※この記事のデータ等は2012年3月8日時点のものです
●イントロダクション
『SongBook Lite』はかつてSongBookDSの名で一世を風靡したコントロールアプリで、SongBookDSそのものの名称違いであると言ってもいい。ただし、価格は涙が出るほど安くなっている。
ネットワークオーディオのコントロールアプリといえば精々PlugPlayerかSongBookDSくらいしかなかった時代もあり、その頃には高級かつ高機能なアプリとしての評判を欲しいままにしていた。当時はDSと名がつくようにDS専用だったが、今ではUPnP対応の汎用アプリとなっている。
これは穿った見方だが、ChorusDSの登場で“DS専用”アプリとしての牙城を突き崩され、結果として汎用アプリへの転身を図ったのではなかろうか。
iPhone/iPod Touch版、iPad版両対応で価格は800円。
●検証環境
無線LANルーター:Buffalo WZR-HP-G450H
NAS:QNAP TS-119 firmware version 3.6.0 Build 0210T
サーバーソフト:TwonkyServer version 6.0.38
レンダラー:MAJIK DS-I
コントローラー:iPad2
●インターフェース&コントロール
SongBook LiteのiPad版は縦でも横でも使える。
インターフェースは縦横比が違うだけで、個人的には縦画面のほうが美しく感じるので検証も縦画面で行う。
基本インターフェース。
非常に凝縮され、優れた情報の一覧性を有する。
基本的にChorusDSと似通ったデザインだが、登場はこちらが先なので、ある意味ChorusDSの原型となったインターフェースとも言える。
こちらのほうがアルバムアートのサムネイルのサイズが大きいことも、ギュッと情報が詰め込まれたイメージの醸成に一役買っている。
アルバム内に下り、楽曲を選択すると一曲ずつ、選択した順にプレイリストに登録される。実に“わかっている”挙動。登録された曲は緑色で塗り分けられ一目瞭然。この辺はChorusDSと同様である。
画面右下の「Queue All」はアルバム内の全曲をプレイリストに登録、「123」は現在のプレイリストの消去と登録を同時に行う。なお、この「123」というのは特定の操作を行うことで表示名が変わるが、機能的には同じである。(この辺の詳細は後述)
左上のアルバムアートをタップすると、なかなかスタイリッシュな拡大画面となる。画面上部のバーはそのまま残り、一通りの操作はこの状態でも行える。通常画面へ戻るには大きくなったアルバムアートをタップすればよい。
プログレの長ったらしいタイトルも省略せずにきっちり表示されていることに注目。
プレイリストのクリア、編集、保存は左下の「Clear」「Edit」「Save」にて。
画面左上、「1238744」(私が使っているDSの名前)のボタンを押すと「Zone」が表示され、使用するレンダラーを選択できる。SC-LX85もちゃんと表示されていることに注目。DSを使っているとここで電源のオンオフも可能。
「Zone」内の「Search」を押すと、機器の再検索画面が表示される。
例によってネットワークオーディオは腑抜けることが多々あるので、「Clear and Search」で喝を入れるべし。機器が見つかったらOK。Connecting...
ちなみにこのConnecting...は毎回起動時にも必ず現れ、結構時間がかかることもある。
なお、SongBook Liteにおいて使用するサーバーの選択は画面右側の選曲ウィンドウの最初の階層で選択する。
画面左上、「1238744 Playlist」はDSの機能・入力切替。ここは使用しているレンダラーによって内容が異なる。
DSの場合、「Radio」を選択することによりインターネットラジオの画面に切り替わる。
●機能
・再生:〇
・一時停止:〇
・停止:×
・曲送り:〇
・サーチ:〇
・ランダム再生:〇
・リピート再生:〇
・プレイリストでの再生管理:〇
・プレイリストの保存:〇
・検索ウィンドウ:〇
・アルバムアート拡大:〇
・音源のスペック表示:〇
・音量調整:〇
・ミュート:×
・機器の入力切替:〇
・電源オンオフ:〇
・機器の再検索:〇
停止とミュート以外は全部入りといった具合である。
選曲ウィンドウにてアルバムアートが表示されている状態で画面下の「三」←こんなボタン(かなり無理やり)を押すと、アルバムアートの表示がリストからタイル形式に切り替わる。しかし、空白部分が多く一覧性は著しく低くなり、視覚的にもいまいちである。
SongBook LiteはiPad本体の設定からアプリの設定にアクセスでき、表示される文字のサイズや、スリープさせないといった細かい設定をすることも可能。
面白い機能として、アプリ側で音源の表示規則を変えられるというものがある。
例えばTwonkyServerの場合、タグベースのナビゲーションツリーの場合トラックの並び順はタグのトラック番号、フォルダーベースの場合はアルファベット順という“仕様”になっているのだが、SongBook Liteはここの並び方を変えられるのである。
アルバム内にまで階層を降りた状態で、画面下部の「…」ボタンを押すと、画面右下のボタンの表示が「…」→「Abc」→「123」と切り替わる。「…」はサーバーの仕様におまかせ、「Abc」はアルファベット順に並び替え、「123」はトラック番号順に並び替え、といった具合。
はたしてどんな状況下でこの機能が役に立つかといえば、“TwonkyServerを使い、なおかつタグベースではなくフォルダベースでの音源管理をしていて、TwonkyServerの仕様のせいでフォルダベースの選曲をしようとするとアルバム内の音源がトラック順に並ばなくてけしからん!”……という状況である。アプリ側でトラック順に並び替えられるのは便利といえば便利……なのかな?
素直にタグベースで音源を管理した方が100倍手っ取り早い気もするが。
●操作感
速度検証:25.2秒 ※速度検証の詳細についてはこの記事を参照
物理的にChorusDSの速度を上回った唯一のアプリにして、私が検証した限りでは最速である。特にアルバムアート取得(サムネイル表示)の速さは目を見張るものがある。
スクロールの滑らかさ、動作の安定性も高いレベルにあるが、ChorusDSにはわずかに劣る。「ぬるぬる」動くというよりは「てきぱき」動くといった感じか。
機能面でも不足を感じる点は無いのだが、必要な情報や機能にアクセスするための工程がやや多く、この辺りの洗練度という点でもChorusDSに分がある。
●まとめ
5段階評価――3あれば及第点
・インターフェースの洗練度――4+
・情報の一覧性――4+
・速度――5
・機能性――4
・安定性――4
全体的にChorusDSとの比較では一歩及ばないという書き方が多くなったが、ChorusDSとは違い、SongBook Liteはなんといっても汎用アプリである。
これだけのレベルを汎用で達成しているのだ。しかもこの値段で。
非DSユーザー、特にメーカー純正アプリの出来の悪さに辟易して「ネットワークオーディオの操作性って言ったってこんなもんかよ!」と嘆いている方には是非試してみてもらいたい。
きっと福音になるはず。