<HIGH END>DELAの欧州向けNAS、本体からのタグ編集が可能に。Minim Serverにも対応 - Phile-web
日本では「DELA」の名称で知られるミュージックサーバー/NASは、海外ではMELCO(メルコ)ブランドとして展開されている。今回のHIGH END MUNICH 2019にてMELCOはプレス向け発表会を開催。海外向けモデルの新機能として、2つの大きなトピックが発表された。ひとつはサーバーソフト「Minim Server」への対応。もうひとつは、タグ(メタデータ)管理ソフトウェア「SongKong」への対応により、本体からジャケット画像を含むメタデータの補完や修正が可能になったことだ。
DELA/MELCOは、楽曲検索におけるツリーの整理を行うなど、NASにおけるライブラリ運用の最適化にいち早く着手してきた。しかし、メタデータの管理には、まだ問題があると感じていた。例えば、アーティスト名の不統一、ジャンル名が細かく設定できないことにより、サーバーがそれらのデータを正しく認識できないことなどである。これらは日本だけでなく、グローバルな問題であり、海外のユーザーからも様々な要望が上がっていた。こうした問題を解決するために、今回のアップデートが考えられたという。
SongKongはタグエディター・ソフトの一種。複数のデータベースからメタデータを取得して、すでにサーバー内に納められている楽曲のメタデータの“抜け”を補完したり、書き換えたりすることができる。これに対応することで、ミュージックサーバー上からメタデータの補完・変更が行えるようになった。
この手のソフトがPCだけでなくNASでも動くようになったというのは興味深い。
「PCを使わずにNASでタグ編集」というと、fidata/アイ・オー・データはアプリ(fidata Music App)で行えるが、DELAは異なるアプローチをしてきたということだ。
ちなみに、「既にリッピングまたはダウンロードした音源のタグを自動で付加/編集」するソフトは色々とあるが、それを「ライブラリ単位で」行うソフトとなると、例えばdBpowerampでおなじみのillustrate社が「PerfectTUNES」をリリースしている。
今回はDELAのミュージックサーバーが「SongKong」に対応したことを記念して(?)、あらためて音源管理/ライブラリ構築における「自動タグ付け」について考えてみたい。
まず、単に「自動タグ付け」と言っても、事実上二種類あることに注意する必要があるだろう。
ひとつめは「CDをリッピングする際の自動タグ付け」、ふたつめは今回DELAでも可能になったような「既存の音源に対する自動タグ付け」である。
両者は「どこぞのデータベースを参照してアルバムやらアーティストやら曲名やらアルバムアートやらといった情報を音源に付加する」という基本はまったく同じであり、ただ「いつ行うか」のみが異なる。
とはいえ、音源管理/ライブラリ構築を行ううえで、両者はきちんと分けて考える必要がある。
そして実際の作業に先立って、『自分にとって良いライブラリとはどのようなものか』『どのようなライブラリを作りたいのか』をしっかりと考え、音源管理について自分なりのルールを作ることが重要だ。
普遍的なライブラリを目指して
『自分ルール』の重要性――ジャンル/アーティスト/アルバム
「CDをリッピングする際の自動タグ付け」については、今さら特に語ることもない気がするが、一応。
例として、この2枚をdBpoweramp CD Ripperでリッピングする。
dBpoweramp CD Ripperの「複数のデータベースを参照する」機能により、それぞれのCDで二つの候補が見つかっている。ゼノギアスのサントラに到っては、「freedb」だと諸々の情報が全部英語仕様になっている。
dBpoweramp CD Ripperは「こんな情報が見つかった」と提示しているだけであり、情報の厳密な正確性は担保しない。無論、そもそも情報が見つからないという場合も往々にしてある。
複数の候補があるなら何を選ぶのか、手直しする必要があるかを判断するのはあくまでもユーザーである。ゼノギアスのサントラはアルバムアートが見つかっていないがそれでもいいのか、とか。
ここで一歩立ち止まって確認を行うのか、それとも機械任せにして即リッピングを開始するのか。この差は、積もり積もってライブラリの未来を左右する。
信用する。活用もする。
しかし、過信しない。
これが私の「CDをリッピングする際の自動タグ付け」に対する姿勢である。
なお、「ダウンロード購入した音源」については、その都度タグの確認と編集を行うようにすればいい。あえてタグ無しの音源を買うなんてことをしなければ、確認と編集の手間はCDをリッピングする際と大差ない。
製品によってはユーザーの意思を反映させるプロセスを経ずに、CDを入れたら即リッピングが行われるものも存在する。それはそれで仕方がないので、リッピング後にタグを確認する必要がある。
続いて、「既存の音源に対する自動タグ付け」なのだが……
しっかりと自分のルールに基づいてCDのリッピングを行い、ダウンロード購入した音源でその都度タグの確認と編集を行うことは、それ自体が音源管理/ライブラリ構築である。つまり、音源を入手する時点でやるべきことをやっていれば、そもそも「既存の音源に対する自動タグ付け」に頼る状況は生じない。
また、例えば「SoulのジャンルをR&Bに集約しよう」という具合に音源管理のルールを再考する場合、修正の範囲はライブラリ全体に及ぶが、その時行うタグ付けは「自動」ではなく「手動」である。
もっとも、「しっかりと自分のルールに基づいて~」というのが理想論に過ぎないことは承知している。残念ながら。
なんとなくCDのリッピングやダウンロード購入を繰り返し、ふと気付けばとんでもないことになっていた、なんてケースは実際枚挙に暇がない。
現に滅茶苦茶になってしまったライブラリがあるとして、CDのリッピングを最初からやり直すのも、アルバム一枚ずつタグを整備していくのも、ひじょうに骨が折れる。
そんな時、ライブラリ単位で自動タグ付けを行ってくれるソフトは確かに有効だ。たとえ完璧な状態にはならずとも、タグがからっぽだった音源にある程度の情報と方向性を持たせるだけでも大きな意味がある。
あとは、自動タグ付けを経てある程度美しく整ったライブラリを見て「綺麗なライブラリはいいもんだな」と実感し、そこから「やっぱり音源管理はきちんとやらなくちゃ!」と思ってくれるのなら最高の展開だ。
今となっては何もかもRoonにお任せという手もあるが、そのRoonとて、「データベースに情報のない音源はどうしようもない」という限界が存在することは理解しておかなければならない。
Roonは「そんなところまで!?」と思えるほど豊富な情報を付加してくれるが、よくよく見ると諸々の差異が生じることもまた事実である。
CDをリッピングする際、あるいは既存のライブラリを整備する際の「自動タグ付け」はひじょうに便利かつ有効な機能である。
おおいに信用し、活用すべきだ。
今回、DELAの製品が対応した「SongKong」も様々な使い道があるだろう。
しかし繰り返すが、過信してはいけないし、機械任せは破綻の種を生む。
「既存の音源に対する自動タグ付け」を使うにしても、それだけでライブラリが完璧になるなどとは考えない方がいい。
他ならぬ自分の意思をタグという形で込めるからこそ、「自分にとって理想的かつ普遍的なライブラリ」が構築できるのである。
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