ネットワークオーディオプレーヤーにおける世代間断絶と、本当に求められるもの

 ネットワークオーディオプレーヤーとは、物凄く端的に言ってしまえばあらゆる要素をオーディオに特化させたPCのようなものだ。
 そしてそれゆえに、ハードとソフト両面の進化によって、出来ること・出来ないことが製品の世代によって変わってしまう可能性がある。
 この「ネットワークオーディオプレーヤーにおける世代間断絶」という問題については今までも各記事の中で断片的に触れてきたが、最近になって色々思うところもあったので、そこから導かれる「ネットワークオーディオプレーヤーに本当に求められるもの」とあわせてまとめておきたい。
 なお、この記事で言う「ネットワークオーディオプレーヤー」とは、「あくまでオーディオ機器として売られている単体プレーヤー」とほぼ同義である。

 さて、「ネットワークオーディオプレーヤーにおける世代間断絶」と言った時、それは大きく以下の二つに分けられる。

①対応する音源フォーマット(コーデック/スペック)の違い

②ユーザビリティの違い

 ①に関して。
 これはネットワークオーディオプレーヤーに限った話ではなく、USB DACも含め、デジタル・ファイル音源を扱うあらゆる機器が共通して抱える問題である。
 ネットワークオーディオプレーヤーを例にすると……

 第一世代のプレーヤーはWAV・FLACの96kHz/24bitまで対応する。
 第二世代では192kHz/24bitまで対応する。ついでにALACにも対応するようになる。
 第三世代ではDSD64に対応するようになる。ついでにAIFFにも対応するようになる。
 第四世代ではPCMの384kHz/32bitに加えてDSD256にも対応するようになる。
 第五世代ではPCMの768kHz/32bitに加えてDSD512にも対応するようになる。
 第六世代では突如新登場した究極の音声フォーマット(※)に対応するようになる。
 (※ほんとにMQAとか出てきちゃったよ……)
 ……
 第∞世代ではPCMの∞Hz/∞bitに加えてDSD∞にも対応し(以下略

 こればっかりは仕方があるまい。
 実体を伴うかどうかはさておき、「CDよりハイスペックなハイレゾ音源は音がいい」という風潮(あくまで風潮)が定着してしまった以上、この手のスペック競争はもはや終わらないだろう。実際の音楽製作現場がどこまでスペック競争……もとい狂騒に付き合ってくれるかは定かではないが。
 ファームの更新等により旧世代のモデルの対応も期待したいところだが、機器を構成しているハードの制約でそもそも無理、ということだって往々にしてある。このDACチップはDSD64までしか対応してません、なんて事態も現に起きている。ただし、そのDACチップが作られたタイミングでは現在のような度を越したハイレゾ音源など想定されていなかったのだから、スペック的な限界を責めることはできない。
 対応の幅は広いに越したことはないが、せめて192kHz/24bitくらいに対応さえしていれば、あまり目くじらを立てることでもないように思う。
 終わりのないスペック競争に音質的な可能性を大いに感じ、より高いスペックの音源を再生できることで幸せになれるなら、素直に買い替えればいい。

 もっとも、たとえ今日対応する音源のスペックを誇ったところで、誇れるものがそれしかないとしたら、瞬く間に陳腐化するのがオチな気もする。
 どうせ近い将来にはさらなるハイスペック対応機が現れるのだから。

 だいたい、ネットワークオーディオとはハイレゾ音源を聴くためにあるのではない!

 ②に関して。
 問題なのはこっちだ。
 ネットワークオーディオの本質にかかわる部分だからだ。

 私はプレーヤーの価格帯が違っても、製品の世代が変わっても、せめて音楽再生におけるユーザビリティは共通のものが提供されてしかるべきだと考えている。

 第一世代はギャップレス再生に対応しません。第二世代から対応します。第一世代は放置します。
 第二世代は再生中の音源のシーク(要はシークバーによる任意の時点への早送りと早戻し)に対応しません。第三世代から対応します。第一世代と第二世代は放置します。
 第三世代はOn-Device Playlistに対応しません。第四世代から対応します。第一世代と第二世代と第三世代は放置します。

 それじゃ駄目だろ。

 ライブやクラシックなどの本来繋がるべき曲で曲間に途切れが生じたり、早送りも早戻しもできなかったり、端末がスリープになった途端次の曲が再生されなくなったり。
 ここで例に挙げた第三世代までのネットワークオーディオプレーヤーは、CDプレーヤーやPCの再生ソフトで当たり前に出来ていることすら出来ない。これでは快適も何もあったものではなく、そもそも音楽を聴く装置として論外と言わざるを得ない。
 そして残念ながら、このように音楽再生機器として甚だしく不適当な代物こそ、「便利」「快適」などと謳う大多数のネットワークオーディオプレーヤーの正体である
 いい加減に「DLNA準拠」を言い訳にするのはやめてほしいところだ。

 こうして、多くのプレーヤーが掲げる「ネットワークオーディオで快適な音楽再生を」という夢は、絵に描いた餅に成り下がる。
 ディスプレイがでかくなった? そんなことは死ぬほどどうでもいい

 ネットワークオーディオにおけるユーザビリティの大半はコントロールアプリが担う。これは間違いない。
 しかし、それ以前の問題として、プレーヤー側に求められる機能・仕様というものも間違いなく存在している。
 ネットワークオーディオプレーヤーにおける真の世代間断絶とはそこに生じる。

 新製品の登場とともに、純正コントロールアプリも刷新される。
 それはいい。
 しかし、新しいコントロールアプリは、旧製品には対応しない。
 なぜなら、旧製品はそもそもシークが出来ないから。

 だからそれじゃ駄目だろ。

 新製品なら384kHz/32bitに対応するとか、旧製品はDSD256に対応しないとか、そりゃ対応するに越したことはないだろうが、そんなものは大した問題ではない。

 ネットワークオーディオプレーヤーにおける真の世代間断絶とはユーザビリティの断絶である。

 では、そこから導き出される、ネットワークオーディオプレーヤーに本当に求められるものとは何か。

 「快適な音楽再生を実現・保証するプラットフォーム」である。

 ギャップレス再生。
 オンデバイス・プレイリスト / On-Device Playlist
 高い安定性や優れたレスポンスは言うまでもなく必須である。

 価格帯が違えど、製品の世代が変われど、ひとえに「音楽を快適に聴けること」だけは保証されなくてはならない。
 快適な音楽再生が実現されないなら、ネットワークオーディオである必要などない。

 OpenHomeRoonReadyといったものは、まさにこの意味において重要になる。

 音質のために、どれだけオーディオ機器に投資できるかは人それぞれ。
 しかし、音楽を聴くという行為は万人にとって平等だ。
 ネットワークオーディオプレーヤーは、その部分を裏切ってはいけない。

 CDプレーヤーのように、ユーザーが機能面において何も気にすることなく、デザインと音質とブランドと懐具合だけでネットワークオーディオプレーヤーを選べる日は、いったいいつになったら訪れるのだろうか。

「On-Device Playlist」(オンデバイス・プレイリスト)について

ネットワークオーディオの「プラットフォーム」
 
 

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