当てれば難点も見つかる(特にローカル音源の再生)が、膨大な機能を扱うための操作性は純正アプリのEversolo Controlを含めてよく練られている。「大量の機能を誇る一方で実際はまるで使い物にならない」といった懸念は感じられず、むしろ、貪欲に機能を詰め込みながらよくここまで完成度を高めたな、と感心する。

 前述したように、「極めて多彩な使い方が可能」という点こそがDMP-A8の魅力であり、必要と好みに応じて様々な機能を使いこなすことができれば、他の製品とは一味も二味も違う縦横無尽な活躍が期待できる。
 
 

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