PCが本当の意味で「オーディオ機器」になる日
理想のオーディオ用PCを求めて ソフト編
理想のオーディオ用PCを求めて 設置・接続・音質編
理想のオーディオ用PCを求めて ミュージックサーバー編
理想のオーディオ用PCを求めて 単体プレーヤー編
理想のオーディオ用PCを求めて 単体サーバー編
理想のオーディオ用PCを求めて 単体Roon Server編
マシンスペックや汎用性において間違いなくPCでありながら、音楽再生時にPCの存在を意識せずに済み、なおかつきちんとオーディオ機器として作られた製品。
まさにこの意味での「理想のオーディオ用PC」。
それを目指し、それを望み、それを求める過程で、オーディオ用PCの製作で高名なショップ、オリオスペックの製品を試す機会を得た。
私がオーディオ用PCに求めるのは以下の要素。
・ファンレス
・ストレージはSSD
・アナログリニア電源
この三点は絶対に外せない。
次点としては、PCの使い道にもよるがこんなところか。
・本体側でのUSB出力対策
・十分なマシンスペック(Roon Serverとして問題なく使えるくらい)
・オーディオ機器然とした筐体(主に気分の問題)
というわけで、実機でひとつひとつ見ていく。
フロントパネル。
ディスクドライブ用の穴すらないストイックなデザインは、私のようなネットワークオーディオ原理主義者の心をときめかせてやまない。
リッピングや音源管理は別のPCでやれば済む話である。
それらの機能も備えたオールインワンのミュージックサーバーに一定の需要があることも承知しているが、少なくとも私はオーディオ用PCにそんな機能は求めていない。
シャーシはSTREACOM FC5WS Evo Fanless Chassisを使用。
サイズは450W×325Dx70H(足込み)mm。フロントパネルの厚みは10mm、シャーシだけでも重さは5.2kg。持ってみて「軽い」という印象はまず受けない。
側面のヒートシンクも含めてデザインは実用性ありきとはいえ、質実剛健な佇まいはオーディオラックの中にあっても違和感を生じさせない。やはり、フロントパネルがまっさらであることの意味は大きい。
背面。
ここでようやく「やっぱりPCだ」とわかる。
当然ながらファンレスである。
USB出力対策の要として、SOtM tX-USBhubInを搭載。USBに関して言えば外付けで様々なアクセサリーが存在しているが、より上流に近い部分で対策したほうがいいと判断した。
SOtMのUSB関連パーツはアレとかソレとか、海外製の「中身がまんまPCなミュージックサーバー」にも採用されているあたり、性能は折り紙付きと言える。
さらにSOtM tX-USBhubIn用の外部電源として、FIDELIXのACアダプターも用意。
PCの電源がアレなスイッチング電源だったりすると、今までの努力がすべて水泡に帰すおそれがあるので、当然のことながら別筐体のアナログリニア電源を用意。
初めてTS-119にアナログ電源をあてがった時以来、PC的な機器における電源の重要性は身に染みている。
なお、別にすべてのスイッチング電源が駄目だと言っているのではない。念のため。
スペックは、CPUがIntel Core i5-T6600、メモリが8GB。
OSはwindows 10 Home 64bit。
ストレージはもちろんSSDで、Samsung 850EVOをシステム用に120GB、データ領域として500GB。もちろん積もうと思えばもっと積める。
Roonの「Core」を動かすのにもじゅうぶんなマシンスペックを確保している。
なお、「PCのマシンスペックは低いほうが音が良い」という議論があることは承知している。しかし、「様々なソフトを使える=汎用性が高い」というPCならではの特性を活かそうとすれば、やはりある程度のスペックは必要である、というのが私の姿勢だ。
さらに、「WindowsよりMacのほうが音が良い」という議論があることも承知している。しかし、MacはWindowsに比べてソフト以前にハードを作り込む余地があまりにも小さいため、最初から選択肢に入れていない。
という具合で、このPC(モデル名は特にない)はソフトの前提としてのハード、機能を受け止めるオーディオ機器としての器として、やれるだけのことはやっている。事前に私の理想を伝えた甲斐も少しはあったのだろうか、とにかく理想全部盛りともいえる仕様となっている。
次回はソフト編。
このPC……シャーシのモデル名から便宜的にEVOとでも呼ぼう。
様々なソフトを入れて、EVOを「ミュージックサーバー」・「単体サーバー」・「単体ネットワークオーディオプレーヤー」に仕立て上げる。
【理想のオーディオ用PCを求めて】canarino fils ― デジタル・ファイル再生の原器