まず、OpenHomeとは何か。
OpenHomeとは、UPnPをベースに構築された「ネットワークオーディオプレーヤーをまともな音楽再生機器たらしめる諸々の機能」をまとめたオープン規格であり、実質的にDLNAの改良版にあたるネットワークオーディオのプラットフォームである。
「OpenHomeに対応したプレーヤーなら、まともなユーザビリティが実現されている」というイメージで概ね間違いはない。
ただし、OpenHomeやUPnPとは関係なく、別のプラットフォームを採用して優れたユーザビリティを実現しているプレーヤーやシステムも存在するので、まともなネットワークオーディオプレーヤーはすべからくOpenHomeに対応しているというわけではない。
そして、BubbleUPnP Server。(公式HP)
OpenHomeに関して調べた際に「BubbleUPnP ServerでUPnP/DLNAのプレーヤー(レンダラー)をOpenHome化する」という話は目にしていたが、幸いにして私が今までメインに使っていたプレーヤーはどちらも(実質的に)OpenHomeに対応していたので、特に必要を感じずスルーしていた。えらく気合いの入ったHPに眩暈を覚えて退散しただけだったような気もするが。
OpenHome非対応ネットワークプレイヤーをOpenHome化する「Bubble UPnP Server」 - SHO Page
上の記事を見て、思っていたより簡単そうだったので、うちの環境でも試してみた。
BubbleUPnP Serverとは何か。
色んな機能があるが、ここでは純ネットワークオーディオ用途に絞る。
公式の言葉を借りて、まずはコレ。
BUBBLEUPNP SERVER IS NOT AN UPNP AV MEDIA SERVER.
次にコレ。
BubbleUPnP Server provides new services, many of them running on top of your existing UPnP/DLNA devices:
?????となっても仕方がない。実際に使いながら順々に見ていこう。
今回試したいのは「BubbleUPnP Serverを使ってプレーヤーをOpenHomeに対応させる」ことだが、そのために前提として「OpenHomeに対応しないプレーヤー」が必要だ。
foobar2000 UPnP RendererやMediaMonkeyのDLNA機能はさておいて、そんな単体プレーヤー持ってたっけ……と思ったら、あった。
コレだ。
※KinskyはUPnP/DLNA互換のアプリであり、見ての通り、OpenHomeに対応しないプレーヤーでもKinskyを使うことはできる。単に使い物にならないだけで。よって厳密には、OpenHomeに対応することでKinskyが使えるようになる、というわけではない。
候補は二つあるが、発売時期的にも立ち位置的にも、SC-LX85を使ってみる。
一世を風靡した某プレーヤーと同時期の発売で、あくまでAVアンプのオマケ機能とはいえ、DLNA1.5に準拠しており、DMS・DMR・DMCの3 Box Systemとして運用できる。
つまり、「メーカー純正以外の汎用アプリでも互換性がある」ということ。
検証の対象として不足はない。
実際にはSC-LX85という特定の機器というより、むしろ今までに数多く発売されたUPnP/DLNAベースの単体プレーヤーの代表、として見てほしい。
(本来なら機種名を出すのがちょっと憚られるような結果になってしまった。察して!)
いざ。
……
…
心が折れそうだ。
素の状態のSC-LX85の「プレーヤー」としての機能は以下の通り。
操作へのレスポンス:察して!
シーク:×
スキップ:×
ギャップレス再生:×
音源のスペック表示:×
オンデバイス・プレイリスト:×
※アプリを起動させていてもプレイリストの次の曲が再生されない
……パーフェクト達成。
心が折れそうだ。
オンデバイス・プレイリストに対応しないもんだから、Kinskyを立ち上げ直すとプレイリストも消失する。
※On-Device Playlist/オンデバイス・プレイリストについての詳細はこの記事を参照
というわけで、BubbleUPnP Serverに何とかしてもらおう。
本当に何とかしてくれるなら死ぬほどありがたい。
今回はPC(Windows8.1)とQNAP TS-119にBubbleUPnP Serverを導入する。
他にどんな環境で使えるかは公式HP参照。
まずはPC。Javaが別途必要。
インストールすると、こんな画面がブラウザで開く。BubbleUPnP Serverの設定はブラウザで行うようだ。
目的から外れるので、インターネットからのアクセスはチェックを外す。
「Media Servers」。
色々とサーバーが表示されているが、これはすなわち、「BubbleUPnP ServerをインストールしたPC(で動いているサーバー)だけでなく、ネットワークに繋がった他のUPnP/DLNAサーバーを使った場合でも、BubbleUPnP Serverの機能が及ぶ」ということ。この辺は後で検証する。
それでは早速、「Media Renderers」から、SC-LX85をOpenHomeに対応させる。厳密には「対応させる」というわけではないようだが、その辺は後述。
なお、「対応させる」と言っても、「Create an OpenHome Renderer」にチェックを入れるだけである。
そして無事成功。「Success」でなかった場合どうなるかは不明。
なお、ギャップレス再生の部分はチェックが入れられなかった。
画像を見てのとおり、TIDALに対応しないプレーヤーであっても、BubbleUPnP Serverを使うことでTIDALを使えるようになる。
TIDALについてはこの記事では特に検証しないが、以下の記事で取り上げている。
BubbleUPnP Serverとfoobar2000を組み合わせる、ついでにTIDALも使う
BubbleUPnP ServerとJRiver Media Centerを組み合わせる、ついでにTIDALも使う
BubbleUPnP見てみると、SC-LX85(OpenHome)が別に現れている。
それを選ぶと、きちんとプレイリストが共有・同期されている。
OpenHomeに対応しないプレーヤーを締め出すKazooでもSC-LX85が選べる。Kazooが使えるということは、すなわちOpenHomeに対応しているということである。
プレイリストもきちんと同期している。
【2017/02/01追記】
OpenHomeに対応したプレーヤーでも、Kazooでは操作できない場合がある模様。
一例として、LUMINのプレーヤーは以前までKazooで操作できていたのが現時点ではできなくなっている。
【追記おわり】
PCにBubbleUPnP Serverを導入し、OpenHomeに対応させた状態での、SC-LX85の「プレーヤー」としての機能は以下の通り。
なお、サーバーにはTwonky Server(8.1.2)を使用した。
操作へのレスポンス:変化なし
シーク:×
スキップ:○
ギャップレス再生:×
音源のスペック表示:○
オンデバイス・プレイリスト:○
この結果をどう捉えればいいのだろうか。
確かに、BubbleUPnP Serverが言う通り、オンデバイス・プレイリストには対応した。他にも使える機能は増えた。
しかし、本来OpenHomeがもたらすものは単にオンデバイス・プレイリストだけではない。ギャップレス再生は依然としてできず、レスポンスもまったく改善されていない。設定を見る限りではギャップレス再生を可能とするオプションもあるようだが、今回は使用できなかった。
残念ながら、もっと根深い部分に問題を抱えているプレーヤーを生まれ変わらせるだけの力はない、といったところか。
もちろん、オンデバイス・プレイリストに対応するというだけでも、BubbleUPnP Serverを導入する価値は大いにある。
むしろ、あるプレーヤーでオンデバイス・プレイリスト対応だけがネックになっているとすれば、BubbleUPnP Serverの導入によってユーザビリティの最後のピースが埋まることになる。
BubbleUPnP Serverを動かしつつ、BubbleUPnP Serverをインストールした機器以外のサーバーとしてRockDisk for Audio(中身はTwonky Server 7.2.9)を使ってみたところ、問題なくオンデバイス・プレイリストが機能したことも確認した。BubbleUPnP Serverの機能は同一ネットワークに接続されたすべてのUPnP/DLNAサーバーに及ぶ。
これはPCでもQNAP TS-119でも同様なので、本格的にBubbleUPnP Serverの恩恵を享受しようと思えば、常時稼働のNASに導入するのが良いと思われる。
再生中の音源のスペック表示がおかしくなることもあるようだが……
ただ、LUMIN L1ではオンデバイス・プレイリストの内、「プレイリストのアプリ間共有」と「アプリ再起動後もプレイリスト保持」は出来たが、「アプリ終了時の継続再生」は機能しなかった。LUMIN L1は一応UPnPサーバーのようなのだが、さすがに特殊すぎたか。
ついでに音源情報表示もおかしい。
ま、LUMIN L1を使うような人がBubbleUPnP Serverの世話になることはおそらくないだろうし、問題にはなるまい。
続いて、QNAP TS-119にBubbleUPnP Serverをインストールする。
公式HPからQPKGファイルをダウンロードしてインストール。Javaが別途必要。
なおこの時、PCのBubbleUPnP Serverも動いている。
PCとQNAP TS-119で同時にBubbleUPnP Serverを動かしたらどうなるのか?
……こうなった。
PCのBubbleUPnP Serverでも設定すれば、こうなる。
BubbleUPnP Serverの実体見たり。
BubbleUPnP ServerはUPnP/DLNAデバイスの“上”で機能し、プレーヤーを元にして、「OpenHomeに対応したプレーヤー」を“作る”。
これが、「BubbleUPnP ServerでUPnP/DLNAのプレーヤー(レンダラー)をOpenHome化する」ことの正体のようだ。
BubbleUPnP Serverを使ったプレーヤーのOpenHome対応は、内容的にはほぼ「オンデバイス・プレイリスト」に限られ、ユーザビリティを根本的に改善するものではない。
が、それだけでも大きな価値がある場合は多いと思われる。
無論、BubbleUPnP Serverなんか使わずに済むように、最初からプレーヤーがOpenHomeに対応しているに越したことはない。
最後に念のため言っておくと、SC-LX85は素晴らしいAVアンプである。
そこに他意はない。