【GSFレビュー】における「シューティングゲーム」第一弾は『地球防衛軍5』。
シリーズは本作が初体験だったが、プレイしてみて、人気の高さに納得した。
タイトル情報
・ゲームタイトル
地球防衛軍5
・対応プラットフォーム(日本国内)
PS4
・音声仕様
リニアPCM 5.1ch (参考:世界一やさしい「音声仕様」の見方)
音楽
可もなく不可もなく。
きちんと聴けば、勇ましい曲、緊迫感を煽る曲、敵の強大さを感じさせる曲などなど、シーンや展開にあった曲が流れているのがわかる。
しかし、全体的に音楽の存在感は希薄で、音楽が演出面の主役になるようなシーンは皆無に等しい。さらに後述する理由で「音楽が聴こえない」状況が多いことが、この印象に拍車をかけている。
実際、数十時間プレイしたうえでこの記事を書いていてもなお、プレイ中にどんな音楽が鳴っていたのか、まったく思い出せない……
効果音
本作のストーリーテリングは、主人公の周囲の状況については一緒に戦うEDF隊員の声、世界情勢や人類の置かれている状況については各種無線の音声で行われる。ただ、「ストーリーを語る」台詞の量は決して多いとは言えず、ステージの大半はひたすら侵略者どもをなぎ倒す時間となる。
ストーリーが語られる時以外は、プレイヤーを取り巻く愉快な仲間たちの声がゲームプレイを彩る。
彩ると言いつつ問題(?)なのが、戦場で聞こえてくる仲間たちの台詞のバリエーションが非常に少ない……を通り越して、ほとんど「脈絡がない」ということ。
火線の飛び交う激戦の真っ最中に、
「戦闘準備!」
「イエッサー!」
という会話が飛び込んでくる、なんてことがザラにある。今から準備してどうすんだ。
最初は台詞のバリエーションが少なくあまりにも脈絡がないことが気になり、仲間たちに対し「何やってんだこいつら……」とも思った。
しかし、プレイを続けるうちに、段々とその脈絡のなさ――仲間が接敵前に突然歌い出す「EDFの歌」をはじめ、「EDF! EDF!」のコール、激戦の最中でもお構いなしに聞こえてくる気の抜けるような台詞の数々が、ある種の癒しになっていることに気付く。
つまり彼らの通常プレイ時の台詞は、たとえ純粋な掛け声や悲鳴以外であっても、むしろ「効果音」として機能している。しかもバリエーションはさておき量そのものは非常に多く聞こえてくるので、ゲームプレイの盛り上げ効果はなかなかにある。
敵を殲滅してミッションクリアーの音楽が流れている最中だろうが、お構いなしに脈絡のない台詞をしゃべりまくる仲間の存在がかわいく思えてくるから不思議である。
作中に登場する武器は、わりと現実的な火器から非現実的なエネルギー兵器に巨大ロボットにいたるまで、良くも悪くも想像の範囲内に収まる音作りで、心に残る威力や激しさに欠ける。純粋な音をもって、「これはすげえ武器だ!」と思えるような展開はない。
こんな具合で、本作の効果音の種類は豊富とは言えず、雑さは感じても、なにかしら優れた印象を残すようなものでもなかった。
しかし……
サラウンド
あまり印象に残らない音楽、バリエーションと威力に欠ける効果音が「まったく気にならない」レベルの面白さを生み出しているのが、本作のサラウンドである。
本作の敵は多い。数が多い。笑ってしまうほど大量に現れる。
味方の銃撃音は言うに及ばず、敵を倒した時の弾ける肉塊、飛び散る体液、酸、糸、針、敵の火砲、膨大な量の音が全方位から溢れ出して空間を埋め尽くす。埋め尽くし過ぎて、音楽がまったく耳に入ってこなくなる。
地上から、空から、雲霞の如く押し寄せる敵。敵。敵。
それらに撃ち込むリロードは要るけど弾数無限の弾丸。擲弾。爆弾。光線。
とにかく「音の数」が桁違いに多いので、結果的に醸成される熱量は個々の音の弱さを補って余りある。
敵の巨大兵器が登場しようものなら、それが吐き出す無数の砲撃や移動によって環境が崩壊する様まで音として表現され、阿鼻叫喚はさらに加速する。瞬間的な音の爆発力ならば『モンスターハンター:ワールド』にも劣らない。
アドレナリンで!
脳が!!
焼け切れる!!!
ふう。汗びっしょりだ。
言うまでもなく、プレーヤーの視点と敵の位置に応じてリアルタイムで音が紡ぎ出される、ゲームならではのマルチチャンネル・サラウンドはしっかりと味わえる。
仲間の声も位置によって全方位に動く。例えば敵の場所に移動する際、仲間はプレーヤーの背後から付いてくるのだが、そうなると後ろのスピーカーから例の緊張感皆無なやり取りが際限なく流れ続ける。さらにひとりがいきなりEDFの歌を歌い始め、他の隊員もつられて一斉に歌い出す、なんて展開も幾度となく体験する。下手すれば1ステージの中で数回。癒し。
緻密さよりも「純然たる物量」で生み出されるサラウンド体験。
これはこれで素晴らしい。
総合評価
音楽の存在感に緻密な音の作り込み……それらがどうでもよくなるほどに、テレビのスピーカーで遊んだのでは絶対にこれほどの興奮は得られまいと心の底から思えるほどに、本作のマルチチャンネル・サラウンドは楽しい。
ホームシアターで遊ぶ地球防衛軍5は、指鉄砲で「ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ」ゴッコをした経験のあるすべての人に、強力な装備に身を固めて大量のエイリアンを薙ぎ倒したいと思ったことのあるすべての人に、夢と妄想が実現したレベルで最高の楽しさを提供する。
ストーリーやらグラフィックの質やら何やら、その手のものを抜きにしてこれほど純粋に面白いゲームというのは、ある意味こんにちにおいて凄く貴重なのではあるまいか。
『地球防衛軍5』は、ホームシアターでその音の魅力を存分に発揮し、またホームシアターの真価をも実感させてくれる、素晴らしいゲームだ。
【画像の著作権について】
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