3年前に「約10万円で買える、マルチに使える、色々とちょうどいいDAC」として導入したiFi audio NEO iDSDは、それ以来私のデスクトップオーディオのリファレンスの地位にあった。
NEO iDSDに続いてNEO Streamが登場したことで「NEO」シリーズが出来上がり、次のNEOは何だろうかと思っていたら、早々にNEO iDSD2が登場したという形である。
この記事では前機種であるNEO iDSDとの比較をメインに、NEO iDSD2がどのような進化を遂げたのかを見ていきたい。
目次
外観・仕様
214×158×41mmのコンパクトなサイズや基本的なデザインは前機種から継承されている。
NEO iDSD(下)との外観上の違いは大きく二つで、機能追加に伴う物理ボタンの追加と、ディスプレイの変更。特に後者は大型化とカラー化によって視認性が格段に向上した。NEO iDSDの画面がやけに暗く見える(経年変化もあるだろうが)くらいには輝度も上がっている。
背面・入出力ではアナログ入力とクロック入力が新たに追加されたほか、Bluetoothアンテナが内蔵されたことで別途アンテナを接続する必要がなくなった。端子の追加によって少々背面は窮屈になっているが、実使用上の悪影響はない。
電源は9V/1.5A~15V/0.9Aとなり、標準でiPower2(12V)が付属する。
NEOシリーズの特徴ともいえるスタンドが付属し、省スペースに寄与する縦置きも可能。その際はディスプレイも縦表示に切り替わる。
DACとしての仕様、USB入力でリニアPCM 768kHz/32bit・DSD512対応は相変わらず。まさにiFi audioが先鞭をつけた感のある「超ハイレゾ」スペックも数値的にはこの10年でほとんど変わっておらず、流石にこの辺が打ち止めなのだろう。
機能・運用
大型化したディスプレイによってNEO iDSD2の操作性は大きく向上、各種設定へのアクセスも容易になった。
リモコンはアルミ製のしっかりしたものが付属し、この点でも操作性は向上している。ちなみにこのリモコン、音量調整のほかに再生・一時停止とスキップのボタンがあるのだが、これを使ってPCの再生ソフトを直接操作可能(Roonで確認)。
「Digital Filter」は4種類から選択可能。私は基本的に「デジタル・フィルターなし」のBP:Bit-Perfect以外を使うことはないだろうが……
「Volume sync」は何のことだろうと思ったら、USB接続したPCの音量調整とNEO iDSD2のアナログボリュームを連動させる機能のようだ。PCが前提となるデスクトップオーディオでNEO iDSD2を活用するうえでたいへん有用な機能といえる。
また、NEO iDSD2は業界初となるaptX Losslessコーデックへの対応を果たした。つまり、CD品質とはいえついにBluetoothによるロスレス伝送を実現した製品ということである。
これ自体はデジタルオーディオにおける大きな一歩で、NEO iDSD2の大きな進化点なのは間違いない。ただ、iOS端末しか持っていない私の環境ではaptX Losslessをテストすることすらできないので、ここでは「対応しました」ということを強調するにとどめるほかない。
最近のiFi audio製品の一部は「Nexis」というアプリに対応しており、NEO iDSD2はこれを使って各種本体操作やファームウェアアップデートなども行える。
……とのことなのだが、私の環境ではなんぼやっても接続に失敗して使用できなかった。
音質
手元にあるNEO iDSDとの比較を中心に述べる。NEO iDSDは私のデスクトップシステムのリファレンスであり続けたので、後継機のNEO iDSD2もデスクトップ環境で試聴している。
NEO iDSD2で音を出してすぐに、NEO iDSDとの大きな差を実感した。
一聴して分解能の高さが印象的で、音楽を構成する一音一音に粗さがなく実にしなやかであり、また鮮明。NEO iDSDと比べて音の混濁感が一気に低減され、私の(いささかやりすぎ感のある)デスクトップシステムにおいて、過去最高に開放感のある空間が実現する。それ以外にも情報量やレンジ感、中低域の充実など、オーディオ機器としての性能は改善というレベルを越えて、完全にグレードが違うレベルで進化を遂げている。
このところずっとはまっているDiana Rossのアルバム「Diana」から「I'm Coming Out」を聴けば、冒頭のドラムの連打のダイナミックレンジやトランジェントにおいて、NEO iDSDとNEO iDSD2の違いは歴然としている。元々NEO iDSDはニュートラル志向というか、オーディオ機器としてしっかりとした能力を持ちつつも、「高性能感」をそれほど感じさせるタイプではなかったのに対して、NEO iDSD2はデスクトップオーディオという制約だらけの環境下でもオーディオ的な凄味を実感できるほどに、絶対的な音質の向上が著しい。そしてふくよかさやおおらかさの欠如した神経質な方向ではなく、純粋に音楽を聴く楽しみに繋がっているのが素晴らしい。
AKG K701との組み合わせでヘッドホンアンプとして使った際も、NEO iDSDと比べて基本性能の違いは明らかだ。駆動力を含めてNEO iDSDも決して悪いわけではないのだが、NEO iDSD2の鮮明かつ中低域の充実した音を聴いた後では、どうしても眠い音に感じてしまうほどに。
空気録音
Audio Renaissanceで空気録音に使用する音源は、私自身が原盤権を保有して権利関係がクリアされているKOKIA『白いノートブック』に統一している。
まとめ
NEO iDSDから3年足らずでNEO iDSD2が登場すると聞いた時、正直なところ、「ずいぶん早いな」と思った。
ディスプレイの刷新や最先端のBluetooth対応など、機能面で進化しているのはわかる。デジタルオーディオの世界における製品サイクルの早さも承知している。それでも、NEO iDSDがよく出来ているだけに、はたしてこんな短い期間でモデルチェンジをするほどのことなのだろうか、とも思った。
そんな疑問も、音を聴けば納得に変わった。確かに機能は増え、iFi audioらしい時代の最先端を行く仕様を備えたことは大きな変化点といえる。しかしそれ以上に、「NEO iDSDからNEO iDSD2への最大の変化点は音質だ」と声を大にして言いたい。
純粋な音質面でこれほどの進化を果たせるのなら、モデルチェンジに踏み切ったのは正解だ。