【レビュー】iFi audio NEO Stream

 iFi audioにはいくつかの製品シリーズがある。据え置きでいえば、フラグシップの「Pro」シリーズやエントリークラスの「ZEN」シリーズがそうだ。

 さて、ここに私も使っている「NEO iDSD」というiFi audioのUSB DACがある。

【レビュー・空気録音あり】iFi Audio NEO iDSD 外観・仕様・音質https://youtu.be/e1Wq2CdjPjw  「約10万円で買える、マルチに使えるDAC」として文句なしにおすすめで...

 2021年の初めに登場した製品で、据え置き機としてiFi audioのちょうどミドルクラスに相当するわけだが、登場以来「NEO」の名を冠する他の製品は出てこず、あくまでNEO iDSDは単発のモデルなのかな、とも思っていた。

 思っていたら、「NEO Stream」が登場した。価格は税込198,000円で、これにてめでたく「NEO」シリーズが確立した。

 今までのiFi audioならアナログヘッドホンアンプ辺りが出てきそうなところが、NEO Streamはその名のとおり「ストリーマー」、すなわちネットワークトランスポート/プレーヤーである。先行する「ZEN Stream」が純粋なネットワークトランスポート、つまりDACを搭載せずデジタル出力に特化していたのに対し、NEO StreamはDACを搭載しており、単体ネットワークプレーヤーとしても使用可能になった、というところがミソ。

 「NEO」シリーズの第二弾として従来とは一線を画したネットワークオーディオ製品を出してきたこと、そして元々DAC部に並々ならぬ力を注いできたiFi audioがDAC搭載型のプレーヤーを出してきたというところに、iFi audioのネットワークオーディオに対する本気度を感じる。





外観・仕様

 NEO Streamの外観デザイン・筐体は基本的にNEO iDSDと共通。

 サイズも横幅214 x 奥行き151 x 高さ41 mmと、端子に伴う奥行きの僅かな違いを除いてこれまた共通なので、重ねて置いてもしっくりくる。ただし位置的にアンテナは干渉する。

 NEO Streamは音量可変出力が可能だが、NEO iDSDと異なりヘッドホンアンプを搭載しない。フロント中央のノブは音量調整と設定操作の両方で使用する。フロントのUSB-Cからのデジタル出力も可能。

 背面。

 NEO Streamは基本的にネットワーク入力しか持たないストイックなネットワークトランスポート/プレーヤーである。しかも、ネットワーク入力は通常使われるRJ45のみならず、M12端子(!?)とオプティカル(SCコネクターの光ファイバー)入力まで搭載する。

 iFi audioならではの「Active Noise Cancellation II」機能搭載のUSBやマニアックな接続を可能にするI2Sを含む豊富なデジタル出力に対し、アナログ出力はRCA・4.4mmバランスでXLR出力を持たないあたり、NEO Streamの立ち位置は「プレーヤー」よりも「トランスポート」に重きが置かれているのかな、と感じる。

 なお、NEO StreamはリニアPCM768kHz/32bit・DSD512の再生とMQAのフルデコードに対応するが、出力設定によって色々と制限がかかる。

 結構ややこしい部分なので、iFi audioのTipsから直接引用する。

・再生フォーマット上限と設定の組み合わせ
可変出力/DoP設定:
DSD128(ボリューム最大時)
PCM768
MQA対応(ボリューム最大時・アナログ出力時)

可変出力/DSD Direct設定:
DSD128(PCM変換再生)
PCM768
MQA対応(ボリューム最大時・アナログ出力時)

固定出力/DoP設定:
DSD256
PCM768
MQA対応(アナログ出力時)

固定出力/DSD Direct設定
DSD512
PCM768
MQA対応(アナログ出力時)

  https://ifi-audio-jp.blogspot.com/2022/09/neo-stream-tips.html より

 つまるところNEO Streamをパワーアンプに直結する「可変出力のネットワークプレーヤー」として使う場合、DSDはネイティブで再生できない。ガチでDSD音源を聴きたければアンプ側で音量調整を行うか、本機をトランスポートとして使うことになる。

アナログ&可変出力でDSDを再生した際のシグナルパス

 また、NEO StreamのボリュームはDSPボリュームであり、ロスレスではない(可変出力設定でも、ボリュームを最大にするとロスレスとなる)。これが気になる人は、やはりアンプ側で音量調整を行うか、本機をトランスポートとして使う必要がある。

 以上の仕様からも、やっぱりNEO Streamはプレーヤーよりもトランスポートとしての立ち位置に軸足が置かれているのかな、と感じる。

 
 底面。四か所に貼るシリコンパッドが付属する。平坦なのでインシュレーターは使いやすい。

 NEO StreamにはNEO iDSDと同様の縦置きスタンドが付属する。

 縦置きスタンドの横幅は実測77ミリで、仮にNEO iDSDと二台並べて置いても横置きするよりも省スペースで設置可能。デスクトップ――ネットワーク入力オンリーのNEO Streamをデスクトップに置くシチュエーションはいまひとつピンと来ないが――など、設置スペースに制約がある場合で有効に使える。

 写真では少々わかりづらいが、縦置きにするとディスプレイの表示も縦仕様に切り替わる。

 背面写真で見たように、NEO Streamのオプティカル入力はこの手のネットワークプレーヤーで一般的なSFPポートにモジュールを組み合わせる形ではなく、SCコネクターの光ファイバー用で端子が決め打ちになっている。この仕様だけ見ると汎用性的にどうなんだ、と思うところなのだが、NEO Streamにはなんと純正の光メディアコンバーター「OptiBox」と光ファイバーケーブルが付属する。

 市場にあるオーディオ用に吟味された光メディアコンバーターは、それだけでも結構なお値段がする。それをオプションではなく付属させ、本機を買えば確実に光アイソレートを可能にしてきたあたり、iFi audioはネットワークオーディオに対して極めて真剣だ。

付属の光メディアコンバーターを使っているところ
メディコン用のケーブル類も一式付属する

 NEO Streamのデザイン上の大きな特徴として、再生中の音源のアルバムアートも表示可能なフロントのディスプレイが挙げられる。

 ディスプレイはそれなりに高解像度で、音源を再生していない時は本機のIPアドレスや設定が表示される。

 しかし、いかんせんサイズが小さすぎることもあり、実際に音楽を再生する際には「お、再生されてんな」と確認できる以上の意味はない。

 あと、全角文字が一部(「ファニー・バニー」の「・」)表示されないのは仕方ないとしても、

 同じ音源でもアルバムアートが表示されたりされなかったりロード中のまま固まったり、

 TOTOにこんなメンバーいたっけ?

 という具合に、アルバムアートの表示に関してはかなり挙動が怪しい。実用上の意味はほとんどないとしても、この辺はファームアップで改善してもらいたいところだ。

 
 NEO Streamは外部電源仕様で、同社のiPower IIが付属する。他にも、iFi audio製品の例に漏れず付属するケーブル類も多い。

付属品一覧
画像出典:https://ifi-audio.jp/neo/neo_stream.html

機能・運用

 NEO Streamのネットワーク機能は基本的に同社の先行するZEN Streamと共通する。というわけで、あわせてZEN Streamのレビューも参照されたい。

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 同一ブランド内でネットワークオーディオのプラットフォームを共有するのはごく当然のことであり、これはiFi audioも例外ではない。Pro iDSD Signature? なんのこったよ

 
 というわけで、NEO Streamでは以下の機能が使用可能。

・UPnP/OpenHome対応のネットワークプレーヤー
Roon Ready
・TIDAL Connect
・Spotify Connect
・AirPlay
・HQPlayer NAA

fidata Music AppからNEO Streamが見えるの図
アナログ可変出力に設定している場合、音量調整をお忘れなく
TIDAL Connect
Spotify Connect
AirPlay

 全機能が有効になる「AIO(All In One)」モードのほか、ZEN Streamにあった「Exclusive Mode(排他モード)」も備える。Exclusive Modeは特定の機能以外の不必要なサービスを停止することで動作を最適化し、音質面のメリットを実現するiFi audio独自の仕組みである。

 Exclusive Modeの設定は本機のフロントから行う

排他モードでRoon Readyを選んでいるところ

 利用可能な四種類のデジタルフィルターの選択もフロントから。

 Web設定画面も基本的にZEN Streamと同様。これを使うためにはAIOに設定する必要がある。

 先述したように、「プレイバックオプション」と「音量オプション」には要注意。

 一応純正アプリとして「Stream-iFi」も用意されているが、これは本機のWeb画面と基本的に同じものなので、取り立てて使う必要性はない。

音質

 試聴はリビングシステムにて、NEO Streamの価格を踏まえ、スピーカーにB&W 706S2、アンプにデスクトップシステムから持ち出したTEAC AP-505 ×2(706S2をバイアンプ)を組み合わせた。また、NEO Streamをトランスポートとして使う際のDACとしてNEO iDSDを用意した。NEO StreamはXLRバランス出力を持たず、私も4.4mmバランス→XLRケーブルを持っていないので、比較の際の接続はNEO Stream・NEO iDSDともにRCA出力とした。

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 再生にRoonを使うかどうか迷ったが、この規模感のシステムで単体Roon Serverを使うのはどうかなと判断し、Soundgenicをサーバーに使い、NEO Streamはネットワークプレーヤーとして使用した。

 試聴には旬な音源をということで、主にYOASOBIの「祝福」(ハイレゾ版)を用いた。

Roonのスクショなのは音源の紹介に便利ってだけで、実際の再生にRoonは使っていない

 なお、NEO Streamは有線/無線の両方でネットワーク接続が可能だが、音質的には、

①Wi-Fi接続
②有線LAN接続(RJ45)
③光LAN接続(付属の光メディアコンバーターを使用)

 で、順当に①<②<③となる。使っているLANケーブルはaudioquestのForestで共通。

 本機のクラス的にも、Wi-Fi接続では正直もったいない。せっかく光メディアコンバーターまで付属しているのだから、ここは素直に光LAN接続をおすすめしたい。ちなみにM12端子は試そうにも対応する機器がないので試していない。

アナログ出力/プレーヤーとして

 組み合わせたAP-505はボリュームを持たない純粋なパワーアンプなので、NEO Streamのボリュームを使うことになる。先述した理由でNEO Streamのボリュームはあまり使いたくなかったのだが、AP-505以外に価格帯的にバランスのいいアンプの手持ちがないので致し方なし。

 また、デジタルフィルターは本当は「Bit-Perfect」を使いたかったが、私の環境ではなぜか大きなサーノイズが出るため、それ以外で一番しっくりきた「Standard」で聴いている。

 
 さて、自分で組んだシステムであり手前味噌で恐縮だが、これが猛烈に音がいいのである。

 トータルで100万円近いシステムであり、これを「お手頃」などと言うつもりは毛頭ないが、「オーディオはもうこれでおしまいでいいんじゃないかな」と思える音が出ている。最近700シリーズの新型が出たので706S2をどうしよう、などと考えていたが、そんな鬱屈も一瞬で吹き飛ぶ。やはりバイアンプは強い、というのも多分にあるのだろう。

 そしてもちろん、このように思えるのはNEO Streamがしっかりとソース機器としての役割を果たしているからだ。

 「祝福」の音作りは良くも悪くも「現在の日本の音楽」という感じで、加工しまくりの声と音がみっちり空間を埋め、音圧もかなり高い。一方でステレオの活用はなかなか凝っており、様々な音が空間のあちこちに乱れ舞う面白さもある。という感じでオーディオ機器にとってはある意味シビアな音源なのだが、NEO Streamは曲のエネルギッシュなイメージを損なうことなく、それでいて一音一音をしっかりとほぐして描き分け、べったりとした印象を抱かせることもない。

 組み合わせたスピーカーがB&Wの706S2ということもあるのだろうが、全体的に鮮明さが意識される音で、再生音に滑らかさや落ち着きを求める向きとは異なる。そのぶん、ちょいと音が眠い曲も目が覚めるような溌溂な音で楽しむことができ、音楽を浴びるように聴く満足度は高い。何度も「NEO Streamの軸足はプレーヤーよりもトランスポートなのかな」的なことを書いたが、アナログ出力/プレーヤーとしての実力は決しておまけで片付けられるようなものではない。

デジタル出力/トランスポートとして

 まず、NEO Streamをトランスポートとして使うことは、NEO Streamのスペックをアナログ出力に関連する制約なしで最大限生かすという意味でも重要になる。

 NEO iDSDとの組み合わせ(USB接続)では、エネルギー感の違いはそれほどでもなく、分解能の違いが大きい。例えば「祝福」の1:27~のくぐもったコーラスのほぐれ方で、NEO Streamのアナログ出力から顕著な向上が感じられる。音の芯とエネルギー感は維持しつつも音像が引き締まるため、音楽全体の見通しが良くなり、「うるさい」という印象も改善される。

 もちろん組み合わせるDACの質次第とはいえ、NEO iDSDとの組み合わせは音楽を聴いた際の楽しさをいささかも減じることなく、より音楽の細部、ひとつひとつの音に切り込むというオーディオ的な快感を存分に味わえる。

 ここからはNEO iDSDとAP-505の接続をXLRケーブルに替えて、極大のダイナミックレンジをもってシステムの能力を炙り出す際に使う、Reference Recordingsの大植英次/ミネソタ管弦楽団の「ローマの松」と「火の鳥」を聴いた。

 もう立派の一言。トータルではかつて聴いた706S2とUD-701N・AP-701 ×2の組み合わせにも劣っておらず、パワーアンプのグレード差があってなお、音の鮮明さや切れ味では上回っていると思えるほど。

 
 既にそれなりのDACを持っていて、そこに何かしらネットワークトランスポートを追加してネットワークオーディオを始めたいけど、SoundgenicやZEN Streamじゃちょっと物足りない?

【比較と解説】Soundgenic HDL-RA2HF・iFi audio ZEN Stream・Bluesound NODE Soundgenic HDL-RA2HF  iFi audio ZEN Stream  Bluesound NODE  これ...

 それならNEO Streamだ。

まとめ

 NEO Streamはネットワーク入力オンリーのストイックな、そして光LAN接続も可能な、「この価格でここまでマニアックに攻めるか?」という仕様を満載した、iFi audioの本気のネットワークトランスポート/プレーヤーである。純粋な音質的にも、仕様的にアレコレ制限のあるアナログ出力/プレーヤーとして使っても十二分に価格を納得させるクオリティを備え、トランスポートとしての能力も言わずもがな。

 つまるところNEO Streamは、コンパクトなサイズでありながら立派にフルサイズのシステムに組み込み得るネットワークトランスポート/プレーヤーであり、先述もしたが、ネットワーク入力オンリーのNEO Streamをデスクトップに置くシチュエーションは逆にピンと来ない。同シリーズであるNEO iDSDとの組み合わせで考えると、どうしてもデスクトップオーディオ的なイメージが強くなってしまうが、NEO Streamの本懐はそこにはない、というのが私の印象だ。

 20万円ぽっきりでフルスペック&光アイソレート対応のネットワークトランスポートが手に入ると考えれば、この記事に出てくるシステム以上の、もっともっとハイエンドなシステムに組み込むこともおおいに考えられる。ZEN Streamが示した「iFi audioのネットワークオーディオ」は、NEO Streamでさらに大きな可能性をオーディオファンにもたらすことになった。

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