私はオーディオとホームシアターが大好きだ。
そしてこの趣味に傾倒するあまり、いつの間にか、明らかに普通ではない規模のシステムを構築するに到った。
Game Sounds Funの目的は「ゲーム×シアターの楽しさを伝えること」である。
「ホームシアターでゲームを遊べば、大好きなゲームがもっと面白くなる」という感動を伝えたいのである。
とはいえ、長らくオーディオ趣味を続けるうちに非常識なレベルにまで巨大になってしまった私のシステムでゲームを遊び、「楽しいぞ面白いぞ」と言ったところで、「そりゃそんな環境で遊べば凄いに決まってんだろ、自分には関係ないね」と思われかねない。
これこそ最も恐れる展開だ。
「いいな」「やってみたい」の前に「無理だ」と思われてしまっては元も子もない。
そこで、私はGame Sounds Funを始めるにあたって、メインのシステムとは別に、「可能な限り安価」で、なおかつ「機能的にも音質的にも、本格的なホームシアターとして満足し得る」システムを新規に導入することを決意した。
ここまでやらなければ、企画を立ち上げる身として本気とは言えまい。
ホームシアターにおける映像機器――テレビやゲーム機は、とりあえず今あるものをそのまま使えばいい。
必要なのはマルチチャンネル・サラウンドに対応する「AVアンプ」と、音の要である「スピーカー」だ。
AVアンプはすぐに決まった。
Marantz NR1608。
(AVアンプとしては)薄型でスペース性に優れ、機能性も申し分なし。
特に7chアンプを搭載していることが大きい。まずは5.1chから始めて7.1chに拡張するもよし、フロントスピーカーをバイアンプするもよし。プリアウトの搭載も嬉しい。
より安価かつ小型のモデルもあるが、将来的な発展性まで考えた時、NR1608を購入するのにそう時間はかからなかった。
問題はスピーカーだった。
私のマルチチャンネル・サラウンド遍歴はずっと「異なるメーカー/シリーズのスピーカーをキメラの如く組み合わせる」というものだったため、最初は「安価でそれなりのスピーカーをアレコレと組み合わせる」方向で考えていた。
一方、このような考え方自体が「いかにもなオーディオマニア的発想」であり、「これからホームシアターのシステムを作ろうとしている人の思考と乖離しているのではないか?」「複数のスピーカーを組み合わせるよりは、マルチチャンネルのパッケージが用意されているモデルをそのまま使ったほうが、むしろエントリークラスとして正しい姿なのではないか?」という思いも生じた。
そんなタイミングで「コレなんてどうですか」と紹介され、実際に使ってみて、「コレでいい」ではなく「コレがいい」と思ったのが、Monitor Audio MASSシリーズ。
NR1608と組み合わせ、その音に納得して、センターチャンネルを含むスピーカー5本のパッケージを購入した。こういう時は良いと思ったらえいやっと決めてしまうに限る。
ちなみにMASSシリーズにはサブウーファーも用意されているが、サブウーファーはでかいし(高いし)別にいいかなと。
Monitor Audio MASSは、サブウーファーを追加しなければ再生音が破綻するようなレベルのスピーカーではない。コンパクトでデザイン的にもこだわった、どちらかといえばライフスタイル志向のスピーカーにも見えるが、Monitor AudioならではのC-CAM素材をユニットに使った本格的なスピーカーである。
メタル素材ユニットのおかげか、一本約2万円というエントリークラスの価格ながら、細かい音の表現力と音離れの良さは特筆に値する。声の質感も実に明瞭快活。テレビ/モニター/PCに付属のスピーカーから繋ぎかえれば、「聴こえなかった音が聴こえる!」という感覚に襲われること間違いなし。
サイズの限界から地を這うような低音の再生は難しいが、そのぶん「聴こえる低音」はぼやけることなく描き出される。ゲーム中に炸裂する轟音の再現もばっちり。
同時に感心したのが「音の繋がりの良さ」。普段は「フロント一点豪華主義だ!」とか言ってキメラサラウンドしかやったことのない私にとって、自宅では体験したことのないレベルの繋がりの良さである。
さすが5本すべて同一のスピーカーを使っているだけあり、各スピーカー間の音の連続性にまったく違和感がない。これは切れ目のない没入感を生み出すうえで――ゲームをマルチチャンネル・サラウンドで楽しむうえでこのうえない強みとなる。
Marantz NR1608は、そんなMASSシリーズの良さを引き出すうえで素晴らしい仕事をした。決して高くない能率の小型スピーカーが生き生きと鳴るのは、優れたアンプの駆動力があってこそだ。
約五畳の空間をかなりの音量で満たしても、アンプのボリュームにはまだまだ余裕がある。より広い空間、より大きなスピーカーであっても、じゅうぶん対応可能だろう。
ちなみにNR1608では「Multi-Channel Stereo」というサウンドモードが選べるのだが、これがまた日常的な音楽鑑賞においてすこぶる効果的ということも言っておきたい。
「いや、高いだろ!」という声が出ることは重々承知している。
AVアンプとスピーカーを合わせた価格は10万円を越えており、これが「安い」とは私自身思っていない。
しかし、「機能的にも音質的にも、本格的なホームシアターとして満足し得る」という意味では、この辺りが妥当な線だとも考えている。
いわゆるサウンドバーやサラウンドヘッドホンを使うという考えもあったが、それでは「ゲームのサラウンド」を真に味わうにはいたらない。
より安価なAVアンプとスピーカーを上手に組み合わせれば、5万円を切る価格でマルチチャンネル・サラウンド環境を構築することもじゅうぶんに可能である。
しかし、どこまで価格を下げても「高い!」という声がなくなることはないだろう。
大切なのは「安いからやる」「高いからやらない」といった金額の問題ではなく、体験によって価値を認めてもらうことだと信じている。
「高すぎて無理」あるいは「タダでもやらない」だったものが、衝撃的な体験を経て「いくらかかってもやりたい」になる可能性は決してゼロではないはずだ。実際「ゲームシアター」には、それだけの力が絶対にある。
こうして、Marantz NR1608とMonitor Audio MASSシリーズの組み合わせという、Game Sounds Funのための、多くの人に「ゲーム×シアターの楽しさ」を実感してもらうためのシステムが出来上がった。
【GSFレビュー】は基本的にこの環境で行うことになる。
→2019/10/05にレイアウトを変更。詳細はこちら
そもそもこの部屋は、専用室でもなんでもない変形五畳程度のPC作業部屋で、スピーカーもアンプも、PC環境と同居させる形で導入した。「部屋の現状をほとんど崩すことなく」、「半径1メートル程度のスペースで」作った環境でも、「ゲームをホームシアターで遊ぶ楽しさ」を完全に味わうことができる。
マルチチャンネル・サラウンド環境の構築するために、広い部屋・大きな空間は必須のものではない。
「ゲームをホームシアターで遊んでみたい」。
そう思ったすべてのゲームファンに対し、「最初の一歩」としても「完成形」としても、Marantz NR1608とMonitor Audio MASSシリーズの組み合わせは自信を持っておすすめできる。
以下は管理人の個人サイトに書いた、各機能のより詳細なレビュー記事。
興味のある方は参照してほしい。
Marantz NR1608
【レビュー】導入編
【レビュー】設定・音場補正編
D&Mのネットワークオーディオのプラットフォーム「HEOS」
Monitor Audio MASSシリーズ
【レビュー】外観編
【レビュー】スタンド&設置編