※この記事のデータ等は基本的に2012年3月26日のものです
●イントロダクション
かつて一世を風靡したSongBookDSの天下がChorusDSの登場によって終焉を迎えた時、SongBookが辿った道はSongBookDSを事実上SongBook Liteの名に変えて大幅に値下げし、新たなフラグシップとしてSongBook’11 UPnPをリリースするというものだった。SongBookがゲシュタルト崩壊。
SongBookDSに1万も出させておいて、またSongBook’11 UPnPを別物として高い金を出せというのか…………憤慨しつつも、ネットワークオーディオの可能性を追求する者としてはやはり買ってしまうのだった。
iPhone/iPod Touch版が2200円、iPad版が4300円。
ちなみにiPhone/iPod Touch版はほぼ無意味な機能の差だけで基本的にSongBook Liteと同様である。買う必要性は感じられない。
SongBook Liteと決定的に違うのは、あくまでiPad版のみ。
●検証環境
無線LANルーター:Buffalo WZR-HP-G450H
NAS:QNAP TS-119 firmware version 3.6.0 Build 0210T
サーバーソフト:TwonkyServer version 6.0.38
レンダラー:MAJIK DS-I
コントローラー:New iPad
SongBook’11 UPnPは特に選曲がらみの機能が無駄に充実しているので、この記事では機器の選択→再生に到るまでの基本的な操作について検証する。
●インターフェース&コントロール
Kinskyは縦でも横でも使えるが、なんとなく横画面の方がしっくりくるので写真は横画面時のもの。
初回起動時に表示されるウィンドウ。
要は「機器を検索するよ! ちょっと待ってね!」
そしてぞろぞろと見つかる機器の一覧。
SC-LX85もちゃんと見つかっている。
上記の工程は本来であればあくまで初回起動時だけのもので、さして気にする必要も無いのだが、SongBook’11 UPnPがあまりにも不安定でプログラム終了&再起動どころかアプリ削除&再インストールを繰り返し、何度も同じ工程を繰り返す羽目になったので腹いせに紹介した。
ようやく次の画面。
SongBook’11 UPnPにおけるホーム画面となる。
中央には機器の一覧がでっかく表示され、この中からサーバーとレンダラーを選択する。現時点で選択されているレンダラーは右下に表示されている。
ホーム画面左下の歯車のアイコンをタップすると設定画面が開く。
ボリュームの上限設定やスリープしない設定、機器の再検索等が行える。
左下の家のアイコンでホーム画面に戻る。
画面右下、レンダラーの名称をタップすると再生操作画面となる。
これはプレイリストの入っていない素の状態。
DSの入力切替や電源オンオフといった操作はこの画面にて。
再生操作画面左下の「Find Music」を押して、もしくはホーム画面から任意のサーバーを選択すると、音源のブラウズ画面に移行する。
上記のずらりと表示されたアルバムアートの画面だが、なんと、SongBook’11 UPnP独自の、アルバム基準のナビゲーションツリーとなっている。
TwonkyServerにおける「ジャンル/アルバム」といったサーバーソフトによるお馴染みのナビゲーションツリーを表示するには、画面右上の「View」を選択し、表示されるウィンドウ内の「Browse」を選択するという手間が必要。
画像を貼れず大変分かりづらい。申し訳ない。
サーバーソフトによるナビゲーションツリー準拠でアルバムまで下ってくると、こんな具合になる。
アプリ準拠の場合と表示形態も異なる。
そんなこんなでどうにか目当てのアルバムにまでたどり着き、アルバムアートをタップすると、アルバム内の曲一覧が表示される。
ちゃっちゃと一曲ずつ、もしくは画面右下の「Play Album」でアルバムごとプレイリストに送り込もう。
こちらがプレイリストに曲が登録された状態の再生操作画面。なんとなく散漫な印象だが、音源のスペックなど必要な情報は揃っている。
「Load」「Save」「Edit」「Clear」でプレイリストの管理編集を行う。
再生操作画面左上のアルバムアートをタップすると拡大表示となる。大きさとしてはChorusDS HDと同じくらい。
●機能
・再生:〇
・一時停止:〇
・停止:×
・曲送り:〇
・サーチ:〇
・ランダム再生:〇
・リピート再生:〇
・プレイリストでの再生管理:〇
・プレイリストの保存:〇
・検索ウィンドウ:〇
・アルバムアート拡大:〇
・音源のスペック表示:〇
・音量調整:〇
・ミュート:×
・機器の入力切替:〇
・電源オンオフ:〇
・機器の再検索:〇
ミュートと停止以外は全部入り。
他にも、便利なんだかよくわからない機能が細々と用意されている。他のアプリには無い機能の数々なのは確かであり、縦横無尽に使いこなせれば超便利、なのかもしれない。
選曲ブラウザにおける独自仕様もそうだが、全体的に「サーバーじゃなくてアプリ側で音源管理も牛耳ってやる!」という意気込みを感じる。意気込みは立派だが……
ホーム画面を見ればわかるが、妙な機能として、アプリが動いているiOS端末をサーバーとして扱い、内部の曲をレンダラーに飛ばすことができる。
アプリが独自に実現しているAirPlayのようなものとでも言うべきか。しかしいまいち用途不明。
●操作感
速度検証:65.3秒 ※速度検証の詳細についてはこの記事を参照
速度的にはぶっちぎりの最下位。
あらゆる操作においてもたつくと同時に、安定性が絶望的に低い。iPad2からNew iPadに変えて多少はマシになるかと思ったが全然そんなこともなかった。
ほとんどの局面で不意に落ちる可能性があり、しかもその頻度も高い。そもそも起動画面で頻繁にフリーズしたり、いつまで経っても“一度検出したはずの”機器に繋がらなかったり(挙句その後フリーズ)と不安定の極み。
コントロールアプリの役割を拡張しようという姿勢は立派だと思うが、その結果としての操作系が大して使えなかったり、逆に選曲に余計な手間がかかったりと冴えない。
パッと見のインターフェースは小奇麗に見えてかっこいいのだが、実際に使ってみると不安定さも合わさってとてもではないが快適とは言えない。
●まとめ
5段階評価――3あれば及第点
・インターフェースの洗練度――2
・情報の一覧性――3
・速度――1
・機能性――4
・安定性――1
これは邪推だが、従来のSongBookDS路線のインターフェースではそこからさらに洗練されたChorusDSに太刀打ちできなくなったため、一発逆転を期してSongBook’11 UPnPが生まれたのではなかろうか。野心的な機能も色々と盛り込んで、全く新しいインターフェースを身にまとって。
しかしその結果は、SongBookDSが持っていた美点を根こそぎ捨て去ったうえ、詰め込みすぎの消化不良になってしまったと言わざるを得ない。
とにかく操作系の洗練と安定性の向上を図ってほしい。それに尽きる。