サーバーソフトの複数同時運用。
今までに何度も言及してきたことだが、具体的にどんなメリットがあるのか。
応用編の他の記事とも関連するので、あわせて読んでいただきたい。
とりあえず、これが可能なのはPCやQNAP製品といった、「サーバーソフトが複数走るサーバー機器」に限られる。
物理的にサーバー機器を買い足せば結局同じことが可能なのだが、サーバーソフトの複数同時運用は機器を買い足す必要がないという点で優れている。
そして、幸いにしてサーバーソフトによって音質差は生じないため、純粋に使い勝手の向上のための活用が可能となる。
活用方法の一例を紹介する。
これは手持ちの全音源をサーバーソフトで読み込むことで得られる、見飽きた感のあるジャンル一覧。
こんな具合に全ジャンルの音源を扱うサーバーソフトを「サーバーA」とする。
同じ機器内で、別のサーバーソフトを走らせる。これを「サーバーB」とする。
サーバーAに読み込ませる音源とは異なるルールに基づくライブラリ構築を行ったジャンル――例えばクラシックの音源を別途用意しておき、そのフォルダをサーバーBで読み込む。
この時、サーバーAにはクラシックの音源を読み込ませないこと。つまり、サーバーAが扱うのは「クラシック以外の全ジャンルの音源」となる。
さすがに異なるルールに基づくライブラリが一つのサーバーに同居するのはよくない。
この時、サーバーBが提供するライブラリは「最初からクラシックしか入っていない」状態となる。そのため、本来必要となる「ジャンル」のタグを別の情報の受け皿として使えるようになる。
もっと平たく言えば、「完全なクラシック専用サーバー」が出来上がるのである。
あとは自分がクラシックの選曲にどのような作法を望むかに応じて、空いた「ジャンル」のスペースに情報を入力すればいい。
レコードレーベルを入れるというのも面白いだろう。
生年とともに作曲家の名前を入れれば、工夫次第で「かつて見た音楽室の風景」を再現することだってできる。
クラシックに限らず、アイデア次第で活用方法は大きく広がる。
サーバーC、サーバーDと運用するサーバーを増やしていけば可能性はさらに高まる。少なくともTwonky ServerとAsset UPnPとMinimServerとKazoo Serverの四種類が使えるし、PCならば再生ソフトのサーバー化によってさらに選択肢が増える。
「クラシック専用サーバー」・「プログレ専用サーバー」・「ゲーム音楽専用サーバー」・「同人音楽専用サーバー」といったように、ジャンルによってサーバーを一つの機器の中で使い分けるということも可能となる。
あるいは、「真面目な音源フォルダ」と「趣味丸出し音源フォルダ」を二つ用意しておき、普段はその両方を読み込んだサーバーを使い、来客時には真面目な音源だけを読み込んだ別のサーバーを使う……なんてこともできる。これについてはその都度読み込むフォルダを変えるというのも手だが。
なお、サーバーソフトを複数同時運用するといったところで、機器そのものは一つだけなのでシステムが煩雑になる心配もない。
アプリにもよるが、使用するサーバーはほんの数秒で切り替えられる。
すべての音源を一つのルールと一つのサーバーでまかなうよりも、意図に応じて複数のサーバーに分散したほうがきめ細かい運用が可能になることは想像に難くない。
ライブラリが分断する寸前にまで踏み込んだ運用なのは確かだが、ユーザーの明確な意図と設計に基づいてコントロールできるのならばメリットは少なくないはずだ。
特に、クラシック音源の管理運用を突き詰めたいと考えているユーザーには是非試してもらいたい。