アイ・オー、エントリー向けオーディオNAS「Soundgenic」。1TB SSD搭載の専門店向けモデルも - Phile-web
2TB HDD搭載のエントリー向けネットワークオーディオサーバー「Soundgenic(HDL-RA2HF)」、1TB SSD搭載のオーディオ専門店向けモデル「RAHS-S1」を2月中旬より発売する。価格はオープンだが、HDL-RA2HFは35,000円前後、RAHS-S1は83,000円前後での実売が想定される。
このブログを立ち上げる前、立ち上げてからも相当な期間、あるいは今でも? ネットワークオーディオプレーヤーという製品ジャンルは苦境にあった。音質以前の問題として、「まともな音楽再生機器」として使い得る製品があまりにも限られていたからだ。
「ネットワークオーディオで快適な音楽再生を」という夢は、音質のためならばいかなる苦行をも当然のものとして受け入れる筋金入りのオーディオマニアよりも、利便性や快適性も同時に重視するエントリーユーザーにとってこそ大きな価値を持つものだった。
しかし現実には、「エントリーとはかけ離れた価格帯にしかまともな音楽再生機器として使い得るネットワークオーディオプレーヤーが存在しない」という状況が長く続いた。ネットワークオーディオが喧伝した「便利」「快適」といった売り文句に期待し、その恩恵を最も受けて然るべき層が、実際にはそれらのメリットをまるで体験できなかったのである。結果として、ネットワークオーディオというジャンルは多くのユーザーに大きな失望を残し、PCとUSB DACの組み合わせに比べてその裾野はまるで広がることはなかった。
私自身が「ネットワークオーディオとは音楽再生におけるコントロールの方法論である」という思考に辿り着き、「ネットワークオーディオプレーヤーを使うことがネットワークオーディオなのではない」と考えるに到ったところで、現実の市場、ネットワークオーディオプレーヤーという製品ジャンルは悲しい歴史を辿った。
もはや「出来ることは同じ」と言っても、実際にPCとUSB DACの組み合わせにネットワークオーディオの手法を適用しているユーザーがはたしてどれだけいるのかは、現在においても定かではない。
ネットワークオーディオプレーヤーにとってそんなパッとしない状況が長く続いたことは事実だが、DELAが「プレーヤー」としての機能を獲得したり、SOtM sMS-200が登場したり、各メーカーの製品が世代を経るに連れて順当な進化を遂げたりして、徐々に「安価で」「まともな音楽再生機器たり得る」製品も増えてきた。この記事で注目するのはあくまでも安価な製品なのでアレだが、OpenHomeの浸透やRoon Readyの登場が後押しになったのか、最近では気合いの入った高級機も登場している。
ネットワークオーディオプレーヤーにおける世代間断絶と、本当に求められるもの
価格帯が違えど、製品の世代が変われど、ひとえに「音楽を快適に聴けること」だけは保証されなくてはならない。
(中略)
音質のために、どれだけオーディオ機器に投資できるかは人それぞれ。
しかし、音楽を聴くという行為は万人にとって平等だ。
ネットワークオーディオプレーヤーは、その部分を裏切ってはいけない。CDプレーヤーのように、ユーザーが機能面において何も気にすることなく、デザインと音質とブランドと懐具合だけでネットワークオーディオプレーヤーを選べる日は、いったいいつになったら訪れるのだろうか。
Soundgenicの登場は、まさにこの流れの中で捉えることができる。
HDDモデルのHDL-RA2HFは店頭予想価格35,000円前後だそうだ。Soundgenicはオーディオ機器的にはトランスポートであり、別途USB DACが必要になるとはいえ、この価格はフルサイズのCDプレーヤーのエントリー機と同等である。ついにここまできた。これはネットワークオーディオ、ひいてはデジタル・ファイル再生の歴史においてとてつもなく画期的なことだ。
本機は「サーバー」と「プレーヤー」両方の機能を備えたミュージックサーバーだが、この価格帯でOpenHomeに対応し、まともな音楽再生機器であることを担保したことこそが重要だ。一昔前とは異なり、少なくとも機能面において、決して「安かろう悪かろう」ではない。それどころか……!
USB DACでもデジタル入力搭載のCDプレーヤーでも、USB入力を持ったDACさえあれば、Soundgenicとの組み合わせでネットワークオーディオへの道が開ける。
10年ほど前、LINN KLIMAX DSの情報に接して「ネットワークオーディオすげえ! でも高すぎ!」と慄いた学生時代の私に教えてやりたい。
いい時代になったぞ。