SOULNOTE A-2 ― Dynaudio Sapphireへの捧げもの
筐体の防振について
SOULNOTE製品は音質を最重視した結果、あえてトップカバーやシャーシ等の防振を行っていません。
「そうした方が音に良い」とわかってはいても、様々な理由から、本当にそれをとことん実行できるメーカー/ブランドはそう多くはあるまい。
そして、SOULNOTEはそれを実行し、その結果、A-2が誕生した。
とりあえず、Nmode X-PM7が置いてあったスペース、マホガニーボードの上に置く。
■音質最優先の筐体設計
電源トランスは直接スパイクで接地させ、凹凸断面形状で共振をコントロールしたアルミパネルの組み合わせで剛性を高める一方、アルミパネル同士の直接接合はあえて避けて不要な共振を排除しています。また音質に影響が特に大きいトップカバーは、ベース鉄板とアルミパネルを互いにダンプしない様に3点接合させた二重構造とし、これをさらに筐体アルミ部に固定することなく3点接地することで、解放的なまま、音の重心を下げることに成功しました。
A-2はトップカバーが浮いている。
いや、一応「接地」している以上「浮いている」という表現が正しいのかどうか定かではないが、とにかく浮いている。
アンプの近くを歩こうものなら、床を踏む振動でジャラランとトップカバーが盛大な音を立てるレベルで浮いている。
さらにに我が家の再生音量では、再生音だけでトップカバーが鳴る。スパイクに換えると音楽なら大丈夫になったが、映画のドドドゴゴゴなシーンになるとやっぱり鳴っている。もっとも、そういうシーンの音響はトップカバーの鳴りを塗り潰して余りあるので、気にならないといえば気にならないのだが……
どうすればいいのか。フローティング的なアレを試すべきなのか。
「筐体構造からストレスを排除する」という思想の行き着く先。
いやはや、ここまで解放的なアンプは初めてだ!
※トップカバーが鳴るという話、どうやら床の強度も大きく影響しているようだ。
私の環境は……木造住宅の二階だから、まぁ……
A-2は交換用のスパイクが付属する一方、標準の足も、平面で可能な限りスパイクの音質的美点を得られるように工夫されたものとなっている。脚部に違いによる云々は音質編で述べる。
A-2はなんとリモコンが使える。AVアンプはさておき、音量調整も入力切替もすべてアプリから行えたLINN MAJIK DS-Iという例外を除けば、リモコンが使えるアンプがシステムに加わるなんて10年ぶりだ。椅子に座ったまま音量調整ができることのすばらしさ!
再生システムにおいては「居ながらにしてすべてを見、すべてを操ることで得られる、音楽再生における筆舌に尽くしがたい快適さ」とか言ってるくせに今さら何言ってんだという感じだが、それはそれ! アンプはアンプ!
ちなみに、A-2のパワーアンプモードへの切り替えは必ず電源を落とした状態で行う必要があるので、どのみち椅子とアンプの間をうろつく日々は終わらない。
あと、A-2のパワーアンプモードのゲインは、RCA・XLRともに21dBだそうだ。
配線を終えて、電源を入れる。
ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン
……
ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン
…………
ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン
ウオオトランスが唸る!
………………
ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン
……………………
ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン
…………………………
ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン
!
………………………………ふぅ。
かくして、トランスの唸りの原因は雪国の冬に欠かせないファンヒーター(あくまでもうちで使ってるやつね!)だと判明した。電源をオフにしただけでは駄目で、電源ケーブルまで引っこ抜く必要があった。暖房機器はオーディオ部屋の隣の部屋の離れたコンセントから引っ張ってきているのだが、それでもこの通りである。
原因がすぐにわかって、しかも対処可能なもので本当によかった……
幸いにしてパネルヒーターは使用してもトランスが唸ることはなかった。元々やかましいファンヒーターは最初に部屋を暖めるために使い、見る・聴く時には無音のパネルヒーターに切り替えるという日々を送っていたので、ファンヒーターの電源ケーブルをその都度抜くという手間さえ厭わなければなんとかなる。
もしファンヒーターとパネルヒーターの両方がトランスの唸りを誘発し、両方とも音楽を聴く際に使えないなんて展開になっていたら、凍死するしかなかった。
A-2の前に同じ環境で使っていたNmode X-PW10もX-PM7も、歴代のAVアンプも、ファンヒーターに反応してトランスが唸るなんてことはなかった。
つまり、A-2のトランスは……物凄く敏感だ…………!
ようやく落ち着いたので、電気を消す。
焔の如き光が漏れる。光自体はD-1と同じだが、光量はD-1の比ではない。
天井を見上げる。
ただ、光が邪魔だからといって安易にラックに押し込めるような真似をしてはいけない。その辺りは音質編で述べる。
とにかくこのままでは映像鑑賞、特にプロジェクター&スクリーンの使用に甚大な支障をきたすので、工作は必須である。まぁ、その辺に転がってる棒と段ボールの切れ端を合体させればなんとかなる。
そんなこんなで、音を出す前の段階からA-2の運用は困難を極めた。
トップカバーの仕様はユーザーにはどうしようもない。
電源環境にも(相対的に)シビア。ファンヒーターを点けるとトランスが唸り、私は呻く。
光漏れ……は特に問題がないという人の方が多いか。
下手をすれば三重苦である。
正直、オーディオ機器としてあまりにもデリケートというか、もうちょっとなんとかならなかったのかとは思う。
しかし、これらの運用上の難点こそが、まさに「音質を最重視」した結果、一切の妥協なき設計が行われた紛れもない証拠なのだろう。
筐体をガチガチに固めると音が死ぬ。ストレスは可能な限り減らす。いっそトップカバーまで浮かせてしまえ。
電源トランスの唸り対策なんて余計なことをしたら音が死ぬ。電源環境の側を何とかすればいい。
おそらくこんなところなのだろうと推察する。
他のメーカー/ブランドでは実現したかどうかも定かではない、いい意味で「試作機めいた」アンプ。なんとも浪漫のある話だ。そんなアンプを(見も聴きもせずに買ったからただの偶然だけど)システムに迎え入れたことは、オーディオを単なる道具を越えて趣味にする者として、ちょっと誇らしい。
そして、これらの運用上の難点は、音楽が流れ出した瞬間、ことごとく善悪の彼岸に押しやられることになる。
音質編に続く。
【レビュー】SOULNOTE A-2 続・音質編 ― 純正ボード「SSB-1」と純正ケーブル「SBC-1」
【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】