このアプリがなければ、DSからLUMINに乗り換えることはなかった。
あらかじめ言っておくが、LUMIN Appは非常に多機能ゆえ検証内容も相当に多い。
機能的に完成した感のあるversion 3.0以降で全部入りの検証を行うのは初めてなので、私も気合いが入っている。気合いを入れて読んでほしい。
なお、2015/10/25にandroid版もリリースされたが、この記事での検証はiPad版で行っている。
2015/12/16、バージョン6.0になりiPhoneにも対応。
【基本情報】
製作:Pixel Magic Systems Ltd.
汎用/専用:基本的にLUMIN専用(※1)
対応OS:iOS・android
スマホ/タブレット:iPhone(※2)・iPad・androidは全端末(※3)
縦画面/横画面:両対応
価格(2014年11月時点):iOS・androidともに無料
→LUMIN AppがiPad Pro 12.9インチにネイティブ対応
(※1)
LUMIN以外のOpenHome対応のプレーヤーでも使える場合がある
その際はアップサンプリングや各種設定といったLUMINのプレーヤー本体の機能は使用できず、音楽再生の操作についても正常に動作する保証はない
(※2)
2015/12/16、バージョン6.0から同一アプリでiPhoneにも対応
(※3)
7インチ以上の画面サイズが推奨されている
【機能】
再生:○
一時停止:○
停止:×
曲送り(スキップ):○
シーク:○
ランダム:○
リピート:○
音量調整:○
ミュート:○
プレイリストでの再生管理:○
プレイリストの保存:○
タイル表示:○
音源の検索:○
アルバムアートの拡大表示:○
アルバムアートの縦横比維持:○
高解像度対応(Retina):○
音源のスペック表示:○
機器の入力切替:○(※)
電源のオンオフ:○
機器の再検索:×
接続のロック:○
その他の機能/特筆事項:多すぎてここには書き切れない
※LUMIN製品には今のところ純粋なプレーヤーしかラインナップされていないため、入力切替はインターネットラジオのみ
【インターフェース/デザイン】
基本画面。
再生画面・プレイリスト・ブラウズの三要素が見事に配置されている。
LUMIN Appではアプリのデザインをある程度変えられる。
「Setup」(画面右上の歯車)から、「Appearance」の項目。
各項目の説明は省くので、何がどう変わるかは画像で確認してほしい。
色々いじれる。
プレーヤーとは非常に強固な接続を維持しており、アプリを起動して即操作可能。
【再生画面】
操作ボタンや音源の情報表示は完備されている。
みんな大好きDSDもきちんと情報が表示される。
ランダム・リピートを含む操作ボタンは画面右上に集約されている。
シーク。
左側の回転ボタンを押すと再び頭から再生する。右側の矢印はそれぞれ早送りと巻き戻し。もちろんプログレスバーを直接動かしてもいい。
音量調整。
ミュート・ボタンでの上下・音量バーでの調整。
Kinskyのようにホイールをくるくる回すようなギミックはないが、実際に音量が変わるまでワンステップ置くことで不意な音量の変化を防いでいる。
アルバムアート拡大画面。
基本画面左上、再生中の音源のアルバムアートをタップすると切り替わる。ここで下に表示される音源の情報は数秒で消え、後にはKinsky以上にiPadの画面をフル活用したアルバムアートだけが残される。
アルバムアートの縦横比は維持され、拡大時には実に素敵な光景が現れる。
さらに、LUMIN Appはアルバムアートの拡大画面において、ピンチイン・ピンチアウトで表示サイズを変えることができる。
限りなくニッチな機能だと思われるが、これで四魔貴族の表情もばっちりだ。
【プレイリスト】
プレイリスト関連の機能は非常に充実している。
「Setup」の「Operation」の項目で、音源をタップした際にどのような挙動をするかを設定可能。
「Tap on Song List」のソングリストとは、要はブラウズでアルバムの中に見える一つ一つの音源のことである。で、これをどのようにプレイリストに追加するかを設定する。
「Single Tap」は一回タップすればプレイリストへ。「Double Tap」では二回タップすればプレイリストへ。「Play Now」はすぐ再生。「Play Later」はプレイリストの末尾に追加され、再生はしない。ちなみに、「Single Tap」と「Play Later」の組み合わせの挙動はまさにChorusDSと同様である。とある誰かがこんな風にできたらいいなと言ったら設定項目が増えた。
「Tap on Playlist」は画面左側のプレイリストの挙動を設定する。ここで「Double Tap」にする意味をあまり感じられないので「Single Tap」でいい。誤操作防止とかそういう目的だろうか?
「Confirm when Clear Playlist」で、画面左下のゴミ箱ボタンでプレイリストをクリアする際の確認メッセージのオンオフする。
また、アルバム・トラックともに音源を長押しすることで、
・選択した音源をプレイリストの末尾に登録し、今すぐ再生
・選択した音源をプレイリストで“現在再生中の曲”の次に登録
・選択した音源をプレイリストの末尾に登録、再生はしない
・選択した音源を現在のプレイリストをクリアしたうえで登録
という計8パターンの挙動が用意されている。通常時の挙動の設定に加え、この充実ぶりたるや素晴らしい。
画面左下のボタンから、プレイリストの編集と保存&読み込み。
プレイリストの編集は一曲ずつの削除と曲順入れ替えが可能。
また、画面左下の編集ボタンを押さずとも、プレイリスト中の音源を右から左にフリックすることで一曲ずつ削除が可能。地味に便利。
なお、画面左下の「○○/○○」というボタンを押すと、例えば長大なプレイリストを作った時、現在再生中の曲の位置までプレイリストがスクロールする。
ChorusDS HDにおける「Whats Playing」と同じ挙動。なんというか、徹底している。
【ブラウズ】
ブラウズも見どころ満載である。
リスト表示とタイル表示の切り替えが可能。
さらに、タイル表示はピンチイン・ピンチアウトでアルバムアートの拡大縮小が可能。無意味にでかくすることもできる。
また「Setup」横の拡大ボタンを押すと、ブラウズ領域を最大化可能。もちろん、この状態でもピンチイン・ピンチアウトが可能。
膨大な情報量となるが、この状態でもスクロールや動作はスムーズそのもの。
ブラウズの際、音源を長押しすると表示されるウィンドウで、アーティストの横に「i」というボタンがある。
それを押すと、last.fmのウィンドウが開いてアーティスト情報が表示される。暇な時にでも見てみると面白いかも。
まだ終わらない。
LUMIN Appにはサーバーが提示するナビゲーションツリーをそのまま表示するだけでなく、アプリ独自のツリーを備えている。
「Song」・「Album」・「Aritst」(Album Artist/Song Artistを切り替え可能)・「Composer」・「Genre」・「Year」の6項目である。これにより、ある程度サーバーソフトから独立してライブラリを巡ることが可能。かつてSongBook’11 UPnPがやろうとして企画倒れに終わったアイデアを発展させたものだと言える。
この6項目それぞれにアルバムのタイル表示・リスト表示とソングリスト等が用意されており、説明が膨大になるがまぁ致し方あるまい。
「Song」
アルファベット順でまとめて表示→該当するトラックを表示
「Artist」
タイル表示またはリスト表示→ソングリスト
アルバムアーティストとソングアーティストの切り替えは「Setup」で行う。
「Composer」(Composerタグの管理がテキトーなのがばれてしまう……!)
タイル表示またはリスト表示→ソングリスト
なお、なぜか「Composer」のみ「Setup」から表示をオンオフできる。
「Year」
タイル表示またはリスト表示→ソングリスト
見ての通り滅茶苦茶だが、これはおそらく「Year」タグが整備されていない音源は強制的にサーバーが認識した日時をもって「Year」と見なしているからだと思われる。すみません、私ルールにおいては録音年には頓着しないもんで……
このフォルダっぽいボタンが「UPnP Browse Mode」、要するにUPnP/DLNAサーバーが提示するナビゲーションツリーをそのまんま表示するモードである。
実はVersion 2.0まではコレがなかった。
「Internet Radio」
現状では何もない。
何かしら自分で登録する必要があるようだ。
【機器の選択/その他の機能】
「Music Library」→「Options」でライブラリの再読み込みが可能。
何かおかしい時はこれで……と言いたいところだが、さすがにChorusDSの「Refresh」に比べると融通が利かない上に効きもよくない。
「Setup」からプレーヤーをタップするとプレーヤーの選択画面となる。
MAJIK DS-Iも使える。
プレーヤーの「Options」からはLUMIN製品の詳細な設定が行える。
本体の情報表示とかネットワークでの表示名変更とかインターネットラジオの設定とかアップサンプリングの設定とか。
「Setup」の一番下の「About」からはLUMIN Appの情報が見れる。
バージョン情報に加えて、「Help」からは公式の操作マニュアルへ飛べる。英語。
【各項目評価】(3段階・詳細はこの記事を参照)
インターフェース/デザイン:3
再生画面:3
プレイリスト:3
ブラウズ:3
機器の選択/その他の機能:3
安定性:3
動作レスポンス/速度:3
【速度計測】(詳細はこの記事を参照)
普段使い
1回目:33.9秒
2回目:32.5秒
3回目:32.9秒
平均:33.1秒
アルバムスクロール完走
4.7秒 ←←←←←
引っかかりもアルバムアートの取りこぼしも皆無。
LUMIN Appが他のアプリとは隔絶した速度を実現している理由は、インターフェースやレスポンスが良いのはもちろんのこと、「アプリ内にアルバムアートをキャッシュ」するという点にある。
それも、口先ばかりの「キャッシュ」ではない。
上の画像からわかるように、LUMIN Appはただのコントロールアプリのくせになんでこんなに重いんだ? というほど容量がでかい。(SongBook Liteは特に速くなるわけでもないのにでかい)
LUMIN Appはアプリ内でアルバムアートが表示されるありとあらゆる局面でデータをキャッシュし続け、際限なく容量が膨らんでいく代わりに、一度でも表示されたことのあるアルバムアートならば一瞬で表示する。それゆえに普段使いにおいて、使えば使うほど速くなっていく。ライブラリをリロードするとまたやり直しになるけどね。
※android版は2015/10/28現在(Ver.1.01)、iPad版のようなキャッシュ機能がなく、アルバムアートはその都度取得しているようである。そのため、再生操作全般に対するレスポンスは申し分ないものの、ブラウズ時のアルバムアートの表示速度はiPad版に比べて大きく劣る。他のアプリと比べても速いとは言えない。
【総合評価】(タブレットは5段階)
5 ― 極めて快適
【使用感・コメント】
現在、ネットワークオーディオにおけるコントロールアプリを評価する時、「極めて快適」と呼ぶためのハードルがこのLUMIN Appである。
この完成度、この機能性、この速度をもって初めて、「極めて快適」と呼ぶに値する。
あらゆる領域で機能不足はなく、あらゆる局面で高速に動作し、スクロールはなめらか、レスポンスも申し分なし、他のアプリでは悲鳴を上げるどころか表示すらできない膨大なアルバムアートのタイル表示を前にしても安定し、動作が緩慢になることはない。プレーヤーとの接続は極めて強固であり、操作可能になるまでのタイムラグもゼロ。さらに、音楽を快適に聴くだけでなく、ライブラリを巡る行為そのものが楽しくなる機能や遊び心も満載。カスタマイズ性も考え抜かれており、アプリの操作性をかなり自分流にアレンジ可能。
コントロールアプリの評価に際し、ロクな機能・動作検証もないまま多用される「直感的」という言葉も、LUMIN Appになら胸を張って使うことができる。実際、自宅に招いた友人にLUMIN Appを使わせると、みんな何の説明も必要なくすいすいと音楽を再生できている。この事実に勝る「直感的」の証明はあるまい。
LUMIN製品に関してはPC側で設定するソフトがないため、プレーヤーの諸設定もLUMIN Appで行うことになるのだが、その際も簡潔にして明快。コレ以外は本当に何もいらない。
LUMIN Appは決してポッと出のアプリではない。
偉大な先駆者に敬意を払い、良いコントロールアプリとはどのようなものかを考え、いったいどうすれば先人を越えられるのかという難問に真摯に取り組んだからこそ、この完成度がある。何を参考にし、何を研究したのかがよくわかる。
「ChorusDSの後」に出る全てのアプリは、本来であればその完成度に匹敵するか、あるいは凌駕していなければならないはずだった。なにせ、この上なく素晴らしいお手本が既にあるのだから。しかし、現実は皆知ってのとおりである。ChorusDSの完成度など影も形も見えないどころか、ネットワークオーディオという方法論そのものを冒涜しているかのような凄まじいアプリまで跳梁跋扈しているという有様だ。
そんななか、私はLUMIN AppにChorusDSが目指したものを見た。ChorusDS自体はついにその役目を終えてしまったが、その魂は今もLUMIN Appの中に息づいている。
LUMIN Appを生み出したPixel Magic Systemsのスタッフに最大級の賛辞を送る。
android版、そしてスマホ版も是非期待したいところだ。