オーディオ/ホームシアターで楽しむコンテンツは決して「音楽」と「映画」だけではない。「ゲーム」もまた、素晴らしいコンテンツである。
学生時代にオーディオ/ホームシアター趣味に目覚めて以来、ずっとこう思ってきた。
そして実際に、私はホームシアターでゲームを遊ぶことで、血沸き肉踊る体験をずっと味わってきた。
PS3/XBOX360世代になると、ゲーム機は当たり前のようにHDMI出力を搭載して最新のAV機器と繋がるようになり、映像と音響はそれこそ「映画並み」と言って差し支えないレベルに進化を遂げた。さらに、その進化は今なお続いている。
特に音響面では、ある程度の規模で作られたゲームであれば当たり前のように音声がサラウンドに対応しており、「ゲームの音」は時として映画をも凌駕する臨場感と没入感をもたらす。
ゲームとオーディオ/ホームシアターの両方を心から愛する者として、「ホームシアターでゲームを遊ぶ」というアイデア――「ゲーム×シアター」の楽しさを伝えたい。
これがGame Sounds Funという「場」を立ち上げた最大の理由である。
残念なことに、過去から現在に至るまで、オーディオ業界側からのゲームに対するアプローチが成功しているとはとても言えない。
オーディオ業界がゲームを扱うすべての企画がそうだとは決して言わないが、高画質・高音質という意識ばかりが先行して到底現実感を持ち得ない規模のシステムが使われていたり、そもそもゲームに対する興味も愛情も感じられなかったりするケースを実際に見てきた。アプローチの数自体も絶対的に足りていない。
オーディオ業界の末端に座る者として、オーディオ/ホームシアターの魅力を多くの人に伝えたいと願うひとりのオーディオファンとして、このような状況は素直に反省しなければならないと思っている。
一方、ゲーム業界の側からオーディオ/ホームシアターにアプローチするような企画も時折見られる。ただ、使われている機材やシステム、あるいは魅せ方の関係で、オーディオ的なレベルで満足し得る体験を紹介するには到っていない、という印象を受ける。日々「いい音」がもたらす驚異と興奮を実感している身としては、「オーディオやホームシアターはもっともっと凄まじい体験をもたらすものなんだぞ」と声を大にしたくなる。
テレビの大型化・高画質化・低価格化の恩恵も相まって、「ゲームのグラフィックの進化」は多くの人が実感するようになった。それに対し「ゲームの音の進化」は、おそらく再生環境を揃えるハードルの高さゆえに、一般に語られる機会すらほとんどないというのが現実ではないだろうか。
「でかい画面」はそれだけでゲームプレイを面白くする。最新ゲームもレトロゲームも関係ない。高品位な映像だのサラウンド音響だの、そんなことを考える必要すらない。しかし、「音」を置き去りにしてしまっては、「ゲームの音をもっと楽しむ」という意識が欠けてしまっては、真に「ホームシアターでゲームを遊ぶ」体験とは言い難い。
以上の問題を乗り越え、「ゲーム×シアター」の楽しみを真に伝えるためには、ゲームとオーディオの「両方に真剣」であることが不可欠だ。同時に、ソフトとハードの両面で「マニアックになりすぎない」バランス感覚も必要になるだろう。
私がこの条件を完璧に満たしているかどうかの自信はない。
それでも私はゲームが大好きだし、オーディオもホームシアターも大好きだ。両方をもっと楽しみたいし、どちらの業界にも元気になってもらいたい。さらに言えば、ゲームとホームシアターの橋渡しをしたい。
そして、そのために出来ることは間違いなくあると思っている。何もしなければ何も変わらない。この十数年間、待てど暮らせど「ゲーム×シアター」を取り巻く状況はまるで変わらなかったのだから。
ホームシアターでゲームを遊べば、大好きなゲームがもっと面白くなる。
ホームシアターとは映画でも音楽でもゲームでもなんでも受け入れる、あらゆるコンテンツの楽しみを増大させる魔法の空間である。
たとえホームシアターを作った目的が「ゲームのため」だったとしても、映画も見てほしいし、音楽も聴いてほしい。愛してやまないゲームのサントラを聴くのなんて最高だ。
そんなこんなで、Game Sounds Funはすべてのゲームファンに「ゲーム×シアター」の楽しさを伝えるべく、各種情報発信やノウハウの提供を行うサイトとして発足した。
※Audio Renaissanceの立ち上げに伴い、Game Sounds FunはAudio Renaissanceのサブブランド&一コーナーとなっています
Game Sounds Funならではのコンテンツとしては、「ゲームの音」を真剣に評価するレビューを充実させていく予定である。
ゲームを扱うサイトは既に数えきれないほど存在する。しかし、オーディオ/ホームシアターという再生環境を含めて「ゲームの音」に焦点を当てたサイトも、そのようなコンテンツも、私の知る限り存在しない。Game Sounds Funという名称には、まさにその先駆けとなろうという想いを込めている。
「ゲームを楽しむホームシアター」――「ゲーム×シアター」のススメ。
Game Sounds Funの活動が、ゲームを愛するすべての人々にさらなる楽しみを伝えると同時に、ゲーム業界とオーディオ業界の橋渡しとなれば幸いだ。
ホームシアターでゲームをしよう!