【レビュー】LUMIN X1 / SOtM sNH-10G 音質編・後編

【レビュー】LUMIN X1 外観・運用編
【レビュー】SOtM sNH-10G 外観・運用編

【レビュー】LUMIN X1 / SOtM sNH-10G 音質編・前編
 
 

・再生環境詳細

SOtM sNH-10G(ハブ)
LUMIN L1(サーバー)

LUMIN X1

SOULNOTE A-2
Dynaudio Sapphire
 
 

 続き。
 ここからがLUMIN X1とsNH-10Gの本領発揮である。
 
 


 X1とsNH-10Gならではの、光ファイバーケーブルで直結する構成。

 この構成での音質の変化は著しく、構成③(前編参照)でおとなしくなりすぎた感のある音が再び生命感をみなぎらせ、目を見張る実体感を伴ってぐいぐいと前に出てくるようになった。光LAN接続によるノイズの低減でよりすっきりした方向への変化をもたらすものと想像していたが、むしろ生気を増す方向になったというのは興味深い。
 生気が増すということは情報量が増すということでもある。情報量の増加は、例えば映像におけるフィルムグレインのような「質感情報の付加」ではなく、ノイズの払底による「音源本来の情報の表出」の結果だと感じられる。

 より熱く、より鮮やかに、より力強く、かといって大味になることもなく、音楽がもたらす感情の振幅が大きくなる。
 今までのLANケーブルで「普通に」聴いたX1の音も掛け値なしで素晴らしいものだったが、光LAN接続にするとさらに化ける。中の人が言っていた通りの結果となった。

 なお、X1を光ファイバーケーブルで繋ぐと、ローカルのサーバー(この場合はL1)を使う場合だけでなく、ストリーミングサービス(TIDALやらQobuzやら)の再生品質もおおいに向上する。X1はMQAのフルデコードが可能なため、特にTIDAL Mastersの恩恵を大きく受けると言える。

 光LAN接続を行わずとも、行えばますます、LUMIN X1は凄まじいネットワークオーディオプレーヤーだ。
 A1とS1とU1を経て、長い熟成を経ただけのことはある。
 
 

 外観・運用編で触れたように、X1は二種類のLAN端子を持つため、「OPTICAL NETWORK: Use simultaneously with RJ45 (e.g. connect one to router and one to LUMIN L1 or NAS)」と公式が言う接続が可能である。

 それを実践したのが構成⑤となる。


 構成⑤は構成④からさらに押し出しがよくなり、音が塊で飛んでくる感覚が強まる。
 これはこれで好きな人もいると思われるが、ちょっとやり過ぎ感、というよりノイズっぽさを感じなくもない。結果的に構成④と比べて「音のコントラスト」が落ちる。
 もう一本LANケーブルを繋ぐことで、光LAN接続により鏡面の如く凪いだX1の水面に僅かながら揺らぎが生じてしまう、そんなイメージ。X1に入ってくるノイズの少なさを取るか、プレーヤーとサーバーの簡潔明快な接続性を取るか、どちらにもメリットがあって難しいところだ。
 とはいえ、こんにちではそれこそsNH-10Gのように優秀なハブが存在すること、音質に明らかな差があることをもって、構成④に軍配を上げたい。

 ……とかなんとかいってあらためて構成④に戻して聴いたら、もう断然こっちがいい。
 結局のところ、公式にも言及されている構成⑤が活きるのは、「サーバーを一台しか使わず、ハブも使わず、オーディオシステムから遠く離れた光メディアコンバーターからX1に光LAN接続する」というような場合だろう。
 
 

 X1とsNH-10Gを組み合わせた際の効果の大きさはわかった。
 そしてsNH-10GにはもうひとつSFPポートがある。
 さらに手元には光メディアコンバーターもある。

 しかしこの光メディアコンバーター、

 電源を入れると「ジーーーーー」という耳に聴こえるノイズを発している。
 これをオーディオシステムの至近に投入するのは恐ろしいことこのうえないが、仕方がない。
 

 というわけで構成⑥、ルーターからハブ/sNH-10Gに入ってくる部分を光LAN接続にするとどうなるか、である。

 なるほど効果はある。
 音のコントラストがさらに上がり、全体的に研ぎ澄まされた印象となる。

 ただ、X1とsNH-10Gを光LAN接続した時の変化が大きすぎて、それと比べるとたいした変化ではない。
 もっとも、私は既にACOUSTIC REVIVEのLANアイソレーター「RLI-1GB-TripleC」を使い、水際防御を行っている(もちろんsNH-10Gに対しても)ので、効果が感じられにくいというのはあるかもしれない。その場合、RLI-1GB-TripleCのノイズ低減効果の優秀さの証明にもなる。
 
 

 さて、sNH-10Gは決してLUMIN X1専用というわけでなく、汎用的に使用可能なオーディオ用ハブである。
 SFPポートを持つLUMIN X1だけでなく、普通のRJ45ポートしか持たないネットワークオーディオプレーヤーに対しても、最小限の機器の追加で光LAN接続の恩恵をもたらすことができる。

 それを実践したのが構成⑦となる。

 耳に聴こえるレベルでノイズを発している光メディアコンバーターをSFORZATO DSP-Doradoの直前に入れるというのは、やはり恐ろしいことこのうえなかった。光で繋がるLUMIN X1とは異なり、DSP-Doradoと繋がるのは「光メディアコンバーターと繋がった普通のLANケーブル」なのである。

 それでも、確かに音質は向上した。
 音のコントラストが増し、厚みが増し、情報量が増す。無視できない変化である。
 
 

 そんなこんなで光LAN接続の効果を実感したわけだが、はたしてsNH-10Gを使わず、光メディアコンバーターだけを使った状態で光LAN接続の恩恵を受けられるかどうかについては疑問が残る。

 例えば、今回の試聴で最も音の良かった構成⑥を光メディアコンバーターだけで実現しようと思えば、必要な光メディアコンバーターは3個に増える。嫌な予感しかしない。

 そしてもし、LUMIN X1もsNH-10Gも使わず、「光LAN接続は音質に効果があるから」といって、私が普段ハブに繋げているすべての機器を光LAN接続しようと思ったら、こんなことになってしまう。


 もうこの画像からノイズが聴こえてきそうだ。
 可能な限りノイズを抑えるべく、光メディアコンバーターに付属するスイッチング電源アダプターではなくアナログリニア電源を使うという手もあるが、そうなるとさらに機器の数が倍になる。上図の構成であれば、計16台の機器と膨大な量のケーブルがオーディオシステムの至近に溢れ返ることになる。想像するだけで死にそう。

 過ぎたるは猶及ばざるが如し。
 LUMIN X1については一択で光LAN接続をおすすめしたいところだが、それ以外の機器についてはきちんと使いどころを見極めるべきだ。
 SOtM sNH-10Gは汎用的に使用可能なオーディオ用ハブとしても、機器の増加を最小限に抑えつつ光LAN接続の恩恵をもたらすという意味でも、存在意義は大きい。
 
 

 私がLUMIN X1とSOtM sNH-10Gに初めてお目に掛かったのは、昨年のMUNICH HIGHENDの会場だった。
 SFPポートを搭載するネットワークオーディオプレーヤーとオーディオ用ハブが同時に登場するというのは出来過ぎた偶然だったが、その手の偶然が今までもなかったわけではない。それだけ機が熟していたということなのだろう。

 LUMIN A1からSFORZATO DSP-Doradoに乗り換え、気が付いたらオーディオ用PCとLAN DACでネットワークオーディオしている現在でも、UPnPベースのネットワークオーディオプレーヤーに対する興味関心が薄れるわけではないし、LUMINというブランドに対する思い入れが消え去るわけでもない。LUMIN Appは現在進行形で最強だ。

 LUMIN X1は“ひさし”の存在を除いて本当に素晴らしいネットワークオーディオプレーヤーである。そして、SFPポートを十全に活かせるSOtM sNH-10Gが同時に登場したことはX1にとってさらなる僥倖と言うほかあるまい。

 「KLIMAX DS」と「AKURATE DS」が生産完了した今、純粋かつハイエンドな「プレーヤー」の存在はますます貴重になっている。
 LUMINにはこれからも、ネットワークオーディオプレーヤーの雄として頑張ってもらいたいものだ。
 
 

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