デスクトップオーディオにおける机とスピーカーの配置を考える

本気でデスクトップオーディオする/そもそもデスクトップオーディオとは何か 専用室を使うわけでなければ、一般的な居室/リビングルームに置くのとも違う、「机」を中心とするパーソナルな環境を想定する「デスクトップオ...

 多くの場合、デスクトップオーディオのスタイルが選ばれるのは「オーディオのために使える場所が机しかない」という現実的な理由からだと思われる。

 すなわち、「机とその周辺という限られた空間を使ってどのようにシステムを構築するか」は、単に「どのような機器を使うか」以上に最終的な体験に直結する、デスクトップオーディオを実践するうえで極めて重要な検討課題である。

 この記事では実例を交えながら、デスクトップオーディオの前提となる机とスピーカーの配置(どこに置くか)について、いくつかの形を提示する。生活の場としての機能性と快適性を維持しながら、スピーカーの実力を発揮させられる配置こそが理想といえる。

 同様に重要なスピーカーの設置(どう置くか)と、スピーカー以外の機器をどこに置くかという問題については別記事を作る。

デスクトップオーディオにおけるスピーカーの設置(セッティング方法)を考えるhttps://audio-renaissance.com/know-how/desktop-audio-so-far https...
デスクトップオーディオにおけるスピーカー以外の機器の置き場所/ラックを考えるhttps://audio-renaissance.com/know-how/desktop-audio-so-far https...

机にスピーカーを置く

 「オーディオ機器以外に何も追加する必要がない」という意味で最も導入のハードルが低く、イメージ的にも馴染みやすく、同時に様々な難点も含む配置。

 この配置ではスピーカーが机上の空間をある程度専有することになるので、机が机として機能するだけの作業スペースと、使用するスピーカーのサイズのバランスを取ることが肝要になる。人によって机の大きさも、PC(机に置くのはノートPCか、モニターか)のサイズも、求める作業スペースも異なるので、最適なバランスは各人のライフスタイルに応じて様々だ。

14インチのノートPCの両脇のスペースに小型ブックシェルフ(Monitor Audio MASS)を置いたセットアップ
あくまで記事のために撮ったイメージ写真であり、スピーカーの設置そのものはかなりテキトーなので要注意
横幅120センチの机に、23インチのモニターとそれなりのサイズのブックシェルフ(KEF LS50 meta)をセットアップ
あくまで記事のために撮ったイメージ写真であり、スピーカーの設置そのものはかなりテキトーなので要注意
横幅160センチの机に、31.5インチモニターと大型のブックシェルフ(ADAM AUDIO T7V)をセットアップ

 上の例である程度イメージが伝われば幸いだが、とりあえず机の横幅が120センチあれば、正面奥のスペースをほとんど占有する形にはなるものの、モニターも含めてかなり本格的なシステムの構築が可能になる。なお、使うPCがデスクトップ(仕方がないとはいえ紛らわしいな……)なら、机の横幅にかなり余裕があってPCを置いても特に支障がない場合を除き、PCは机の下に置くか、横にサイドテーブルなりPCラックを置いてそこに、というのが基本的な想定となる。

 机の横幅が160センチともなると、かなり大型のモニターとブックシェルフを置いて、さらに小型のUSB DACも余裕で置けるサイズ感になる。もちろん机はオーディオのためだけのものではないので、文房具やら小物やらを置いてもいい。ちなみに160センチの写真は私の基本セットアップで、作業中に思いっきり椅子をリクライニングしてだらけた時の頭の位置で正三角形になるように位置を決めている

 
 この配置の注意点として、机の奥行きが小さければ小さいほど「机と壁が(ほぼ)ベタ付けではスピーカーの設置に大きな制約が生じる」というものがある。作業スペースが勿体ないからといってスピーカーまで壁にベタ付けでは配線に苦労するし、再生音にもよくない。それを防ぐためにはスピーカーを壁から離す=前に出すしかないわけだが、そうなると作業スペースとの兼ね合いから使えるスピーカーのサイズ制限もきつくなる。私のように、作業スペースにはなるべく大きな奥行きを求める人だとさらにきつい。

 というわけでこの配置を選ぶなら、「椅子のスペースも含めて考えるとちょっと無理……」的な事情がなければ、机と壁の間を10センチ程度は開けることを強く推奨する。10が無理なら5センチでもいい。それだけでだいぶ状況が改善される。

机にスピーカーを置かない

 当然ながら、諸事情で机に置けない&置きたくないという場合もあるだろう。

 ならデスクトップオーディオをあきらめる?

 その必要はない。

 デスクトップオーディオにおいて大切なのは生活空間としての机の存在、「日々を過ごす机で楽しむ」ことであって、必ずしもスピーカーを机の上に置く必要はない

机の横にスタンドを立てて置く

 机の横幅が狭くて、置けるスピーカーが限られる。いいなと思うスピーカーが置けない。もっとステレオ感を出したい。スピーカーに占拠された机上のスペースを取り戻したい。というか冷静に考えたらスピーカーが邪魔。

 以上のような状況で、机の左右にじゅうぶんなスペースがある/作ろうと思えばスペースを作れる場合、机の横にスタンドを立ててスピーカーを置くという方法がある。

横幅120センチの机の左右にスタンドを立てて、ブックシェルフ(Paradigm Monitor SE Atom)をセットアップ
イメージ写真を撮るにあたっていい感じの机がなく、机の奥行きが狭くて妙な感じになっているのはご容赦願いたい

 上のイメージ写真だと少々アレだが、例えば100×70センチくらいのコンパクトな机を使っている場合、左右にスピーカースタンドを立てるとかなりいい感じのセットアップになることは容易に想像できる。

 また、この配置は机というそれ自体オーディオとは無縁の家具ではなくきちんとしたスピーカースタンドを使えるため、スピーカーの実力を発揮させやすいという利点もある。

 ただ、机の大きさ次第では左右のスピーカーの間隔が広がりすぎて、座る位置を合わせた三角形が過剰に底辺の長い二等辺三角形になる可能性があるので、その点には注意が必要。むしろ、上のイメージ写真は実際にそうなってしまっているいまいちな例といえる。もっとも、イメージ写真のセットアップでもノートPCの内蔵スピーカーに比べたら遥かに素晴らしい体験ができることは事実である。やらないよりはやった方がいい。やろう。

 机の上にスピーカーを置いてもどうもしっくりこない、それでいて、机の左右にならスペースがある/作れる。そんな時にこそ試してほしい配置である。

机の奥にスタンドを立てて置く

 机の奥行きが狭くて、置けるスピーカーが限られる。いいなと思うスピーカーが置けない。スピーカーが邪魔でキーボードとマウスが割を食っている。スピーカーに押し出されて肘を置くスペースがなくなって疲れる。

 以上のような状況で、机の奥にじゅうぶんなスペースがある/作ろうと思えばスペースを作れる場合、机の奥にスタンドを立ててスピーカーを置くという方法がある。

机の奥にスピーカースタンド(TiGLON TIS-70J)を立てて、Persona Bをセットアップ
スタンド単体では机に対して高さが足りないので、厚い無垢板やスパイクを使って高さを稼いでいる

 上の写真を横から見るとこんな感じになっている。机の横にスタンドを立てて置く場合と同様、デスクトップオーディオを実践しつつ、机のスペース全体を使える。

 写真を見てピンとくる人もいると思うが、つまるところこの配置は、いわゆるホームスタジオ/DTM環境のセットアップと共通する。これに限らず、ホームスタジオ/DTM環境のセットアップはデスクトップオーディオの実践においてもおおいに参考になる。

 この配置はモニターがスピーカーと視聴位置の間で重大な障害物とならないように配慮する必要があり、スピーカースタンドの高さも「机の横にスタンドを立てて置く」場合以上に綿密な調整が必要になるなど、セットアップに関して考えることが多い。また、「机と壁の距離を大きく(スタンドを置くことを考えれば少なくとも30センチ以上)離す」というのは、一般的な部屋における机の使われ方からするとなかなか難しいと思われる。

 色々と越えるべきハードルがあることは確かだが、デスクトップオーディオのシステムを設置の自由度と再生音の両方で追及した時、行き着くのはこの形だと私は考えている。他ならぬ音楽制作の現場で使われている形だということも、この考えを補強する。

 細かい部分は一旦置いておいて、机の上にスピーカーを置くとどうにも狭苦しい、それでいて、机の奥にならスペースがある/作れる。そんな時にこそ試してほしい配置である。

机にスピーカーを置けない、それ以外のスペースもない

 思い切って「生活の場としての機能を維持できる形」を考えて机の配置換えを行うか、それでもどうしようもなく無理なら、ヘッドホンに専念するという選択肢だってある。

 スピーカーが置けないからといって、「いい音で楽しむ」ことをあきらめる必要はない。

まとめ

 デスクトップオーディオは生活を殺すオーディオではなく、生活の上に乗るオーディオである。

 なので、デスクトップオーディオを始める際は、まずはとにかく机の位置などを一切変えずに、机に何かしらのスピーカーを置いてみるのがいい。なんならこの際、箱ティッシュあたりをスピーカーに見立てて置いてみるのでもいい。実践してこそ見えてくるものは確実にある。

 そのうえで、どんな配置が相応しいか、どの程度の規模感のシステムが適しているか、この記事で提示した形も参考にしつつ、自分にとって最適なセットアップを見つけ出してほしい。

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