・再生環境(詳細)
canarino Fils × JRiver Media Center
JCAT NETカードFEMTO
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SFORZATO DSP-Dorado(NOSモード・Diretta/LAN DACモード)
サイバーシャフト 超高精度OCXO 10MHzクロック Ultimate OP12 / OP18
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SOULNOTE A-2
Dynaudio Sapphire
・聴いた曲
John Butler / Ocean(2012)
Yes / Fragile(Steven Wilson Remix)
ほか色々
・音質所感
SFORZATO DSP-Doradoを導入に先立って試聴した際、同社のPMC-03も同時に試したことがある。
霧が……晴れる…………!!
これは耳に毒だ。
豊富な情報量そのままに音像がビシッと引き締まって細部の見通しが著しく向上し、あわせて立体感も強まる。
良くも悪くも付属クロックで聴いた時の溌剌とした印象や音が押し寄せてくる感覚は薄れ、総じてクールなイメージとなる。間違いなくPMC-03を使った時の方がオーディオ的にはレベルの高い音なのだが、少なくとも私には素の状態のDSP-Doradoの音とは方向性がだいぶ違うと感じられ、絶対にこっちがいい! とは必ずしも言えない。
音の方向性的に、素の音とPMC-03を使った時の音のちょうど中間くらいが理想なんだがなあ。
私はクロックというものに関してたいした経験があるわけではないので、この時の記憶を手掛かりとしつつ、サイバーシャフトのクロックを聴いた。
まず、少なくとも24時間の通電を経てからOP12を聴く。
やはりクロックとはこういうものなのか、一音一音が引き締まり、音が重なり合う部分が明瞭になり、空間の見通しが開ける。すっきり、かっちり、高い解像感を意識させる方向に変化する。大編成の曲をドオオンと聴けば、みっちりした音と空間を解きほぐす効果の大きさに唸る。
ただ、その音の変化は、かつてのPMC-03ほどプラスの印象をもたらさなかった。
「クールなイメージ」を通り越して、「線が細い」という印象が勝る。中低音が萎む、そして「元気が削がれる」という印象まで到ってしまう。私がオーディオでいちばん聴きたいのは「歌」であり、これはなかなかにつらい。
音の線が細くなるのはおそらく滲み歪みが軽減した結果で、それ自体は間違いなく良いことなのだろうが、最終的に音の方向性が気に入るかどうかはまた別問題というのが難しいところだ。
OP12に関しては、少々比較する相手が悪かったと思わなくもない。
続いて、やはり少なくとも24時間の通電を経てからOP18を聴く。
位相雑音特性(Offset 1Hz)が-112dBc/Hz以下のOP12の価格は156,600円、-118dBc/Hz以下のOP18の価格は372,600円。位相雑音特性の差がグレード差であり、両者には2倍以上の価格差がある。
はたしてこの差は音に出るのか……? と思っていたら、出た。想像以上に。
OP18の音は、かつてPMC-03を聴いた時に理想だと感じた「DSP-Doradoの素の音とPMC-03を使った時の音のちょうど中間くらい」を、かなりドンピシャのレベルで撃ち抜いた。
中低音が萎まない。もちろん元気も削がれない。それでいてOP12でも感じられたすっきりかっちり高解像感の印象はさらに研ぎ澄まされ、DSP-Dorado本来の濃厚さや瑞々しさを保ちつつ再生音に一層の磨きがかかる。以前に雑誌の取材で聴いたPMC-Circinusの完全な別次元の音とはまた異なるが、OP18はDSP-Dorado本来の良さを一切損なうことなく、順当に種々の向上をもたらした。
なぜ位相雑音特性が改善されただけでこのような変化が起きるのか、結局のところ想像を働かせるよりしかないが、OP12とOP18の差は確かにあった。とりあえずSFORZATOのプレーヤーを使っている身としては、OP18の音を聴いてしまうと、OP12を選ぶ理由がなくなってしまうほどに。
SFORZATOのプレーヤーとクロックは当然ながら純正組み合わせという圧倒的な強みがあり、他社製品が割って入ったところでその牙城を崩すのが容易でないことは想像に難くない。
その意味で、まさに割って入って己の価値を証明したサイバーシャフトのクロックは、お見事と言うほかあるまい。
音質はもちろん、出力インピーダンスを切り換えできる仕様を含め、様々な機器と組み合わせられる汎用性もまた、サイバーシャフトのクロックの大きな強みである。
SFORZATOがそうであるように、クロック入力を備える機器を出しているメーカーは同時に単体クロックをラインナップしていることも多いが、それ以外にもサイバーシャフトという強力な選択肢が存在するということを知れてよかった。