復習と予習を兼ねて、以下の二つの記事を読んでほしい。
ネットワークオーディオの三要素――『サーバー』・『プレーヤー』・『コントロール』
・ネットワークオーディオの本質(続く第6章『コントロール』より)
以上を踏まえたうえで、ネットワークオーディオにおけるプレーヤーの役割とは何か。
それは、ひたすら再生に徹することである。
何度も繰り返しているように、ネットワークオーディオの方法論において、コントロールは再生機器から独立している。
ネットワークを用いてコントロールを独立させる、例えばDLNA対応のネットワークオーディオプレーヤーをDMR(Digital Media Renderer)として機能させる時、プレーヤーそのものに音楽再生をコントロールするためのインターフェースは不要となる。ハードウェアとしてのプレーヤーに、ディスプレイだのボタンだのは要らないのである。当然、それらを動かすための余計な回路も要らないし、そこから生じる諸々のノイズといった問題を気にする必要もない。音質の追求をするうえでこれ以上の環境はあるまい。
すなわち「プレーヤー」は、もはやディスプレイだのボタンだの付属リモコンだの、そういったものから完全に解放され、ひたすら本分であるデータ処理と音声出力に専念することができる。
ハードではなくPCの再生ソフトなど、すなわち「ソフトウェアとしてのプレーヤー」をリモートコントロールする場合でも、基本的な考え方は変わらない。
DLNAについての記事で述べたように、実際ハードウェアとしてのネットワークオーディオプレーヤーは、ほとんどの場合コントロールの機能も有している。
「快適さ/便利さ」を強調する文脈において、見やすいディスプレイや使いやすい操作ボタンの搭載が謳われていることも多い。
しかし、ライブラリに含まれるアルバムが数百枚のレベルになってくると、プレーヤーに搭載されているディスプレイと操作ボタンだけでは、自由自在に聴きたい音源を探し出し、快適な再生を楽しむことは不可能に近い。
ディスプレイにアルバムアートが表示されます、なんてしょうもない自慢をされても困る。そんなちっちゃい画像をリスニングポイントから離れた小さいディスプレイに表示したところで、最初の目新しさを越えた先でいったい誰が喜ぶのか……
どうしても「プレーヤー本体である程度の操作性を実現したい」とするなら、こういう力技を使うか、あるいは本体プレーヤーに余計な映像出力でもつけるかしないと無理だ。映像出力をつけるにしても、よほどUIと操作性を練り込まないかぎり、「快適さ」のレベルまで持っていくのは難しい。
やはり、コントロールの部分はコントロールアプリに任せて、プレーヤーはあくまで再生に徹するのがネットワークオーディオの基本である。結局それが一番快適だ。
というわけで繰り返しになるが、ネットワークオーディオにおけるプレーヤーの役割とはひとえに「音源を再生すること」だと言える。
コントロールは独立している。餅は餅屋である。
一方で、快適な音楽再生を実現するために、すなわち独立させたコントロールが十全に機能するために、プレーヤーに求められる機能もある。
それは、再生中のプレイリストを機器本体に記憶/キューすること。
これがないとどういうことになるかというと、コントロールアプリを終了すると、プレイリストの途中であっても曲の再生が止まる(より厳密には、再生中の曲が終了した時点でそれ以降の再生が止まる)。
ということは、どれだけ長いプレイリストをコントロールアプリで作ろうが、スマホ/タブレットがスリープするとその時点で再生が止まってしまう。
死ぬほど面倒くさいでしょう、コレ。
肝心なところで全然快適じゃない。何が悲しくてバッテリーを気にしながらずっとコントロールアプリを起動させ続けなければいけないというのか。
この現象、私の知る限り、「DLNA対応ネットワークオーディオプレーヤー」で普遍的に生じる。色々と話を聞く限り、どうやら、「再生中のプレイリストを機器本体に記憶/キュー」という発想はDLNAの中に存在していないらしい。基本的に国産プレーヤーは全滅と考えていい。設計を共有しているAVアンプも同じだろう。まぁ、未だに「ギャップレス再生ができます!」なんてことを自慢しているレベルじゃ仕方ないか。
海外産のネットワークオーディオプレーヤー、例えばPrimare N30とかCHORD DSX1000なんかは情報が少な過ぎて不明。出来るなら出来ると普通書くと思うし、期待薄か。あるいは、情報を出す側がこの問題について把握すらしていないという可能性もあるかもしれない。
【2015/09/13追記】
再生中のプレイリストを機器本体に記憶/キュー――「オンデバイス・プレイリスト」についての詳細は以下の記事を参照。
「On-Device Playlist」(オンデバイス・プレイリスト)について
【追記おわり】