KinskyはLINN純正のコントロールアプリである。
それでいて、なぜかDSのコントロールアプリとしてだけではなく、UPnP対応機器であれば汎用的に使用可能。SongBook Liteが消滅してしまった今、世話になっている人も多いのではなかろうか。雑誌等でも、他のネットワークオーディオプレーヤーで使用している光景をよく見かける。
もともとKinskyはPC用のコントロールアプリであり、長らくスマホやタブレット用のアプリは純正で用意されず、ChorusDSやSongBookがその地位を占めていた。
ようやくKinskyのiOS版がリリースされたのち、とあるイベントにやってきたLINNのエンジニアに「なんかお勧めのコントロールアプリない?」と聞いたところ、「もちろんKinsky!」と返ってきたことを思い出す。LINNの誇りと自信を感じたエピソードである。「え、ChorusDSの方がいいじゃん」と思ったのは秘密だ。
【基本情報】
製作:LINN
汎用/専用:汎用(※1)
対応OS:iOS/android/Windows/Mac(※2)
スマホ/タブレット:両対応
縦画面/横画面:両対応
価格(2014年11月時点):無料
※1:あくまでLINN DS用であって、他の機器でも使用可能なのは単なる幸運なおまけと考えたほうがよい
※2:PC用も用意されている
【機能】
再生:○
一時停止:○
停止:×
曲送り(スキップ):○
シーク:○
ランダム:○
リピート:○
音量調整:○
ミュート:○
プレイリストでの再生管理:○
プレイリストの保存:○
タイル表示:×
音源の検索:○
アルバムアートの拡大表示:○
アルバムアートの縦横比維持:○
高解像度対応(Retina):△
音源のスペック表示:○
機器の入力切替:○
電源のオンオフ:○
機器の再検索:△(プレーヤーのみ)
接続のロック:○
その他の機能/特筆事項:
【インターフェース/デザイン】
基本画面。
再生画面・プレイリスト・ブラウズの三要素が揃う優れたインターフェース。
最後に使用した機器との接続は安定している。
大事なLINNのロゴをはじめ、所々ボタンの解像度が低い。そんなんじゃ甘いよ。
【再生画面】
明示的な停止を除き、操作ボタンや音源の情報表示は完備されている。
再生と一時停止は一つのボタンで共用。リピートとシャッフルのボタンは画面右下にある。
音量調整。
表示されるホイールをくるくる回して調整する。「何も知らずにバーをスライドさせたら一気にボリュームが上がってギョエー!」的な事態を防ぐためによく考えられている。MAJIK DS-Iのようなアンプ一体型や、自社のプリとの連動を念頭に置いたものだろう。素晴らしい。ちなみにホイールの回転は気持ちいいくらいなめらかに動く。
あと、このホイールをタップするとミュートになる。
シーク。
これまた表示されるホイールを回して行う。
画面左上、再生中の音源のアルバムアートをタップするとアルバムアートの拡大画面となる。もう一回タップすると元画面に戻る。
アルバムアートの縦横比は維持され、なおかつ画面を最大限活用するレイアウトのため実に素敵。ちなみに画面下の音源情報は常に表示される。
【プレイリスト】
基本的な機能は一通りそろっている。
ブラウズからプレイリストに登録する際の挙動は、アルバム・トラック単位それぞれで、
・Play Now:選択した音源をプレイリストの末尾に登録し、今すぐ再生
・Play Next:選択した音源をプレイリストで“現在再生中の曲”の次に登録
・Play Later:選択した音源をプレイリストの末尾に登録、再生はしない
という6パターンが用意されている。良く出来ている。
挙動の切り替えは画面左下のボタンで可能。
また、それとは別に、アルバム・トラックともに音源を長押しすることで「Play Now」「Play Next」「Play Later」を選べる。
「Edit」
プレイリストの編集。一曲単位での削除と曲順入れ替え。
「Done」で確定。ゴミ箱ボタンで一括削除。
「Save」
現在のプレイリストをアプリ内保存。
ここで保存したプレイリストがどこに行くかは後述。
【ブラウズ】
リスト表示のみ。
PC版だとタイル表示なのにね。
【機器の選択/その他の機能】
プレーヤーの選択。更新ボタンも。
LINN DS以外でも使えるの図。
入力切替から「Radio」を選択するとラジオ画面に切り替わる。
サーバーの選択はそれ自体がボタンとして用意されてるわけではない。
画面左上、ブラウズの「Back」を押していくと、「Library」としてサーバー一覧が現れるという仕組みになっている。これはこれでアリか。
さらに「Back」を押すと、終点の「Home」となる。
ん? 「Local Playlists」?
気にするべきは「Group playlist tracks」か。
コレでどう変わるかは上下の画像参照。
ちなみに「Button controls」をオンにするとつまらなくなるのでやめたほうがいい。
あとは、「Prevent auto-lock」でスリープしない設定に変更可能。
【各項目評価】(3段階・詳細はこの記事を参照)
インターフェース/デザイン:3
再生画面:3
プレイリスト:3
ブラウズ:2
機器の選択/その他の機能:2
安定性:3
動作レスポンス/速度:2
【速度計測】(詳細はこの記事を参照)
普段使い
1回目:97.6秒
2回目:94.8秒
3回目:95.2秒
平均:95.2秒
アルバムスクロール完走
390.7秒 遅すぎ。
【総合評価】(タブレットは5段階)
4 ― よく出来ている
【使用感・コメント】
コントロールアプリに期待される機能を過不足なく備え、スクロールは滑らか、レスポンスも良い。それだけにとどまらず、LINNならではのホスピタリティに溢れた工夫も随所に見られる。
しかし、アルバムアートの取得が異様に遅く、それがボトルネックとなって全体的にスピードダウンしている。
いつまでも続くかどうかはさておき、これだけ優秀なアプリが汎用アプリとして使えることをLINNに感謝すべきである。もしかしたら、LINNがKinskyを汎用アプリとしてある意味広く開放しているのは、「ネットワークオーディオ=全然快適じゃない見かけ倒しのクソ」という認識が定着するのを回避しようと……? 単なる邪推。他意はない。
LINNはどうやらLinn Kazoo推しに移行したようだが、Kinskyも並行して提供されるらしい。素晴らしいアプリなので、今後も改善を続けていってもらいたい。