LUMIN X1あたりを皮切りに、特にハイエンドなネットワークオーディオ製品へ採用されるようになったSFPポート。
SFPポートを搭載する機器は光モジュールを使って光ファイバーケーブルで直接接続(※)可能であり(これを「光LAN接続」と呼んでいる)、LUMIN X1でも謳われたように、これが従来のRJ45ポート&LANケーブル(メタルケーブル)に対する優位性とされてきた流れがある。かくいう私自身、実際にLUMIN X1を試用した際、光LAN接続の優位を実感している。
※光メディアコンバーターを2台使用して「経路の一部分」を光ファイバーケーブルで繋ぎ、最終的な機器への接続は従来通りのLANケーブルで行うケースとはこの点で決定的に異なる。
そんな状況に一石を投じるのがDELAの「C1」である。
目次
製品概要
C1は「SFPポート間を直結するDACケーブル」である。
DACとはDigital to Analog Converterではなく、「Direct Attach Cable」の頭文字で、紛らわしいのでDACケーブルと呼ばれる(もしくはカタカナでダイレクトアタッチケーブルとも)。
SFPポートを使う場合、光ファイバーケーブルにせよ、LAN(メタル)ケーブルにせよ、基本的にモジュールを用いての接続となる。
それに対し、DACケーブルはコネクター一体型のメタルケーブルであり、モジュールを介さずに文字通りの「直結」が可能となる。
また、DACケーブルは他の接続と比べても極めてシンプルな構成なのも特徴となっている。
すなわち、C1は「SFPなら光一択でしょ」という発想から脱するとともに、光とは別の形で「SFPの特性を活かして」オーディオ専用に開発された、今までなかったケーブルということだ。
運用
私が使用しているハブのDELA S100、ネットワークトランスポートのSFORZATO DST-LepusはそれぞれSFPポートを搭載しており、その間で様々な接続が可能。
SFPポートを搭載する機器同士で光LAN接続を行うには基本的に光モジュールが必要となる。この構成を①とする。
ちなみに実際はS100のSFPポートを使わず、さらにSONORE opticalModule Deluxeを噛ませた構成になっている。この構成を②とする。
LAN(メタル)ケーブルで繋ごうと思えば、DST-Lepusは「SFPポートのみ搭載する」という仕様であり、RJ45ポートを持たないため、RJ45モジュールが必要になる。この構成を③とする。
それがDACケーブル/C1を使うとSFPポート間を直結可能になるというわけである。この構成を④とする。
C1の接続はがっちりとして、RJ45ポートのLANケーブルとは比べ物にならないレベルで非常に強固。ケーブルを外す場合はリング状の部品を引っ張ることで行う。
なお、C1はそれなりに硬さがあって曲げづらく、くわえてラインナップも2メートルのみでケーブル長のバリエーションはないので、その点は導入時に注意を要する。
音質
私がopticalModule Deluxeを使っている(②)のは①に対して明らかに音が良いからである。
そして、SFPポートの使用が前提となるDST-Lepusを導入して以来、そもそも私は光LAN接続以外を行っていない。つまり、④以前に③の音も真面目に聴いたことがない。まさに私自身、「SFPなら光一択でしょ」という発想に取りつかれた者のひとりということだ。
そこで、C1を試す前にまずは②と③の比較を行ったが、ここは②の完勝。特に空間の広さと見通しの良さで大きな差があり、エネルギー感でも上回る。DST-LepusではLANケーブルを使うためにはRJ45モジュールを介する必要があり、モジュールの存在がマイナスに働いた可能性もあるが、それを考慮しても、好みでは片付けられないレベルで絶対値が違う。
③で使用したLANケーブルは手持ちの10万円弱の製品で、DSP-Doradoを使っていた時に音質に感心して導入したもの。トータルの費用でいえば②のopticalModule Deluxe(初期モデル)・光モジュール&光ファイバーケーブル(ごくベーシックなもの)の組み合わせとほとんど違いはない。そのうえでのこの結果は、あらためて光LAN接続の優位性を感じさせるものだった。
続いて③からケーブルをC1に換え、④の構成にする。一聴して感じるのは情報量の純粋な増大。これは「音量が大きくなった」と感じられるレベルのもので、C1のケーブルとしての能力、素性の良さを端的に示している。特にエネルギー感や中低域の充実、音楽全体の押し出しの良さといった要素では完全に②を上回る。
一方、静寂感や空間の広さ、見通しの良さという点では②に及んでおらず、やはりこれが光とメタルを隔てる一線なのかとも思うが、それでも③からは大きく向上している。そもそも光LAN接続、もしくは光アイソレートに期待される効果は光変換によるノイズの徹底的な排除であり、それが空間表現の向上に繋がると考えられるので、その点はさすがに光LAN接続が強みを見せた結果といえる。
総じて、C1を使った④の出音はメタルケーブルならではの魅力を順当に引き出すとともに、可能な限り弱みを取り除いたという印象であり、絶対値において②と拮抗する。光LAN接続は良くも悪くも「すっきりする」傾向のため、C1の出音を好む人も確実にいるだろう。
まとめ
音質に関しては、どれだけ技術的優位を語ろうと、優位なイメージがあろうと、出てきた音がすべて。
その意味で、C1が聴かせた音は、「SFPなら光一択でしょ」という思考を良い意味で打ち砕くに足るクオリティを有していた。光だから良いわけでもなく、メタルだから劣るわけでもない。SFPという特性を活かせば、絶対値において光LAN接続に拮抗するケーブルは作り得るのだということが示された。
そもそもSFPポートを搭載するオーディオ機器が少ない以上、C1がニッチな立ち位置の製品であることは否定できないが、SFPポートを搭載する製品を使っていて、なおかつ光LAN接続に音質上の物足りなさを持っている人には一度試してみてほしいケーブルである。
(提供:メルコシンクレッツ株式会社)