そろそろバージョン22になる記念。
「ネットワークオーディオのプラットフォーム」という概念を披瀝したところで、あらためてJRiver Media Center(以下JRiver)の価値を再確認したい。
DigiBit ariaやPlayback Designs Syrah Serverなど、JRiverをプラットフォームに採用した製品でどんなことができるのか、という点でも役に立つはずである。
JRiver Media Centerでネットワークオーディオする!(サーバーソフトとして)
JRiver Media Centerと『JRemote』
上の二つの記事でJRiverのサーバーソフトの側面とコントロールの側面については既に触れたが、ここでは他のネットワークオーディオ関連機能として、意外と知られていないDLNAの「プッシュ再生」も取り上げる。上の記事と併せて読んでほしい。
※従来この記事で書いていたナビゲーションツリーのカスタマイズ方法については別記事として独立させた。
JRiver Media Centerのライブラリビュー(ナビゲーションツリー)のカスタマイズ方法
まず、JRiverは音声・画像・映像すべてに対応するマルチメディアソフトである。が、基本的にオーディオの文脈で登場することが多いようだ。
再生ソフトとしてのJRiverは「ライブラリ機能統合型」で、そのカテゴリの中で総合的に最も多機能なソフトと言って差し支えない。Roonが登場した今でさえ、基本的にその立ち位置は変わらない。
タグを十全に活かしたライブラリ機能――『サーバー』、DSDを含むハイレゾに完全対応し音質評価もすこぶる高い再生機能――『プレーヤー』、極めて優れた完成度を持つJRemoteを擁する盤石の操作性――『コントロール』。
コントロールアプリとしてJRemoteの導入が前提になるとはいえ、JRiverはネットワークオーディオの全領域を網羅し、それ自体で非常にレベルの高いネットワークオーディオ環境を構築することが可能である。
そんなJRiverの総合力は単なる再生ソフトとしての域を越えたところにあり、DigiBit ariaなど、JRiverを純然たるオーディオ機器――ミュージックサーバーの基幹ソフトとして採用する例もある。
この点で、JRiverは「専用コントロールアプリを持ってネットワークオーディオの実践が可能な」他の再生ソフト(foobar2000とか)と一線を画し、「プラットフォーム」としての性格を持つに到っている。
また、JRiverならではの機能として、DLNAの「プッシュ再生」に対応していることが挙げられる。
プッシュ再生を行う場合も、JRemoteを使うのが圧倒的に便利である。
音楽再生の操作はは既出の記事を見てもらうとして、ここで注目するのはJRemoteの画面左下の「プレイヤー」という部分。
ここでの「Zones」は音声出力先のこと。
見ての通り、JRemoteを動かしているiPadで鳴らすことも、ネットワークに繋がったLUMIN A1やBubbleUPnPが動いているNexus 9で鳴らすこともできる。
Current zone:プレイヤーとなっているが、この「プレイヤー」とはJRiver自身の再生エンジン(要はPC)を指す。スピーカーのアイコンをタップすれば、接続したUSB DACやら何やらを選択・切り替え可能。
つまるところ、見た目はRoonほど垢抜けているわけではないが、JRiverはDLNAを使ってRoonのZonesと同じことができるのである。本来はRoonに先立つJRiverの機能を先に紹介すべきだったと少々反省している。
ちなみに、JRemoteは音源の情報をタグを含めて徹底的に表示するだけでなく、そこから直接タグの編集も可能。JRiver本体に直結しているからこそできる芸当である。
JRiverの音源管理&ライブラリ構築ソフトとしての性能と使い勝手はMediaMonkeyに劣るが、JRiver & JRemoteで再生している最中にちょっと気になった部分を修正する程度ならば有用と言える。音源管理&ライブラリ構築は本来別枠でやるものだ。
せっかくなので、ついでにJRiverの再生機能の設定画面も載せておく。
バージョン21ではDSD512への出力エンコーディングすら可能になっている。
Asset UPnPに匹敵する強力なナビゲーションツリー/サーバー機能と、トップクラスの音源再生機能と、JRemoteによる優秀な操作性。
JRiverを「ネットワークオーディオのプラットフォーム」として考えた時、トータルで実現する機能と性能のレベルは非常に高く、匹敵しようとするだけでも相当ハードルが高い。
正直な話、JRiverを採用したDigiBitやPlayback Designsは限りなく正しい選択をしたと言える。ここまで紹介してきたJRiverの全機能が純然たるオーディオ機器としてパッケージングされているのである。そりゃもう強い。(もっとも、その手の機器でJRiver本体の各種設定がどれだけ解放されるのか、という疑問もあるにはある)
もっとずっと前に紹介すべきだった内容に終始した感はあるが、Roonをはじめとする様々なソフトが割拠する今でも、JRiver Media Centerのソフトとしての総合力はまったく陳腐化していないことが伝われば幸いである。
その時々の流行とは無関係に、良いものは良い。
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