【ネットワークオーディオTips】コントロールアプリの黄昏

 おおよそ2年半前、コントロールアプリの検証を行った。

 ・『eLyric』(iPad版)
 ・『eLyric』(iPhone/iPod Touch版)
 ・『ChorusDS HD』(iPad版)
 ・『SongBook Lite』(iPad版)
 ・『SongBook Lite』 Version 4.1.0
 ・『PlugPlayer』(iPad版)
 ・『DiXiM DMC』(iPad版)
 ・『Kinsky』(iPad版)
 ・『SongBook’11 UPnP』(iPad版)
 ・『Marantz Remote App』
 ・『Denon Remote App』(iPad版)
 ・『LUMIN App』
 ・『LUMIN App』 Version 2.0
 ・『LUMIN App』詳細な挙動とささやかな改善案
 ・『LUMIN App』 Version 3.0
 ・『Bubble DS/UPnP』 アルバムアート表示について

 そして今、あらためて検証をしようとしているわけだが、いささか愕然としている。
 到るところで崩落が起きている。

・eLyric
 消滅。
 PS Audio純正アプリとしては「tagNplay」という実質的にeLyricから名前を変えただけのアプリがあったようだが、そちらも消滅している。

・ChorusDS / ChorusDS HD
 最終更新日は2011/04/20であり、3年半以上まったく更新されていない。
 検証にあたって約半年ぶりにMAJIK DS-Iに電源を入れて使ってみると、フリーズと強制終了の嵐であり、まともに使えなくなってしまっていた。プレイリストをクリアしようとすると100%フリーズするという有様である。iOS 8となり、とうとう限界を迎えたようだ。
 SongBook DSが実現した「夢」をさらに洗練させた押しも押されぬ神アプリも、ついにその役目を終えてしまったのか。

・SongBook Lite / SongBook’11 UPnP
 消滅。
 さらば、SongBook。

・DiXiM DMC
 消滅。
 ネットワークオーディオ黎明期、アルバムのタイル表示の素敵さを教えてくれた、思い出深いアプリだった。

 eLyricとDiXiM DMCはまぁいいとして、SongBookが消え、さらにChorusDSまでも……

 無論、これら以外にもメーカー純正含めて色々なコントロールアプリがあるのは承知している。
 しかし正直なところ、LINN DSにはChorusDSがあったし(Kinskyは次善)、それ以外のネットワークオーディオプレーヤーもSongBook Liteがありさえすればよかった。media:connectもMedia Link Playerも、Audionet Music Managerもmconnect playerも、SongBook Liteとは勝負にならず、検証記事を作成する気は起きなかった。BubbleUPnPはサボっていた。申し訳ない。ところが今となっては、ChorusDSは死に体となり、SongBook Liteは消滅した。

 これからネットワークオーディオを始めるユーザーはいったいどうすればいい?
 幸いなことに、LINN DSユーザーはLUMIN Appが使えるし、KinskyはDS以外のネットワークオーディオプレーヤーでも機能する。しかし、結局それは「メーカー純正アプリがなぜか他メーカーの製品でも使える」というだけなのだ。特定のメーカー製品に依存しない、それこそPlugPlayerのようなアプリでなければ、真に「汎用アプリ」と呼ぶことはできないし、ユーザーの選択肢が増えるとは言い難い。前にも書いたと思うが、もしLINNが方針を変えて、KinskyをDS以外のプレーヤーで使えなくしてしまったら、それで大多数のネットワークオーディオプレーヤーはおしまいだ。そして、誰もそれを咎められない。メーカー自身で作っている純正アプリなのだから、どんな仕様にしようがそのメーカーの勝手である。

 最近のネットワークオーディオ界隈を眺めていると、SongBook Liteの消滅もそうだが、「DLNA/UPnPの仕組みを利用した汎用アプリ」が廃れ、「メーカー純正/専用アプリ」の比重が高まりつつあるようだ。海外の“ついでにネットワークオーディオプレーヤーにもなる”超高級DACも、自前でアプリを用意している場合が多い。dcsとか。もちろん、それ自体は問題ではない。問題なのは、実質的にメーカー純正アプリしか選択肢がないくせして、その純正アプリの出来が絶望的に終わっているという状況だ。
 ま、率直に言えば、多くのメーカー純正アプリ(特に国産)の出来がガバガバなのは昔からなので今さらどうでもいいことなのだが、大いなる救済となっていたSongBook Liteは消えてしまった。消滅以前に入手していたならともかく、これからネットワークオーディオを始めようというユーザーは残念なことになってしまった。

 汎用アプリがことごとく廃れ、メーカー純正/専用アプリに収斂されていくというのなら、それも別によかろう。
 そうなれば、ますますメーカーは「ネットワークオーディオで実現する快適な音楽再生」という言葉に対して巨大な責任を負うことになる。その言葉が輝ける真実となるか、それとも悪質な詐欺となるかは、メーカーの姿勢次第。

 もはや逃げ場はないのだ。 
 

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