【ネットワークオーディオTips】コントロールアプリの検証 2014 『Linn Kazoo』
鳴り物入りで登場したLINNお手製のサーバーソフト。はたしてその実態や如何に。
同じ名を持つアプリとの純正組み合わせで検証する。ついでに今回は趣向を変えて縦画面で使ってみよう。
はじめに言っておくが、Kazoo ServerはDSDを拾ってこない。
そもそもDSはDSDに対応していないし、アンチDSDのLINNが作るのだから当然と言えば当然だが。
サーバーソフトの肝となっているナビゲーションツリーは……
なんと「Albums」「Artists」「Genres」「Classical」の四種類のみ! アプリとの組み合わせ運用を考えれば、実質的にLUMIN L1よりもシンプルということになる。フォルダビューすらないことには驚きを禁じ得ない。「タグなんて知らん」というユーザーの完全切り捨てである。よく思い切ったものだ。いいぞもっとやれ。
ナビゲーションツリーの表示のされ方もTwonkyServerを使用した際とは異なり、最初から画面上に「Albums」「Artists」「Genres」「Classical」が並ぶ格好となっている。
で、見ての通り「Albums」では「アルバムタイトル」ではなく「アルバムアーティスト」でアルファベット順に並ぶ。
スクロールはTwonkyServerとの組み合わせとは打って変わってスムーズになる。アルバムアートの取得は大して早くならないが。
「Artists」
私のライブラリの管理不徹底が露見してしまっているが気にしない方向で。
こちらは「アルバムアーティスト」ではなく「アーティスト」で、実質的に「アーティスト/アルバム」の表示となる。
画面左でアーティストを選択し、last.fmから取得したアーティストの情報の下に該当するアルバムが表示されるというなかなか洒落たデザインだが、縦画面で使うと画面右のスクロールバーが場合によって「Play All Later」に被るうえに(しかも消えない)、スペース的にアルバムが一行の表示になってしまい情報量が著しく減少する。
ちなみに、Linn KazooはKazoo Serverとの組み合わせるとアルバムの表示がタイル表示に固定される。リスト表示は選べない。
「Genres」
画面のレイアウトは「Artists」と同様。
実質的な「ジャンル/アルバム」表示。
やっぱり縦画面で使うとスカスカ。なんというかタイルに成り切れていない。
「Classical」
クラシックとの親和性を謳うKazoo Serverの肝とも言える部分。
ここに表示されるのは、「ジャンル」が「Classical」で、なおかつ「作曲者/Composer」タグに情報がある音源に限られるようだ。
ナビゲーションツリーに独立してこういう項目があるのは確かに便利と言えば便利。
また、検索機能も優秀である。
例えば「iona」で検索してみる。
「iona」というキーワードでアルバム(すなわちアルバムタイトルにその単語は入っている)、アーティスト(そこから全アルバムが表示)、作曲者でも何でも「iona」で引っかかるすべてのトラック(曲)が見つかる。
「Beethoven」で検索してみる。
ベートーベンはアーティストではないので、その名を冠する第九のアルバム以外は作曲者として登録されているトラックが見つかっている。
Yesのギタリストである「Steve Howe」で検索してみる。
タグ的にはアルバムタイトルでもなければアーティストでもないが、作曲者として登録されているトラックが見つかる。
「強力な検索機能」とか「クラシック作品を作曲家、アーティストなど複数のキーワードから自在に検索できる」とか書かれているので、いったいどんな仕掛けが用意されているかと思ったら、要はこのライブラリを縦断して検索結果を提示することを指すようだ。確かにこれは強力だ。そして検索結果に「作曲者/アルバム」が加わればさらに便利になると思うがどうだろう。
ナビゲーションツリーがごく基本的な項目に抑えられているのは、「細かい部分は検索してね!」とうのがLINNの姿勢だからなのかもしれない。
しかし日本語で検索すると死ぬ。
菅野よう子にClassicalなんてタグを入れた覚えはないぞ。
TwonkyServerとの組み合わせでLinn Kazooを使った際の疑問点も再検証する。
まず、アルバム内の音源右側の「CD」という表示。
TwonkyServerを使用した際はハイレゾ音源であっても「CD」という表示のままだったが、Kazoo Serverとの組み合わせでは「HD」という表示になる。
Heaven & Earthのハイレゾ版は44.1kHz/24bitなので、少なくともCD以上のスペックがあれば「HD」になるようだ。
次に、プレイリストに登録した曲の曲順を入れ替えられないという問題。
結論から言えば、Kazoo Serverとの組み合わせでも曲順の入れ替えは不可能だった。怪しい隙間にも結局何も表示されない。
某雑誌に「アルバム内の好きな曲だけをリストに並べたり、再生する順番を変えたりと、なんでもできてしまう」と書かれているのでそんな馬鹿なとも思ったのだが、これはつまり「プレイリストへの登録をアルバム本来の曲順とは無関係にできる」という意味だったようだ。うーむ。
ところで、Konfigで設定項目のあった「Media Apps」はどこ行った?
ということで次。
Kazoo ServerはLinn Kazooからしか見えないということはなく、それ以外のアプリからも普通に見える。画像はLUMIN Appだが、PlugPlayerからも見えることを確認した。
ちなみにLUMIN Appから見たKazoo Serverのナビゲーションツリーはこんな感じ。
「Media Apps」しかり、純正組み合わせの時よりも項目が増えているのはいったいどういうことなんですかね……
最後に。
Kazoo Serverに関する気になる記事を見つけて、そんな馬鹿なと思ったので検証してみる。
念のため、LUMIN Appでも。不毛とか言わない。
アルバムアートの画質に差異はまったくない。
そりゃそうだ。
サーバーはリサイズ等の設定がなければ単に画像を配信するだけなので、音源に埋め込むアルバムアートそのものを変えない限り、表示される画像に違いが出るはずがない。
これはアプリごとの表示領域の違いやスケーリングの良し悪しはまた別の話。そしてもちろん、巷を賑わす例のトンキー低解像度病とも別の話。
しかし、リンク先の記事は……いったい何が起こっているのだろう。Kazoo Serverをヨイショするために、そこまでやるか? それとも私の把握していない別の要因があるのか? わからない。まぁどうでもいいか。
Kazoo Server。
アプリとの純正組み合わせでもなおツッコミどころは多いし、それほど絶賛されるようなものとも思えないが、光る部分はある。
「Classical」の項目は便利だし、検索機能は確かに素晴らしい。Asset UPnP等をカスタマイズすれば、遥かに充実したクラシック向けのナビゲーションツリーが作れる気もしないではないが、ユーザーが特に何もいじる必要なくこれらの機能を使えるということに価値がある。シンプル&ユーザーフレンドリー。ただしフォルダビューがないのでタグ管理必須。
また、LINNが自ら製作したサーバーソフトというのも大きい。彼らは私なんぞがあれこれ言うまでもなく、「音楽を快適に聴くこと」に極めて大きな関心を持って製品作りに取り組んでいる。コントロールアプリも、サーバーソフトも、Kazooが現状で進化を止めることはないはずだ。インストール可能な機器もそのうち増えていくだろう。
私の軸足は完全にLUMINに移行してしまったが、ネットワークオーディオという領域でLINNが成し遂げた数々の功績に限りない敬意を表しつつ、Kazooのさらなる進化と洗練を期待して、アプリとサーバー双方の検証の締めとしたい。