NASの中ではQNAPのTS-119がいいとか、TS-119にアナログ電源を付けるともっといいとか、主にユーザーレベルでのささやかな工夫から生じた「サーバーで音が変わる」という意識。
そんな流れを受けて、DELAの登場で一気にメジャーかつ製品ジャンルとして確立された「高音質サーバー」という領域。
そして次の瞬間、ユーザビリティの重要性が大概無視されて「音が良いこと」にばかり興味関心が集まってしまうという、いかにもオーディオ業界らしい展開が待っている。
しかし、ネットワークオーディオに用いるサーバーはまず大前提として「良いサーバー」である必要がある。どれだけ音が良かろうと、不安定で使い物にならないサーバーに用はないのである。そして真に「オーディオ機器」を名乗りたければ、筐体や回路の設計を突き詰め、「モノとしての魅力」を備える必要がある。
その点、fidata HFAS1はモノとしての魅力に溢れ、良いサーバーであり、また素晴らしい音質も実現した、まさしく「真にオーディオ機器と呼び得るサーバー」である。それぞれの詳細は下記の各記事を参照。
fidataはまずもって良いサーバーであるので、何の心配もなく存分に音質について語ることができる。
音色については無色透明でありつつ、ほとばしる情報によってその存在は強く意識される。同じ透明でも、美しく澄んだ泉のように静的な佇まいというよりは、より積極的に下流へ情報を送り出す、清冽な源流のような存在と言える。
諸々の記事によれば、fidataもいずれDELA同様にUSBからの音声出力が可能になるらしい。そうなればfidataはストレージ内蔵プレーヤー、すなわち「ミュージックサーバー」としても機能するようになる。はたしてそのプレーヤー機能がどれほどのものかはまだわからないが、fidataの開発陣の「わかっている」様子を見る限りでは、さして心配はいらないだろう。
音源を手中に収めるものは強い。再生機器として単体プレーヤーを使おうが、いずれfidataとUSB DACを使おうが、あるいはPCとUSB DACを使おうが、どのみち音源は絶対に必要だからだ。
TIDALやらQobuzやら、オーディオ用途に耐えられるクラウドストリーミング音源が勃興する一方で、これまた何度も言っているように、ローカルの音源が消えてなくなることもない。まさに自分自身のものとして蓄積してきた「音源の在り処」として、サーバーの重要性は未だに揺るぎない。
とある製品ジャンルにおいて、良い製品があることは大切である。
しかし、どれだけ良い製品でも、「それしかない」という一強状態は健全ではない。
それぞれの価格帯に、様々なメーカーの様々な製品があってこそ、その製品ジャンルは発展するはずだ。
その点で、fidataは色んな意味で実にうまい落としどころの製品である。
大いに製品ジャンルを掻き回し、活性化させてほしいと思う。
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