というわけで、本気のオーディオに使い得るスピーカースタンドが3つ揃ったので、本気の音質比較を行った。
目次
天板&足元の状況
SOUND ANCHORSの「SAS-PERSONA」はサウンドアンカー製スタンドらしく表面仕上げは「ざらざら」でかなり粗く、とてもそのままスピーカーを置けるようなものではない。そこで、傷防止と接触ノイズの低減を兼ねて、AETの「VFE2005H」を三点支持で使用している(付属のソルボセインは汚くなったので取っ払った)。足元は付属スパイクにTiGLONの純マグネシウム製スパイク受け「M1」を組み合わせて三点支持。普段はサラウンドのDynaudio Emit20用のスタンドとして定位置に収まっている(上の写真参照)。
TiGLONの「TIS-70J」の天板もサウンドアンカーほどではないが粗さの残る仕上げなので、ここでは傷防止と接触ノイズの低減を兼ねて、同じくTiGLONの「D-REN Pro」を三点支持で使用している。足元は普段通りsoundcareの「SuperSpike SS8」を使用。本来であればこちらも付属スパイクと同社製のスパイク受けを使うべきなのだろうが、主に付け替えがめんどくさいという理由でそこまではしていない。
オリジナルカバスタンドの天板はウレタン塗装のカバ集成材であり、特にスピーカーを傷付ける心配はないので、今回はあえて直置きとした。足元はTIS-70Jと同様にsoundcareの「SuperSpike SS8」を使用。
なお、スタンドの下には450 × 500 × 50mmのハードメープル無垢材ボードを使用する。
実際に聴いてみる
比較に使うスピーカーはもちろん、私にとってDynaudio Sapphireと並ぶ「もうひとつのリファレンス」であるParadigm Persona B。
スタンドを代表して、SOUND ANCHORS SAS-PERSONAとPersona Bのセットアップの様子。
SOUND ANCHORS SAS-PERSONA
Persona Bとの組み合わせでは聴き慣れた音。音の厚みと透明感が高いバランスで両立した、曖昧さや弱さを感じさせない「盤石な」音だが、一方で分析的・冷静になり過ぎず、純粋に音楽に浸れる懐の広さもある。
17キロという重量が聴く側のイメージにも影響しているのか、やはり再生音の重心の低さ、中低域の充実こそがこのスタンドならではの美点と感じられる。ブックシェルフをメインスピーカーに使った際でも、強靭にして重厚なスタンドを組み合わせることでトールボーイに負けない再現力を目指した……そんな印象を抱く。
ただしそれゆえに、ある意味で「ブックシェルフらしさ」を素直に発揮させる方向性とは少々異なるような気もする。そしてこれが、「Persona Bにとって、必ずしもベストな選択ではない気もする」とかつて述べた理由である。
「マルチチャンネル・サラウンド用スピーカーのためのスタンド」と考えれば、文句なしに優秀である。
TiGLON TIS-70J
良い意味で音が軽やか。SOUND ANCHORS製スタンドとて、Persona Bを導入直後に便宜的に使っていた木製スタンドに比べればよほど軽やかさを感じたものだが、まったくレベルが違う。
空間の広がりと奥行き、解像感、躍動感、空間表現など、音の厚みと中低域の充実以外のほぼあらゆる点でSAS-PERSONAを上回る。「Persona Bの良さを引き出しているのはどっち?」と聞かれたら、間違いなくこっちだと答える。天板・底板ともに小さいTIS-70JにPersona Bを置くのはけっこう神経を使うけどね……
「ブックシェルフにブックシェルフ以上の何かを求めず、ブックシェルフに期待されるものを素直に引き出す」ということこそ、TIS-70Jの本懐といえる。実際、今まで数多くのスピーカーをTIS-70Jと組み合わせて聴いてきたが、スタンドの音質傾向がスピーカーの再生音に意識できるレベルで影響を及ぼしている、などと感じたことはない。
総カバ集成材オリジナルスピーカースタンド
ん……?
なんか思ったよりもずっといいぞ……?
ノリと勢いで作った割には全然悪くない……というより、SOUND ANCHORSとTiGLONを足して2で割ったような印象に有機的な、それこそ「木質的な」響きが加わるイメージで、今回試した3つのスタンドの中ではコレが一番好きという人もいるんじゃないか、というレベル。
木質的といっても音が鈍るとか甘くなるとかそういうネガティブな感覚はなく、この辺りはさすが強度に優れるカバ材といったところか。なんてったって“あの”SOULNOTEのアンプと組み合わせて反応の良さを引き出せる樹種だもんな。
また、天板のサイズに余裕があるので、ここからインシュレーターだの何だのと手を加える余地も、先の2つよりずっと大きい。
ちなみに、このカバスタンドはデスクトップオーディオ用としても使いやすいように、こんな感じで高さを調整できる仕組みも盛り込んでいるが、
スピーカーと視聴位置が近いがゆえに必然的に直接音の比重が高くなり、ともすればそれが「キツい」という感覚に繋がるデスクトップオーディオにとって、木材を使ったスピーカースタンドは「鑑賞目的なら」実は凄く好適なのではなかろうか。
まとめ
カバの一つ覚えなオリジナルスピーカースタンド、いける。
いくら「安定した設置が出来なきゃ音質もクソもない」といっても、音質がしょぼければブックシェルフのテストでは使い物にならないということもまた確か。それだけに、純粋な音質面においてもメーカー製のスタンドに劣るものではない、と確信できたのは大きい。
これでいよいよ、今まで聴いてみたいと思っていたアレやコレを、胸を張って招待できる。