【レビュー】Ediscreation Silent Switch OCXO “JAPAN STANDARD MODEL” - DELA S100との比較





 ハブで音は変わるか、なんて話をしていたのも今は昔、すっかり確立された感がある「オーディオ用ハブ」というジャンル。LUMIN X1 / SOtM sNH-10Gあたりから本格化した光LAN接続という要素が加わったり、最近ではLINNの新KLIMAX DSMもSFPポートを搭載してきたりと、オーディオ用ハブ界隈はまだまだ盛り上がりが続いている。

 そうしたなかで、香港のブランド「Ediscreation」のオーディオ用ハブ「Silent Switch OCXO」が日本に導入された。

 Silent Switch OCXOの187,000円という価格は私も使用しているDELA S100の151,800円と完全にぶつかる――外部リニア電源を使っているので価格はさらに近づく――ので、個人的にも非常に興味のある製品である。

 製品を試す機会を得たので、今回は特にDELA S100との比較を中心に使ってみた。

外観・仕様


 航空機グレードのアルミニウムから機械加工された筐体はさすがの剛性感で安っぽさはまったくなく、重量も2.9kgとじゅうぶんにある。


 サイズは270×220×85mmで、215×270×61mmのS100に比べて一回り大きい。とはいえ、私はS100に外部リニア電源を組み合わせているので設置スペース的にはほとんど違わない。


 底面は平坦なのでインシュレーター等は使いやすい。


 背面。RJ45ポート(1G)を8系統搭載。光LAN接続が流行っている(?)なかで、この価格帯の製品としてRJ45に絞ってきたのはなかなか潔い仕様である。

 OCXOクロックやリニア電源の採用、グランドボックス(仮想アース)と接続するためのグランド端子の搭載にくわえ、Silent Switch OCXOの大きな特徴となっているのが「グランド絶縁スイッチ」の存在。


 レバースイッチによってルーターからのグランドノイズを容易に遮断可能で、この機能を実現したのはSilent Switch OCXOが世界初とのこと。また、メタルプラグのLANケーブルを使うことによるアースループの発生と、それによる音質への悪影響はネットワークオーディオの文脈で以前から語られてきており、グランド絶縁スイッチはこの問題への有効な解決策にもなる。

 クロック・電源・筐体へのこだわりという基本に誠実に取り組み、さらに「グランド絶縁スイッチ」という新機軸を盛り込んだ、オーディオ用ハブとして非常に意欲的な製品というのがSilent Switch OCXOに対する印象である。

音質

 現在、私のシステムではWi-FiルーターとS100間で光アイソレーションを行っている。Silent Switch OCXOはSFPポートを持たないため、このままの接続ではS100と入れ替えて比較することはできない。

 というわけで、まずは「純粋にハブとしての比較」を行うべく、①Wi-FiルーターとS100をLANケーブルで接続、②Wi-FiルーターとSilent Switch OCXOをLANケーブルで接続という2パターンを用意した。使用しているケーブル等は完全に同一である。


 外部リニア電源を組み合わせたDELA S100とSilent Switch OCXOの「LANケーブルで接続した純粋なハブとしての比較」では、Silent Switch OCXOに軍配が上がる。

 Silent Switch OCXOは(その名に違わず)背景の静寂感で上回る。音の輪郭、特にボーカルにまとわりつくざわつきがかなり低減され、ごく微細なディテールが顕在化することで空気感にプラスの影響がもたらされる。音の輪郭がはっきりすることで空間における位置関係が明確になり、その結果として立体感も向上する。エネルギー感が云々、情報量が云々というより、とにかく徹底したノイズ低減が再生音にも表れているという印象だ。

 ちなみにこの印象はグランド絶縁スイッチを「Connect」にした状態のもの。繋がっているLANケーブル(Wi-Fiルーター、オーディオ用PC、サーバー、ネットワークプレーヤーの4つ)をすべて「Isolate」にすると、さらなる音質向上が得られた。音の輪郭のざわつきがさらに減って「磨き込まれた」という印象が生じ、空気感と立体感もいっそう強まる。要はSilent Switch OCXOの音質傾向がより明確になる。字面にすると奇妙だが、とにかく「強烈な静けさ」である。
 

 それでは、私のシステムの通常の接続である、③Wi-FiルーターとS100間で光アイソレーションを行う(ついでにオーディオ用PCとS100の間もDiretta Aperitivo USB-SFPで光アイソレーションを行っている)、つまりS100の真価を発揮させた場合との比較ではどうだろうか。

 ②と③の比較では、依然として静けさにおいてSilent Switch OCXOが勝るものの、音楽全体のコントラストやエネルギー感ではS100に軍配が上がり、トータルでの音質的な絶対値は拮抗する。

 私がS100の上流で使っている光メディアコンバーター(↑)はオーディオ用ではないごく普通のものなので、例えばこれをSONOREのopticalModule Deluxeに変えるなどすれば、さらなる音質向上も期待できる。正直そこまでの気力はあんまりないけど。

 総じて、「一台で確実に大きな効果が得られるSilent Switch OCXO」と、「光LAN接続による大きな伸びしろを有するS100」という結果となった。外部リニア電源を使い、それ自体相当なレベルにあるはずのDELA S100に対してもなお、Silent Switch OCXOは明らかに静けさで上回る。「Silent」の名に偽りはない。

まとめ

 S100には「SFPポートを搭載して光LAN接続が可能」という明確な機能的優位、音質的な伸びしろがある。しかし、光LAN接続を行うためにはサーバーやプレーヤーといった機器の側で対応している必要があり、色々と気にしなければいけないことも増える。ついでに外部電源仕様なので、その点も気にする必要が出てくる。

 それに対し、Silent Switch OCXOはRJ45ポートしか持たず、電源も内蔵するので、気にしなければいけないことが少ない。それでいて確実に効果が得られる。これは大きな美点といえる。

 箱が増えることを厭わなければ、SFPポートを持たないハブであってもシステムトータルで見れば光アイソレーションは可能だし、プレーヤー側にSFPポートがあれば「光で直結」も可能。また、たとえS100のようにSFPポートを持つハブであっても機器のSFPポートを使わず、opticalModule Deluxeといったオーディオ用光メディアコンバーターを使った方が優れた音質が得られるという場合もある。というわけで、SFPポートを持たないことは必ずしもSilent Switch OCXOの致命的な弱点とはならない。

 光LAN接続という発展性をいったん度外視して、純粋に高性能のハブを求めるのなら、Silent Switch OCXOは文句なしにおすすめできる製品だ。

 ただし、私のように既に「SFPポートを持つハブ」を導入していて、実際に複数の機器と光LAN接続を行っている場合、ネットワーク周りの大幅な変更にも繋がるため、言うまでもないが導入には慎重な検討を要するだろう。

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