オーディオならではの高音質と、音楽再生における快適さ。その完全な両立。
『ネットワークオーディオ』に、私はオーディオの未来を見出した。
しかし……
そもそもネットワークオーディオとは何か?
PCオーディオとネットワークオーディオは別物なのか?
システムを構築するために何が必要なのか?
音源はどのように管理すればいいのか?
タグって何だ?
表示される曲名がおかしいぞ?
曲順がアルバム通りに並ばないぞ?
アルバムアートが汚いぞ?
よく目にするけどUPnP/DLNAって何だ?
サーバーって何だ?
プレーヤーって何だ?
コントロールアプリって何だ?
一曲で再生が止まるけどどうなってんの?
LINN DSが登場してから、そして日本において本格的にネットワークオーディオという領域が生まれてから、既に長い時間が経った。
その一方で、ユーザーがアクセスできるノウハウ、本当に必要な情報の提供と蓄積が一向に為されない様を、私はずっと見てきた。
数多の疑問や課題がある一方、回答も、解決策も、ほとんど提示されてこなかった。
たとえ有用な情報があっても、それらは得てして「点」でしかなく、「全体像」の提示には至っていなかった。
それどころか、誤解だらけの頓珍漢な評論、さらに実感や実態を伴わない無責任な売り文句ばかりが氾濫し、何が良くて何が悪いのかさえまるでわからない、という悲惨な状況に陥っていたのである。
これでは普及も盛り上がりも何もあったものではない。
LANケーブルで音が変わるとかWAVとFLACで音が違うとかハブの導入が音に効くとか何とかって大騒ぎする前にやることがある、と言っているのである。
ネットワークオーディオという新たな領域が浸透・普及・発展するためには、音源の管理運用からシステムの構築、実際の音楽再生に到るまで、本質的なノウハウの蓄積と提供が絶対に必要だ。
ほんの表層を撫でただけで終わってはいけない。枝葉末節に走りすぎてもいけない。
どんなに困難でも、どんなに面倒でも、いつかは誰かがやらなければならない。
とはいいつつ、他の誰かがやってくれると期待したところで埒が明かない。
というわけで、私がやることにした。
【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】
このサイトを立ち上げる以前からネットワークオーディオに関する情報発信を行っていたが、より充実した形でノウハウの集約を意図したのが【音源管理の精髄】と【ネットワークオーディオTips】である。ここで書いていく内容は、私自身がネットワークオーディオを始めて以来試行錯誤を繰り返し、ひとつひとつ蓄積してきたものだ。
今までの実感、経験として、現に情報やノウハウにアクセスできず途方に暮れているユーザーは多い。ユーザーだけでなく、総じてオーディオ業界そのものが未だに右往左往を続けていると言ってもいい。
ネットワークオーディオに大きな可能性を見出した者として、このような状況はとても放ってはおけない。少なくとも私は「自分だけ分かっていればいい」などとは決して思わない。これから始めるユーザーが経験する必要のない苦労を回避し、現時点で苦闘しているユーザーが最短で最適解に辿り着くために、私は出来る限りのことをしたい。ブログに限らず、伝える手段や機会があるのなら最大限に活用したい。
最終的には、ここで書いた種々のノウハウが、オーディオ業界であまねく「そんなことは言うまでもなく分かっている!」という状態、共通理解になってほしいと願っている。全体の底上げがなされれば、きっと今よりも、ずっと素敵な状況になるはずだ。
出し惜しみはしない。
【音源管理の精髄】と【ネットワークオーディオTips】は、『デジタル・ファイル音源の管理』から始まる。これはネットワークオーディオに先立つ、ファイル再生そのものの根幹を成すものだ。
そして、音源を最大限活用する方法、ファイル再生の魅力を最大限高める方法として、『ネットワークオーディオ』を提案する。音源をきちんと管理してライブラリを構築するという前提なくして、ネットワークオーディオの恩恵を享受することはできない。
なお、ここで私が定義する『ネットワークオーディオ』とは、今日のオーディオ業界で一般的に言われているそれとは異なる、より包括的な概念である。この辺りについては個別記事(ネットワークオーディオの本質)を読んでもらいたい。
居ながらにしてすべてを見、すべてを操ることで得られる、音楽再生における筆舌に尽くしがたい快適さ。
これこそ、ネットワークオーディオの真のメリットであり、私が多くの人に味わってもらいたいと願ってやまないものだ。
さて、ネットワークオーディオは簡単ではない。
ただ、「ネットワークオーディオのシステムを構築して音を出す」だけなら、今(※)となっては、簡単と言ってしまっていい。
普段からPCやスマートフォン/タブレットに触れている人なら、ネットワークオーディオを実践するハードルはますます低くなる。
(※)2010年代後半、ネットワークオーディオを取り巻く環境は劇的に改善した。
いきなり「簡単ではない」などと言うと、その時点でネットワークオーディオの間口を狭めてしまうおそれがあることは承知している。
しかし、ネットワークオーディオに関して、今まで様々な媒体で「簡単」「便利」「快適」といった言葉が無造作かつ安易に使われてきた状況を思えば、軽々しくそんな言葉を使えるほど、私は無責任ではない。
2022年現在、もはやネットワークオーディオは「音楽を聴くスタイル」として至極当然のものとなった。
ネットワークオーディオは決して意味不明でも理解不能でもない。
きちんと順を追っていけば、ネットワークオーディオは必ず理解・実践できる。
だからこそ、全体像と各要素の双方を的確に、かつ分かりやすく伝える必要がある。
今も昔も、おそらく多くの人にとって最もわかりやすいであろうネットワークオーディオのシステム/形態とは、ネットワークオーディオプレーヤーとNASを買ってきて、無線LANルーターとLANケーブルで繋ぐというもの。
この場合、接続さえ間違わなければ機器同士は即座に認識し合い、音源を事前に用意しておけば(※)、音楽再生もすぐに行える。特に難しいところはない。
(※)音楽ストリーミングサービスの浸透と充実により、自分で音源を用意する必要性すら相対的に減りつつある。
しかし、単に「音は出る」という状況から一歩進んで、ネットワークオーディオの真価たる「快適な音楽再生」を実現するためには、音源の段階から理解すべきこと、把握すべきこと、実践すべきことは多岐に渡る。どのレベルまで追求するかは人によって異なるにせよ、必要なノウハウそのものは厳然と存在する。
必要な事柄をきちんと理解し、実践した先にこそ、ネットワークオーディオがもたらす真の福音が待っている。
繰り返すが、音質と快適さの両立を叶えるものがネットワークオーディオである。
ただ、数ある再生スタイルの中で、なぜネットワークオーディオを選択するのかということを考える時、その答えはどうなるだろう。
オーディオシステム全体から見れば、ネットワークオーディオとはあくまで再生システムの範囲に留まるものであって、言うまでもなく、それだけで最終的な再生音は決まらない。
単にハイレゾを含むデジタル・ファイル音源を再生したいというだけなら、狭義のPCオーディオで事足りる。別にネットワークという要素が入り込む必要はない。
単に高音質を追求したいというだけなら、レコードプレーヤー然り、CDプレーヤー然り、他にいくらでも選択肢がある。別にネットワークオーディオでなければならない必然性はない。他の方式に比べてネットワークオーディオには音質的な優位性があるとか、USBよりもLANを使うほうが音が良いとか、そんなことを言うつもりは毛頭ない。
また、ネットワークオーディオのシステムに関して音が良いと思っても、それは使ったプレーヤーの音が良かったのであり、アンプの音が良かったのであり、スピーカーの音が良かったのであり、システムトータルの音が良かったに過ぎない。「ネットワークオーディオだから音が良かった」わけではない。
結局のところ、単に「音が良い」というだけでは、ネットワークオーディオを実践する理由とはならない。
もちろん、純粋に素晴らしい音質のネットワークオーディオプレーヤーが存在し、その機器を使いたいがためにネットワークオーディオをはじめるというなら、それはそれでオーディオ趣味として至極当然の姿と言えよう。
しかし、「快適さ」は違う。
ネットワークを活用したコントロールで実現する「快適な音楽再生」は、他のスタイルにはない隔絶した魅力となる。
音質は、いかにセッティングを突き詰め、工夫を重ねたところで、機材や環境構築のためにどれだけ投資できるかにも大きく左右される。高額なものが無条件で良いとは言えないにせよ、「安くて高品質」にも限界はある。こればかりはどうしようもないし、その「安くて高品質」な製品を買うためにだって、ある程度の資金は必要になる。
一方で、「快適な音楽再生」を実現するための投資は「既にあるもの」を利用すればほとんど必要なく、ネットワーク環境の構築が必要な場合でも、一般的なオーディオの観点からすれば、驚くほど安く済む。
快適な音楽再生環境を構築するために高額な機器を購入する必要はないし、高額な機器を購入したところで快適な音楽再生が保証されるわけでもない。
総額1000万円のシステムでも総額1万円のシステムでも、オーディオ機器に投資した金額とはまったく無関係に、ネットワークオーディオの実践で快適な音楽再生は実現する。
「ネットワークを用いて再生機器からコントロールを独立させる」ことで、かつてないほど快適に音楽を聴けるようになる。
そしてこれが、ネットワークオーディオは生粋のオーディオマニアだけでなく、音楽を愛するすべての人々にとって真に魅力的だと信じている理由でもある。
音質以前に、音楽を聴くという行為は誰にとっても平等だ。
決して従来のディスクをベースにしたオーディオの形を否定しているわけではない。
ネットワークオーディオにおいて、ディスクという物理メディアそのものを再生に使わなくなるのは確かだ。それを「否定」と捉えられてしまうのだとしたら、反論する余地はない。
しかし、ネットワークオーディオに先立つ「ファイル音源の大元」であることを考えれば、長きに渡って積み上げてきたCDの価値はいささかも減じていないのである。
オーディオが「いい音で聴く」ためのあらゆる営為だとすれば、「いい音で」の部分にばかり関心が向けられ、「聴く」という部分があまりにもないがしろにされていると感じる。
オーディオ趣味において、音楽再生という行為は聴くことと同義である。
この部分がもっと便利・快適になれば、他ならぬ音楽に触れる機会、音楽との繋がりは最大化する。
快適な音楽再生、快適に音楽を聴けることこそがネットワークオーディオの本懐であり、私が伝えたいのもまさにこの点である。
オーディオ業界は音質を至上とする一方で、あまりにも多くのものを犠牲にしてきた。
それが結果的に何をもたらしたかは、昨今の業界を取り巻く状況を見れば明らかだ。
音質は、まずは快適に音楽を聴ける環境を構築してから、ゆっくりじっくり窮めていく、それくらいの姿勢でもいいのではなかろうか。
ネットワークオーディオにおいて、高音質の追求と快適な音楽再生は、いともたやすく両立できるのだから。
そしてそのために、私が五里霧中で七転八倒しつつ必死に積み上げたノウハウがどのような形であれ役に立つのなら、ネットワークオーディオに大きな可能性を見出した者として、喜びに堪えない。
【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】