本日、Qobuzが日本正式オープンを迎えた。2024年10月24日は日本のオーディオ史における記念すべき日として、長く記憶されるだろう。
まずは祝おう。
日本におけるネットワークオーディオの大きな大きな前進を喜ぼう。
……
…
では、現状を見ていこう。
目次
プレオープンとは何だったのか
10月23日に日付が変わった瞬間から日本サイトが公開され、プレオープンとなったのだが、その時点でe-onkyoのアカウント移行をどのようにすればよいかの事前案内は一切なく、私を含めてe-onkyoユーザーは右往左往する羽目になった。
実はページ下部の「ヘルプ」の中に「e-onkyo会員のみなさま」という項目が隠されていたわけだが、実際にアカウント移行が機能するようになった&その案内がトップページに出されたのは、23日になって結構時間が過ぎてからだった。
そもそも、プレオープンから正式オープンまでたった一日であり、何のための「プレオープン」だったのかわからない。e-onkyoユーザー向けに先行体験をさせるわけでもなく、正式オープンに向けて色々な不具合なり何なりを洗い出すでもなく、何がしたかったのかわからない。そして正式オープンした今でも、公式からのアナウンスがなさすぎる。
ついでに、オープン諸々についてe-onkyoユーザー向けに送られているおしらせメールも、届くユーザーと届かないユーザーがいるようで滅茶苦茶な模様。ちなみに私は届いていない側である。
料金プランについて
ストリーミングオンリーの「Studio」プランでは、「ソロ」「デュオ」「ファミリー」すべてで昨年発表された金額と変わっておらず、昨今の円安を考えると非常にお得感のある価格設定になっている。この点については素直に嬉しい。
一方、Qobuzならではの特徴でもある、ダウンロード購入で割引が受けられる「Sublime」プランは、消えた。現時点で、これについての公式のアナウンスは一切ない。
なぜ「Sublime」プランがなかったことにされたのか、色々と想像はできるが、とりあえず公式の説明が出るのを待ちたい。
音源のラインナップはどうよ?
「いかにサービスのラインナップが充実したところで、あらゆるユーザーの要望を完全に満たすことは絶対にない」を前提として、私の印象は、
・明らかにTIDALよりもラインナップは少ない
・え、これってQobuzにはないのか……という音源も少なからずある
・私の聴く範囲ではあまり困らないレベルのラインナップではある
という感じで、いまのところ「致命的な不満はない」といったところか。
参考までに、TuneMyMusicでTIDALからQobuzにライブラリを移行した際の様子を載せる。
とりあえずTIDALから無料版の上限である500個のアイテムを移行してみて、Qobuzに移行できたのは465個だった。『ANNO: Mutationem』のサントラがないのはまぁ仕方ないとして、Julian Lageもないのか……とはなった。
権利者として見た、ダウンロードストアにおけるとんでもない不具合
私は楽曲『白いノートブック』の制作者/原盤権者として、ビクターエンタテインメントを通して、e-onkyoにおいて音源を販売していた。
当然Qobuzへの移行後はQobuzで『白いノートブック』を販売する流れになっていた。しかし、いざプレオープンになって楽曲のページを見てみたら、
なんで44.1kHz/16bitしかないの? しかも「ダウンロード不可」ってどういうこと?
それでいて「曲を購入する」をクリックすると普通にカートに追加できるし、ここではハイレゾになってるってどういうことなの?
という具合で、まともな販売が成り立たない状況となってしまっている。
この辺りは現在ビクターエンタテインメントも含めて確認している最中なのだが、ひとつ確かなのは、Qobuzへの音源(ファイル)の納品は確実に192kHz/24bitで行っている(というよりそれしか出していない)ということ。となれば、この妙な表示はQobuz側の不具合ということになる。
幸いにして、メインとなるストリーミングについては間違いなく192kHz/24bitで流れてきているので、その点は安堵しているのだが、
音源の権利者としてはまさに「出鼻を挫かれる」事態である。
もしかしたら、『白いノートブック』以外にも同じ状況になっている音源が少なからずあるのではないだろうか……?
ネットワークプレーヤーや再生ソフトとの連携
私の環境でアレコレ試してみたところ、特に問題なく使えている。
Bluesound NODE(2021) / BluOS Controller
日本から、正式に、数々のネットワークオーディオ製品で、ストリーミングでロスレス/ハイレゾクオリティの音楽が聴ける!
もうそれだけで素晴らしい。
日本におけるQobuz対応製品をまとめた素敵な記事がPhile-webにあるので、そちらも参照。
Qobuzのストリーミングを聴くためには何が必要?対応ネットワークオーディオ機器を一挙紹介 - Phile-web
で、問題は……
Roonとの連携???
最も望まれている要素かもしれない、「Roonとの連携/統合」だが、
という具合で、現状では、ユーザーが求める「RoonとQobuzの連携」は機能していない。
プレオープンの前の時点で、運営はこうなることはわからなかったのか? 多くのユーザーが「なんだこりゃ」と声を上げるのももっともで、なぜこんな状態でオープンしたのか、はっきり言って理解に苦しむ。
ちなみにTIDALではこんな具合である。きちんとRoonと連携して使える。
なお、別の場所でQobuzにアルバムを登録するなどすれば、「Roonのライブラリ」としては統合されるし、再生もできる。
なぜこんなことになっているのか? という話に関して、
Important: Roon is no longer able to access and integrate Qobuz free trial accounts. You will need a full streaming account for the integration with Roon to sync.
現状のRoonの仕様では「Qobuzのfree trial accountではRoonとの統合ができない」ということであり、日本でのQobuzスタートにおける「1か月の無料期間」がこれに該当しているのではないか、と考えられる。
しかし、確証はない。公式に何かアナウンスがあったわけではないので、現時点ではあくまでも推測ということで捉えていただきたい。
上にスクショも貼った通り、現状でも一応「Roonのライブラリ」には統合できているわけで、「No Results」「Empty」になってしまうのはQobuz側の問題という可能性もある。
いずれにせよ確かなのは、私を含めた大多数のユーザーが「Roonとの連携」という点で大きくつまづいていること、そしてこうなることを知っていたにしても知らなかったにしても、Qobuzがそのまま日本でオープンしたことである。
上記の推測が正しければ、日本のQobuzユーザーは「1か月の無料期間が終わるまではまともにRoonと連携できない」という、まさしく画竜点睛を欠く展開になってしまう。
【10月25日追記】Roonと連携できるようになった
「25日の午後からいけるようになったよ!」との情報提供があり、RoonにおけるQobuzの「NEW RELEASES」「PLAYLISTS」「TASTE OF QOBUZ」「MY QOBUZ」が機能していることを確認した。
MY QOBUZ(アーティストとトラックが空なのは単に私が登録していないため)
というわけで、100%完全にというわけではないにせよ、QobuzもRoonとの組み合わせで(TIDALのように)使えるようになった。
結局何が原因だったのかは相変わらず公式のアナウンスがないので不明だが、結果的に&喜ばしいことに上記の推測は外れる形となり、QobuzとRoonの連携/統合が機能するようになった。
よかった、実によかった。
【10月25日さらに追記】Qobuz Japanのポスト
相変わらず公式サイトには何のアナウンスも掲載されない一方、Qobuz JapanのXアカウントで以下のポストがされた。
【不具合解消のお知らせ】
サードパーティー製プレーヤーのRoonでQobuzが使用できないというお問合せをいただいておりましたが、Roon側より問題が解消した旨、報告がありました。
お客様にはご迷惑をおかけし申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。— Qobuz Japan (@QobuzJP) October 25, 2024
とのことで、実際に何が起きていたのかはさておき、オープン時点の問題の原因はどうやらRoon側にあったようだ(少々微妙な書き方にも見えるが)。
QobuzとRoonの連携/統合の問題は、とりあえずこれにて一件落着と言っていいだろう。
まとめ
冒頭に書いたように、まずはQobuzのスタートを祝おう。喜ぼう。
日本から、正式に、数々のネットワークオーディオ製品で、ストリーミングでロスレス/ハイレゾクオリティの音楽が聴ける!
私は心から祝う。大喜びする。
その後で、こうも思う。
ほぼ1年も延期しておいて、なんだこれ。