NEO Streamの価格は税込198,000円。トランスポートとDACの一般的な価格バランスを考えると、NEO StreamとDACの組み合わせの価格は6桁後半に突入してもなんらおかしくはない。
となれば、Audio Renaissanceのレビューのレギュレーション的に、NEO Streamはリビングシステムだけでなくメインシステムでレビューを行う製品にも該当する。
iFi audio入魂のNEO Streamは、はたして価格帯度外視のメインシステムにおいてどのようなパフォーマンスを示すのか。ということで三種類のテストを行った。
なお、記事中における「サーバー」や「プレーヤー」といった単語(呼び方よりも、それが意味するもの)を理解していないと、この記事の内容だけでなく、Roonのこともファイル再生のこともまったく理解できていないということになる。
よって、NEO Streamの音質云々を気にするよりも先に、それらの理解を完璧にしておくことが必要になる。
目次
①ネットワークトランスポートか、Roon Bridgeか
NEO Streamの主な使い方としては、UPnP/OpenHome対応のネットワークトランスポートと、Roon Ready対応によるRoon Bridge、この二つになると思われる。
それでは、NEO Streamをネットワークトランスポートとして使う場合と、Roon Bridgeとして使う場合の音を比較するとどうなるのか。私のシステムではcanarino FilsがRoon ServerにもUPnPサーバー(今回はTwonky Serverを使用)にもなるので、純粋に「同じ機器を使いながら、別の使い方の比較」が可能である。音源にはいつものKOKIA「孤独な生きもの」を用いた。
まずはネットワークトランスポートとして。
一言で言って「薄味」。空間の広がりと透明感に優れ、声の微妙な震えなど、細部の描写に光るものを感じさせる。ノイジーなところを感じさせることなく、DST-Lepus&DSC-Doradoペアの瑞々しさをストレートに引き出す一方で、音楽が元気よく押し出されてくるイメージはない。
続いてRoon Bridgeとして。
一言で言って「濃い味」。力感、低域の沈み込み、ボーカルのハリなどに優れ、「聴き応え」という意味では間違いなくこっちに分がある。元々RoonはPCの再生ソフトの中では(特にJRiverあたりと比べると)薄味だという印象があるので、ネットワークトランスポートと比べたこの結果は少々意外でもある。
結論としては、傾向は違えど絶対値は同等。ネットワークトランスポートとして使っても、Roon Bridgeとして使っても、NEO Streamはいずれ劣らぬ実力を発揮する。ただ、一般的に好かれるのはRoon Bridgeとして使った時の音かな、とは思う。
②ネットワークトランスポートとして
既にミュージックサーバー&USB DACでシステムを組んでいる場合、NEO Streamをネットワークトランスポートとして新規に導入する意味はあるのか。
というわけで、HFAS1-XS20(ミュージックサーバーとして使用)とNEO Streamの比較である。音源にはいつものPrince「Why You Wanna Treat Me So Bad?」を用いた。
これはもう完全にNEO Streamの圧勝。曲が始まった瞬間に軍配が上がるレベル。とにかくエネルギー感が段違いである。色彩感もおおいに強まり、声、楽器、音楽を構成するすべての要素が生き生きする。特に終盤のギターソロなんてまるで別モンである。
空間表現や解像感といった点も明らかに向上しており、再生音は全面的にHFAS1-XS20を上回る……というか、HFAS1-XS20をミュージックサーバーとして使った時の音ってこんなに薄かったっけ……と思ってしまったくらいだ。①の比較ではRoon Bridgeに対してネットワークトランスポートとしてのNEO Streamの音は薄味と書いたが、この比較ではだいぶ異なる印象になったというのも面白い。
こんな風に書いたが、HFAS1-XS20が機能的にも音質的にも優れたミュージックサーバー(サーバー&プレーヤー)であることに疑いはない。下手なネットワークトランスポートを追加したところでほとんど無意味、それどころかかえって逆効果になる、というのは長年HFAS1-XS20を使い続けて実感しているところである。
そして、そんなHFAS1-XS20を再生音で真正面から圧倒するのだから、NEO Streamのネットワークトランスポートとしての実力は本物だ。
③Roon Bridgeとして
既にRoon&USB DACでシステムを組んでいる場合、NEO StreamをRoon Bridgeとして新規に導入する意味はあるのか。
というわけで、canarino FilsのUSB出力とNEO Streamの比較である。音源にはいつものTingvall Trio「Pa Andra Sidan」を用いた。
これまた、端的に言って効果てきめん。エネルギッシュ、もとい「猛烈」という表現がしっくりくるcanarino Fils直結に対し、NEO StreamをRoon Bridgeとして追加するとまずは「しなやか」という印象を受ける。
音像が研ぎ澄まされることで空間の見通しが大きく改善、ピアノの煌めきはもちろんのこと、ごく細かなシンバルワークなどの微小な音に到るまで直結時からシャープネスが良い意味で向上し、描写から曖昧さがなくなる。クライマックスの畳みかけるようなドラムの連打はこうした音の変化の恩恵が最もわかりやすい。より鮮明に、より筋肉質に、より鋭敏になり、俄然生々しさが増す。結果として、曲から感じられるスリリングなイメージがいっそう鮮やかなものとなる。
私が使っているcanarino Fils自体、USB出力にJCAT USBカードFEMTOを使うなど、「オーディオ用PC」としてガチの仕様である。いい加減なRoon Bridgeを挟むくらいなら、直接USB DACを繋いだ方がよほどいいという自信もある。
そして、NEO Streamはそれを軽くぶっちぎったわけで、いささか悔しくもある。本気でRoonのシステムを志向しており、「Roon Ready対応のネットワークプレーヤーの導入」ではなく「既にあるUSB DACを活かす」方向で考えているなら、NEO StreamはRoon Bridgeとして、価格的にも機能的にも実にいい感じの選択肢となる。
まとめ
前回のレビューで、
つまるところNEO Streamは、コンパクトなサイズでありながら立派にフルサイズのシステムに組み込み得るネットワークトランスポート/プレーヤーであり、先述もしたが、ネットワーク入力オンリーのNEO Streamをデスクトップに置くシチュエーションは逆にピンと来ない。同シリーズであるNEO iDSDとの組み合わせで考えると、どうしてもデスクトップオーディオ的なイメージが強くなってしまうが、NEO Streamの本懐はそこにはない、というのが私の印象だ。
20万円ぽっきりでフルスペック&光アイソレート対応のネットワークトランスポートが手に入ると考えれば、この記事に出てくるシステム以上の、もっともっとハイエンドなシステムに組み込むこともおおいに考えられる。
と書いた。
そこで、それを確認するために、価格度外視のメインシステムでNEO Streamの音質を深掘りしたわけだが、NEO Streamは立派にその能力を証明した。しっかりと「何がしたくて導入するのか」を考えたうえで、Exclusive Mode(排他モード)の活用も含めて使うなら、たとえ組み合わせる相手が価格帯的にずっと上のシステムであろうと、NEO Streamは確かな実力を発揮する。