Amazonがロスレス/ハイレゾ音楽ストリーミングサービス「Amazon Music HD」を開始するようだ
本当に始まった!
Amazonは、音楽ストリーミング配信サービス「Amazon Music HD」を提供開始した。無料体験も用意している。
ロスレス(44.1kHz/16bit)のHD音質と、最大192kHz/24bitのULTRA HD音質の2種類を用意している。6,500万曲以上をロスレスのHD音質で提供するほか、数百万曲をハイレゾのULTRA HD音質で提供する。ビットレートはHD音質が最大850kbps、ULTRA HD音質が最大3730kbps。Amazonのハイレゾ/ロスレス音楽ストリーミング「Amazon Music HD」スタート。6,500万曲をロスレス提供 - Phile-web
とりあえず、これだけ「ロスレス」と強調するからには、MQAではないんだな?
The pricing tiers are lower than either TIDAL or Qobuz and with a music catalog a claimed 50-million deep at what Amazon is calling “High Definition” and “millions” at up to 24-bit/192kHz resolution in FLAC format that it’s dubbing “Ultra HD” (keep it simple for the masses)
Amazon Music HD launches: Cue “Flight of The Valkyries” - AudioStream
A small percentage of this same lossless library will be made available as natively streamed hi-res audio – 24bits and sample rates up to 192kHz – and without the help of MQA.
Amazon Music launches CD-quality, hi-res streaming tier - DARKO
やったぜ。
日本語の記事も。
「Amazon Music Unlimited」の一環として提供されるこの新サービスでは、5000万曲を超えるCDまたは24ビット品質の楽曲が用意されており、またTidalのMQA形式とは異なり、特殊なデコーダがなくてもハイレゾで再生することができる。
「Spotify」「Apple Music」「Google Play Music」など他社の配信サービスでは圧縮された音源の楽曲しか提供されていない。Amazonは「Amazon Music HD」を通じて、高品質のFLAC音源で楽曲を配信する数少ない企業の1つとなる。
アマゾン、ハイレゾ音楽配信サービス「Amazon Music HD」を発表(CNET Japan) - Yahoo!ニュース
とはいうものの、一応確認してみる。
まず、Amazon Music HDは「最大192kHz/24bitの音源を最大3730kbpsでストリーミング」と言っている。
この「3730kbps」というビットレートから攻めていく。
MQAは御存知のとおり、192kHz/24bitだろうが352.8kHz/24bitだろうが、サンプリングレートの高いハイレゾ音源を44.1kHz/24bitまたは48kHz/24bitに圧縮することで、通常のFLACやWAVに対してファイルサイズを大幅に縮小している。
例えば、2Lがサンプルとして公開していた44.1kHz/24bit⇔展開後352.8kHz/24bitの音源だとこんな感じになる。
44.1kHz/24bitの音源の場合、無圧縮でのビットレートは2116kbpsになる。
FLACでの圧縮もかかっているので、実際のビットレートはもっと小さくなっている。
なお、48kHz/24bitの音源の場合、無圧縮でのビットレートは2304kbpsになる。
ちなみに、352.8kHz/24bitの音源の場合、無圧縮でのビットレートは16934kbpsになる。
とにかく、MQA音源それ自体のビットレートは3730kbpsには届かない。
つまり、Amazon Music HDがMQAを使っているなら、そもそも「最大3730kbps」と言う必要はない。
一方のFLACはどうか。
ずっと昔にLINN RECORDSからダウンロードしたHelge Lien Trioのアルバム「Natsukashii」のハイレゾ音源(192kHz/24bit)から、4曲目「E」を見てみる。
192kHz/24bitの音源の場合、無圧縮でのビットレートは9216kbpsになる。
FLACでの圧縮もかかっているので、実際のビットレートはもっと小さくなっている……が、Amazon Music HDのいう「3730kbps」にはまだ届いていない。
そこで、dBpoweramp Music Converterで最大圧縮レベルでFLACに再変換してみた。
全然変わらん……
もちろん音源によって圧縮の効き具合は変わってくるとしても、Amazon Music HDはかなりどぎつい圧縮をかけているものと思われる。
もっとも、圧縮は圧縮でも可逆圧縮/ロスレスなのでその辺は安心だが。
【2019/09/21追記】
よくある質問を見ると、ビットレートに関してAmazonが言っている内容は今更ながらかなりガバガバである。
「3730kbps」という数値について、紹介画像やプレスリリースでは「最大」と言っていたのが(44.1kHz/24bit~192kHz/24bitの)「平均」になっていたり、
「HD(要はCD相当の44.1kHz/16bit)」のファイルサイズ例が、ほとんど「無圧縮の44.1kHz/24bit」になっていたり。
でかでかと紹介画像で謳われ、プレスリリースでも使われている「ビットレートは最大3770kbps」という表記が不正確で、よくある質問にある「3730kbpsというビットレートは44.1kHz/24bit~192kHz/24bitの平均」・「Ultra HD(ロスレス、最大192 kHzサンプルレート):153MB」という表記が正確なら、Amazon Music HDの192kHz/24bit・FLACのビットレートは「5828kbps」となる。これなら、FLACとしては一般的な圧縮率といえる。
いずれにせよ、FLACは圧縮は圧縮でも可逆圧縮/ロスレスなので、Amazonの説明はさておき実際にストリーミングされてくる音源の質は変わらない。
【追記おわり】
Amazon Music HDのストリーミング再生に必要な通信速度は、HDストリーミング再生時では、通常1.5Mbps以上(LTE通信同等)が必要。Ultra HDストリーミング再生には、少なくとも5Mbpsの速度が必要。HDオーディオは、1分あたり最大5.5MBのデータを使用。192kHzのUltra HDでは、毎分最大12MBのデータを使用する。
通信速度は足りている。
「ハイレゾ音源をそのままストリーミングできるのならそれに越したことはない」というアイデアを、ほかならぬAmazonという巨大企業が実証・実現した格好である。
というわけで、Amazon Music HDを実際に使ってみる。
Amazon Musicにもデスクトップアプリがあったのか……
これがAmazon Musicのデスクトップアプリ。右下には「HD」の文字が。
それにしても、「ロッシー」の音源を「SD」と呼び、「CD相当」の「44.1kHz/16bit」を「HD」と呼ぶことには凄まじい違和感がある。
この違和感についてはいろんなところで、私以外のいろんな人からも突っ込まれるだろうが、「既にロッシーがスタンダードになってしまった時代」ゆえに致し方なしか……
BDが出た当時にも同じようなことを感じたっけ。
「ドルビーTRUEHD」にせよ「DTS-HD Master Audio」にせよ、48kHz/24bit収録ならともかく、48kHz/16bitは「HD」じゃねーだろ、と。もっとも、この「HD」という呼称は、サラウンド音声を「ロッシー」でしか収録できなかったDVDに対し、「ロスレス」かつより高いスペックで収録できるBDの意義を示した、ということでもあるのだが。
気を取り直して、ハイレゾハイレゾ……
しかしこのAmazon Musicのデスクトップアプリ、使いづらいというかなんというか、
Windows版ではASIOも何も使えないし、せっかくの「ロスレス/ハイレゾストリーミング」だというのに、まるで音質に対するこだわりが感じられないのは残念。
むしろ残念を通り越して、「とりあえず始めた感」が強すぎる。
まぁ、この記事でも書いたとおり、本当の勝負は各種ネットワークプレーヤー/再生ソフトへの機能統合やRoonとの連携が果たされてから、である。
なお、私が持っているMarantz NR1608 / HEOSはAmazon Musicには対応しているが、まだAmazon Music HDに対応していないようだ。
【追記】
上の画像は2019/09/18の0:51に撮った下のスクリーンショットをトリミングしたものだが、この時点では確かにAAC/256kbpsになっている。
その後、NR1608 / HEOSでもAmazon Music HDが再生できているという指摘を頂いたので再度確認したところ、15:01時点で確かにハイレゾ(この場合は48kHz/24bit)で再生できていることを確認した。
ついでに、「Amazon Music HDはFLACを使っている」ことも明確に確認できた。
どうやら、昨晩の検証だとAAC/256kbpsだったのは、Amazon Music HDがスタートした直後の、いわば一瞬の切り替えの隙間だったようだ。実際、9/18付けでNR1608のファームウェア・アップデートが提供されていた。検証と記事の作成が早すぎたか!
というわけで、NR1608 / HEOSはAmazon Music HDに対応し、192kHz/24bitまで再生できている。
レスポンスは現状ではかなり酷いが、とりあえずロスレス/ハイレゾでのAmazon Music HDの再生が確認できたのでよかった。
【追記おわり】
2019年9月17日、歴史が動いた。
この流れは加速することはあっても留まることはあるまい。