ネットワークオーディオのメリットとはその大部分が「音源をデジタルファイルとして管理運用することのメリット」と同義であり、それを越えた「ネットワークオーディオの真のメリット」とは「音楽再生における快適さ」であることを前の記事で示した。
ただ、メリットばかり示したのでは胡散臭いので、デメリットも同時に示そうと思う。
ネットワークオーディオのデメリットとは何か。
なお、メリット同様、「ネットワークオーディオのデメリット」とは、その大部分が「音源をデジタルファイルとして管理運用することのデメリット」と等しいことに注意する必要がある。
①「快適な音楽再生」を実現するためには多くのハードルがある
――音源の管理運用において、理解・把握・実践すべきことが多岐に渡る
CDをリッピングしました、ハイレゾ音源をダウンロードしました、ただそれだけでは終わらない。
PCオーディオだろうが、ネットワークオーディオだろうが、デジタルファイルとして音源を扱う以上、少なくとも以下の要素は絶対に理解・把握しておかなければならない。
・タグ
・ライブラリの構築
・アルバムアート
純PCオーディオなら、あとは再生ソフトを選択しその操作に習熟すれば事足りる。
しかし、ネットワークオーディオの場合はまだ終わらない。
・サーバー
・プレーヤー
・コントロール
この三要素は、ネットワークオーディオの全体像を理解するうえで非常に重要である。
どのレベルの快適さで満足するかは人それぞれだと思うが、これらの要素を知っているのと、知らないままなんとなく使っているのでは、最終的に実現できる快適さに大きな差が出る。
②無線LANルーターやスマホ/タブレットといった機器が別途必要
“ネットワーク”オーディオというだけあって、必然的にネットワーク――つまるところ無線LANの環境が必要になる。また、実際にコントロールを担う端末として、スマホやタブレットも必要だ。
この手の機器をある程度使いこなしている人なら何の問題もないだろうが、「PCはまったくの苦手、でもオーディオのためにPCを買いたい」というような人の場合、無線LAN環境の構築だけで相当ハードルが高いと思う。ただ、ここまでくるとオーディオではなく電気屋さんの仕事と思うが。
③なんだかんだ言ってPCが必要
色々なメディアで「ネットワークオーディオは再生時にPCが不要!」と喧伝されている。
この文言は確かに正しいのだが、あくまで再生時には不要、ということであり、音源の管理運用までを含めたトータルのシステムを考えれば、どのみちPCは必要不可欠である。CDのリッピング、ハイレゾ音源のダウンロード、音源の管理運用、ライブラリの構築、こういった作業はすべてPCで行われる。PCがなければ結局何もできない、と言い換えてもいい。
一応、PCレスで上記の作業を完結できる機器もあるにはあるのだが、やっぱりPCを使ったほうが楽なことには変わりない。適材適所。
④ソフト・ハードの組み合わせによっては、「快適さ」が実現できない場合がある
音源の管理を万全にし、自分にとって完璧なライブラリを構築しても、コントロールアプリやサーバーソフトといったソフト面の問題、またはネットワークオーディオプレーヤーの“仕様”といったハード面の問題、そしてそれらの組み合わせ如何では、望むレベルの快適さが得られない場合がある。
DLNAに準拠する多くのネットワークオーディオプレーヤーでは「On-Device Playlistに対応しない」とか。
こればっかりは、残念ながらいちユーザーが頑張ったところでどうこうできるものではない。
事実、現状のネットワークオーディオにはソフト・ハード双方に起因する様々な制約が存在している。
しかし、自分にとって完璧なライブラリを構築しておけば、ソフトやハードのアップグレードにもすぐに追従し、その恩恵を得ることができる。
このことは、PCオーディオがどうのこうの、ネットワークオーディオがどうのこうのと言う前に、その前段にある音源の管理がいかに重要であるかを端的に示している。
よりよい未来を手に入れるために、音源の管理という基礎の基礎をおろそかにしてはならない。
②・③・④はともかく、①に関しては、ユーザーの取り組み次第で克服できる。
そのために、これからの各章で、音源の管理運用、そしてネットワークオーディオのシステムを構築するうえで重要となる要素について、徹底的に追及していく。
きちんと順を追って見ていけば、必ず理解・実践できる。
安心してほしい。
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