Lenbrook(BluesoundやNADの親会社)がMQAの全資産を買収

 Lenbrook(Bluesound、NAD、PSB Speakersの親会社)がMQAの全資産を買収したとのリリースがあった。

Lenbrook Extends Leadership in Hi-Res Audio with MQA Acquisition

 MQAは今年の春に経営破綻し、さらにMQAと(事実上唯一の)タッグを組んでいたTIDALも早々にFLACでの配信を導入すると宣言し、実際にTIDALのFLAC配信が先日スタートしたというタイミングで、この展開である。

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 正直なところ、「なんで???」という感情を禁じ得ない。Lenbrookのリリースはこの手の発表ではありきたりのポジティブな文言が並ぶだけで、その真意をはっきりと汲み取ることは困難だ。

 
 この「なんで???」という部分について、DARKOがなかなか刺激的な意見を開陳している。
 

My crazy theory about why Lenbrook bought MQA - DARKO

Bluesound needs another MQA-capable streaming service to step into the slowly evolving void being left by Tidal.

So maybe – just maybe – Bluesound will soon introduce its own MQA-powered streaming service. There are several white-label providers who could assist with this. The result would be a streaming service that Bluesound could integrate into its BluOS app to go, as Greg Stidsen says above, “from studio to listening room”.

 要は、Lenbrook/Bluesoundの「BluOS」プラットフォームをさらに強いものにするために、TIDALがMQAから離れた今、BluOSに組み込める形で、Lenbrook/BluesoundがMQAを使った独自のストリーミングサービスを始めるのではないか……というものだ。

 
 「いちオーディオメーカー(グループ)が音楽ストリーミングサービスを運営するなんて可能なのか?」とどうしても思ってしまうのだが、それともLenbrookはそれに現実味を感じさせるくらい巨大な企業体なのだろうか? その辺はいまいちわからない。

 ただ、仮にLenbrook/BluesoundがMQAを使った独自のストリーミングサービスを始め、それをBluOSに統合し、ユーザーとオーディオメーカーの両方に「MQAが聴きたいならBluOS製品を選んでね」なんて迫ったところで、それがいまさら威力を発揮するなんてことはあるのだろうか?

 
 Bluesound/BluOSは当初からローカル音源のガチ再生よりもストリーミングサービスとの統合&連携を重視してきたこともあり、重要なサービスであるTIDALが推したMQAもいちはやく対応し、ブランドとしてもMQA対応のアピールを一等地で行ってきた。Bluesoundが本心ではMQAをどう思ってきたかはさておき、今までブランドとしてMQAに深く関わってきたことは事実である。

 そうこうしていたらMQAが破綻。MQAの内情、特に認証関連の諸々が現在どうなっているかは私にはわからないが、少なからず混乱が生じているであろうことは想像に難くない。そんな状況下で、このままMQAと関係した数多の製品やブランドを巻き込んで盛大に機能不全に陥るか、それともその展開を避けるために諸々の実務を誰かが引き継ぐか、となり、そこで今までの関係も踏まえてLenbrookが手を挙げた……という風に私は考えている。

 外野からするとLenbrookが面倒を抱え込んだだけにも見える。しかし、Lenbrook自身Bluesoundをはじめ大量のMQA対応製品を抱えており、しかもBluOSをLenbrookグループ以外のブランドにもプラットフォームとして供給している手前、このままMQAが機能不全に陥るのを座して待つよりも自分でハンドリングした方がいい、と判断するのはありそうな話ではなかろうか。

Lenbrook’s primary objective in this acquisition was to provide certainty for business and technical developments that were underway prior to MQA’s administration.

 実際リリースでこう言ってるし。

 というわけで、「なぜLenbrookはMQAを買収したのか」についての私の意見は穏当かつ単純で、それは「後始末を引き受けたに過ぎない」というものだ。ある意味で責任感が強いと言えるし、立派だとも言える。

 
 しかし、もし本気でLenbrook/BluesoundがMQAに大きな価値を見出し、さらにDARKOの言うように「TIDALに代わる独自のMQAストリーミングサービスとBluOSの統合による競争力強化」という野望を抱いているのだとしたら、さすがにその時はBluOSというプラットフォームの将来に暗雲を予感せざるを得ない。

 もし本当にMQAが(MQA自身が言うように)オーディオファンとメーカー、そして音楽業界から広い支持を集めていたのなら、なぜMQAは破綻したのだろうか? Lenbrookはこのことについてどう考えているのだろうか?
 
 

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