WAVでリッピングした音源をFLAC等に変換するとタグはどうなる?
WAVでもタグは使える。
ただし、「タグが使えること」と「タグが機能すること」は別物である。
今回の記事では以上の事実に追加して、WAVにおける日本語のタグの取り扱いについて検証する。
WAVに付加した日本語のタグが文字化けを起こしてライブラリがえらいことになった、そんな経験のある人もいるだろう。
別にWAVに限った話ではないのだが、こういう文脈で登場するのは基本的にWAVなものだから。
なお、FLACを使えばこんなことをいちいち気にする必要はない。
アルバムアートを含め、FLACのタグはあらゆるソフト/ハードでまず間違いなく機能するからだ。
平仮名と片仮名と漢字と英数字がごちゃまぜになったアルバムということで、シン・ゴジラのサントラをdBpoweramp CD Ripperでリッピングする。
と、その前に。
今の今まで触れてこなかったことではあるが、dBpowerampには「Advance Options」が用意され、WAVを含む音源に「どのようにタグを付加するか」を事細かに設定できる。
WAVのタグ付けで特に注目すべきは「Text Encoding」、すなわち使う文字コード。
「ANSI」と「Unicode-16」の二つが用意されている。
この時点で既に検証は始まっている。
「WAVでもタグは使える」と言っても、そもそもWAVでタグを使うことはあまり想定されていない。さらにWAVは内的なタグ付けの仕様・扱いが曖昧なところがあり、「どのようにタグを付加するか」はタグを編集するソフトによって異なるという現実がある。そして、WAVにタグを付加しても、それを再生ソフト/サーバーソフトがきちんと拾ってくれるとは限らない。
これらの事情が重なって、「使用するソフトによってはWAVのタグが機能しない」事態が生じている。
というわけで、「ANSI」と「Unicode-16」でそれぞれシン・ゴジラのサントラをリッピングした。
ファイル名とタグを見ただけでは、両者に違いがあるようには見えない。(アルバムタイトルのみわかりやすく変えている)
問題は、この二つの、日本語をタグに含むWAV音源を再生ソフト/サーバーソフトがどのように扱うか、である。
検証にはトラック15「EM20_Godzilla - 再始動」を用いた。
まずは再生ソフト。
最初にiTunes。
文字コード以前の問題であり、いつものことなので特に言うことはない。
ちなみにiTunesでWAVでリッピングをするというのは……とりあえずおすすめしない、とだけ言っておこう。
どうしてもiTunesでリッピングしたいのならALACかAIFFをおすすめする。
次にMediaMonkey。
プレイリストの上は「ANSI」、下は「Unicode-16」。
Unicode-16の音源の表示がおかしい。
ANSIのプロパティ。
取りこぼしはあるが致命的な問題はない。
Unicode-16のプロパティ。
明らかにタグが機能していないことがわかる。MediaMonkeyが頑張ってファイル名をタグとして扱っているのだが、シン・ゴジラのサントラが相手では分が悪かった。
これはMediaMonkeyが悪いのではない。
WAVなんか使うからこういうことになるのである。
なおMediaMonkeyでWAVでリッピングし、MediaMonkeyで再生するのならこのような事態にはならないのだが、それはそれで「音源に普遍性がない」ことには変わりない。
次にfoobar2000。
とはいえ、WAVのタグが機能することは、非常に危うい調和の上に成り立っているという事実を忘れてはいけない。
次にJRiver Media Center。
ANSI、Unicode-16ともに問題なし。
この辺はさすがである。
続いてサーバーソフト。
最初はおなじみTwonky Server。バージョンは8.3。
例によって嫌な予感しかしないが、やる。
ちなみに今回はフォルダに「Folder.jpg」を仕込んでいるのでWAVの音源でもアルバムアートは出る。
Twonky ServerでWAVのタグが機能しないことはわかりきっている。
しかし、シン・ゴジラ特有のアレな曲名のせいで、MediaMonkey同様にソフトの側で「ファイル名のこの文字列はアルバムタイトルで、この文字列はアーティスト名だな」などと気を利かせた結果、とんでもないことになった。
Twonky Serverのお節介のおかげでアルバムが完全な断裂を起こし、「不明」の中身すら歯抜けするというこの有様。
いつものようにただ「不明」にぶちこまれていた方がよほどマシという地獄のような状況になってしまった。
最後の手段のフォルダ掘りですら、何やらおかしなことになっている。
文字コードがどうとかこうとか、もはやそういう次元ではない。
DELAやfidataみたくWAVのタグでも読めるように改造されているのならともかく、Twonky ServerでWAVを運用する道は辛く険しい。
→バージョン8.5でWAVのタグが機能するようになった。
シンゴジのサントラのような複雑なタイトルの音源ではまだおかしくなる可能性があるが。
次にAsset UPnP。バージョンは5.1。
もっとも、dBpowerampもAsset UPnPもIllustrate社の製品なので、整合性が取れて当然といえば当然なのだが。
次にMinimServer。バージョンは0.8.4 update88。
少なくとも初期状態では、MinimServerはANSIを用いた日本語のタグで文字化けを起こす。
すなわち、どうしてもMinimServerでWAVを扱いたいと思えば、その時は……
次にKazoo Server。バージョンは4.6.1078.0。
Kazoo Serverは、LINNは、WAVを「音源」として認めていないッッッ!!!
「WAVはFLACよりも高音質だと言うこと」に問題はない。
自ら試し、感じたことを表明することには何の問題もない。
しかし、感性の差とは無関係に、WAVとFLACではタグの扱いが異なるのは明らかな事実であり、それは音源/ライブラリの普遍性・汎用性に決定的な差を生む。
「もしかしたらあるのかもしれない音質差」に意味を見出し、ソフトの相性だの文字化けだの文字コードだの何だのかんだのを気にして使える機器やソフトの選択肢を狭めることになっても構わないのなら、あるいはWAVとFLACの音質差を完璧かつ完全に聴き分けられる立派な耳と素晴らしいシステムを持っているのなら、あるいは単にFLACが嫌いなら、その時はWAVを使えばいい。
個々人の姿勢である。好きにすればいい。
「音源管理」の重要性さえ認識してくれるなら、私からとやかく言うことはない。
私はFLACを使うけどな。
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