全体像の把握は大切だ。
でないと、何から手を付けていいのかわからないまま各論に走り、破局を迎える。
『サーバー』・『プレーヤー』・『コントロール』の三要素を用いて、ネットワークオーディオの全体像には既に触れた。
この記事ではすべての根幹たる音源まで包括して、音源の管理運用からシステムの構築、そして実際の音楽再生に到る全体の流れを示す。
ある意味、今まで書いてきた内容の集大成と言える。
続く【音源管理の精髄】&【ネットワークオーディオTips】の道標、あるいは確認や復習の場としてほしい。
内容は以下の通り。
・音源の管理とライブラリの構築
これがないと何も始まらない。
続けて、プレーヤーとサーバーに何を使うかによって、五種類のシステム構築図を用意した。
ネットワークオーディオを実践する際のシステムは以下のいずれかに該当する。それこそ、Roonであってもこれらのシステムを基準として理解できる。
・単体プレーヤーと単体サーバーを使うシステム
・プレーヤーをLANケーブルで直結可能なサーバーを使うシステム
・PCをサーバーとして使うシステム
・ミュージックサーバーを使うシステム
・PCと再生ソフトを組み合わせるシステム
その後、実際に音楽再生を行うという流れである。
まずは音源。以降の画像はクリックで拡大する。
完璧なライブラリさえ構築してしまえば、あとはどうにでもなる。
続いてシステムの構築図。
と、その前に、あらためてネットワークオーディオの三要素と、その接続関係。
まずはこの三角形と、それぞれの役割を覚えてほしい。
これは別途音源管理に用いるPCも含めて機器の数が一番多いシステムでありながら、実は一番シンプルで、一番理解しやすいシステムでもある。
UPnP/DLNAベースのサーバー・プレーヤーは基本的にこのシステムに該当する。
なお、プレーヤーの最終的な音声出力がデジタル(USBやら光やら同軸やら)なら、製品ジャンルの呼称はオーディオの伝統に則して「ネットワークオーディオトランスポート」となる。ただし、機能としてはあくまでも「プレーヤー」であるので、混同してはいけない。
特殊なケース。製品としてはDELAやfidataが該当する。
基本的には単体プレーヤーと単体サーバーを使う場合と同じ。
単体サーバーを導入せずともネットワークオーディオは実践可能、の仕組み。
これは単にサーバーとして使っている機器がPCだったというだけで、本質的には「単体プレーヤーと単体サーバーを使う場合」と同じ。
※なおこの時、音源ファイルの保存場所は必ずしもPC本体とは限らず、ストレージはUSBドライブでもNASでもいい。いずれにせよ、サーバーソフトに共有させれば、保存場所に関わらず音源としての振る舞いは同じ。
海外で製品ジャンルの呼称として定着した感のある「ミュージックサーバー」の仕組み。上図のとおり、ミュージックサーバーとは実質的に「サーバー」と「プレーヤー」の機能を両方備える機器を指す。つまり「サーバー/ストレージ内蔵ネットワークオーディオプレーヤー」だと考えればいい。
なお、サーバー/ライブラリ機能は持つがストレージを搭載しない製品もあり、その場合は音源ファイルの保存先として別途ストレージが必要となる。要はPCと同じ。
「サーバー」と「プレーヤー」の所在を考えれば、Raspberry Pi等を使ったMPDのシステムはここに該当する。
LinuxベースのOSを搭載・活用するなどして、「サーバー」以前の部分、すなわちCDのリッピングから音源の管理まで一手に担うことができる製品も存在する。
PCと再生ソフトの組み合わせでもネットワークオーディオは実践可能、の仕組み。
この時、PCは実質的に「サーバー」と「プレーヤー」の機能を備えるため、「ミュージックサーバー」として機能している。
コントロールは基本的に再生ソフトと一対一の専用アプリで行う。(例:JRiverとJRemote)
※なおこの時、音源ファイルの保存場所は必ずしもPC本体とは限らず、USB接続のHDDやNASでもいい。いずれにせよ、再生ソフトにインポートあるいはシンクすれば、保存場所に関わらず音源としての振る舞いは同じ。
使う機器やソフトが変わっても、全体の流れは変わらない。
1.音源を管理し、ライブラリを構築する
2.無線LANルーターに各機器を接続する(設置環境に応じてハブを使う)
3.サーバーを通じて音源を配信可能な状態にする
もしくは、PCの再生ソフトに音源をインポートする
ここまでが音源の管理運用とシステムの構築に相当する。
4.コントロールアプリで使用するプレーヤーとサーバーをそれぞれ選択する
ストレージ内蔵プレーヤーやPCの再生ソフトを使う場合も実質的にやることは同じ
5.アプリでブラウズ・選曲を行い、再生する
6.音が出る
これが実際に音楽を再生する流れとなる。
ネットワークオーディオならではの「快適な音楽再生」は後半部分、コントロールによって実現する。プレーヤーから物理的に独立した端末で全音源の閲覧・選曲と再生操作が可能であり、視聴位置から一歩も動くことなく音楽鑑賞に耽溺できる。
ネットワークオーディオプレーヤー本体に付属するリモコンを使ったり、PCの画面に向かい合ってマウスをカチカチしたりといったものは、私の中ではネットワークオーディオに該当しないため、ここで触れることはしない。
上の図で示した五種類のシステムで不動なのは、すべての根幹たる音源、システムの中心となる無線LANルーター、そしてネットワークオーディオの本質たるコントロール。
また、ネットワークオーディオの三要素から成る三角形の構造はどのシステムにおいても成立する、ということにも注目してほしい。
ネットワークオーディオと一言で言っても、サーバーとプレーヤーに何を使うかは色々な選択肢があり、実は意外と柔軟なシステム構築が可能である。
念のため言っておくと、上図におけるプレーヤーからの「音声出力」は、アナログかデジタル(USB含む)かを問わない。PCをプレーヤーとして使うシステムではUSBで出力される場合がほとんどだと思われるが。
おまけとして、セミナーの場で聞かれることが多い無線LANルーターとの接続に関して、簡単な図を作ってみた。
上の図とあわせて見るとわかりやすいかもしれない。
なお、無線LANルーターは必ずしもモデム――インターネットに繋がっている必要はなく、クローズドなネットワーク環境でも問題ない。
1章から3章では音源の管理とライブラリの構築について、4章ではネットワークオーディオの諸相について書いてきた。
ここからが、『サーバー』・『プレーヤー』・『コントロール』の各要素について、そして実践編となる。
【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】