知りたいのはまさにコレ。違う?
LINN DSを使ってそろそろ四年になる。
「快適な音楽再生」という夢を叶えるために、ネットワークオーディオプレーヤーに求められるものが何なのか、きちんと把握している自信はある。
音質を気にするのは最後。
いかに快適に音楽が聴けるか、重要なのはそこである。
そこんところを検証する。
なお、この記事ではLINN DSをネットワークオーディオにおける偉大なリファレンスとして扱い、音楽再生機器として、LUMINははたしてどこまでLINN DSに追随できているか、ということに焦点を当てている。
LUMIN独自の諸機能については別の記事で扱う予定。
○検証環境
・プレーヤー
MAJIK DS-I Davaar 12 (4.12.357)
LUMIN A1(Firmware 5.00)
・ルーター
BUFFALO WZR-HP-G450H
・サーバー&サーバーソフト&ライブラリ
QNAP TS-119(Version 4.0.2)
TwonkyMedia(Version 7.2.5.2.0)
アルバム614枚
ほぼすべての音源に1536×1536のアルバムアートを埋め込んだ猛烈に重いライブラリ
・コントローラー
iPad Air(iOS7.1)
・コントロールアプリ
LINN DS:Kinsky(Version 4.3.15)/ ChorusDS HD(Version 1.2)
LUMIN:LUMIN App(Version 2.07)
同じルーターにMAJIK DS-IとLUMIN A1を繋ぎ、ルーター以前を完全に同じ環境にしたうえで検証を行った。
↓検証ここから
○純正コントロールアプリ
LINN DS:有り・無料(Kinsky、しかし有料のChorusDSの方が出来が良い)
LUMIN :有り・無料(LUMIN App、しかしiPad版のみ)
○ネットワーク接続に要する時間/電源オフからの復帰の速さ
アプリで電源オフ→電源オン→再度アプリで操作可能になるまでの時間。
LINN DS:一瞬
LUMIN :一瞬
どちらも一瞬である。再接続/操作可能になるまで待たされる感はない。
なお、KinskyでDSの電源をオフにしたらLUMINの電源まで一緒にオフになってしまった。
○挙動/レスポンスの速さ
アプリ内の操作において、
アルバム一枚の全曲をプレイリストに入れる
↓
再生
↓
音が出るのを確認
↓
プレイリスト消去
↓
別のアルバムの全曲をプレイリストに入れる
↓
スキップ(曲送り)を2回
↓
それぞれ音が出るのを確認
↓
一時停止
↓
再生
↓
音が出るのを確認
↓
プレイリスト消去
というように、日常的な操作を想定した以上の流れを3回行い、所要時間を計測した。
使用したアプリはLINN DS:ChorusDS HD、LUMIN:LUMIN Appである。
LINN DS
1回目:40.1秒
2回目:42.9秒
3回目:41.6秒
平均:41.5秒
LUMIN
1回目:30.8秒
2回目:32.2秒
3回目:31.1秒
平均:31.1秒
実測した数字的にも、体感的にも、LINN DSよりもLUMINの方がキビキビと動作する印象を受ける。
アプリによる挙動の差もあるとは思うが、ハードウェアに起因する動作速度という点において、LUMINはLINN DSに決して劣らない。
なかなか感動的な結果である。
○複数のサンプルレートへのスムーズな切り替え
プレイリストの中に複数のサンプルレートの音源(44.1kHz/16bitだったり192kHz/24bitだったり)が含まれていると、サンプルレートが切り替わる際、内部的な処理が間に合わず? ノイズが出たり、曲の頭が欠けてしまう場合がある。ちなみにMAJIK DS-Iからデジタル出力したDAC2 HGCではこのような場合、曲の頭が欠けてしまう。
LINN DS:まったく問題なし
LUMIN :現在再生中の音源とはサンプルレートが違う音源が次に再生される際(44.1kHz/16bit→96kHz/24bitなど)、「プツッ」というごくごく小さな音がする
頭欠けはなし
LINN DSではそもそもこんなことを意識することはなかった。
ただ、外部DACを入れたり、別のネットワークオーディオプレーヤーを使ってみたりすると、こんな問題もあるんだなあと気が付いた。
LUMINも気にはならないが、ファームウェアのアップデートで完全な無音切り替えを実現してほしい。
○On Device Playlist/再生中のプレイリストを機器本体に記憶
LINN DS:まったく問題なく機能
LUMIN :まったく問題なく機能(DSDも問題なし)
「快適さ」を語るなら、これがないと話にならない。
とはいえ、LINN DS以外でコレを実現しているネットワークオーディオプレーヤーはそうそうあるものではない。その点で、LUMINは間違いなく頭一つ抜け出し、LINN DSと同じ土俵に立っている。
そもそも「On Device Playlist/再生中のプレイリストを機器本体に記憶」って何だ? となる人は、コチラの記事を参照。
○対応フォーマット(公式HPより)
LINN DS:FLAC、WAV、ALAC、AIFF、AAC、MP3、WMA、VORBIS
LUMIN :FLAC, Apple Lossless (ALAC), WAV, AIFF, MP3, AAC (in M4A container),DSF (DSD), DIFF (DSD), DoP (DSD)
お互いこれでもかというくらいに対応の幅は広いが、LUMINはDSDにも対応している。
○対応サンプリング周波数/bit数
LINN DS:192kHz/24bit
LUMIN :384kHz/32bit DSD:2.8MHz
数値的にはLUMINほうが上だが、384kHz/32bitの音源なんてあるの? という……
ただし、再生できるに越したことはない。
○アップサンプリング
LINN DS:すべての音源を384/352.8kHzにアップサンプリング(公式HPの表記による)
LUMIN :アップサンプリングは192kHz/24bitまで、ただし96kHz/24bitまでの音源をDSDに変換可能
アップサンプリングの数値的にはLINN DSのほうが上だが、LINN DSが強制的にすべての音源をアップサンプリングしているようなのに対して、LUMINはユーザーが明示的にアップサンプリングをするか否か選択する形になっている。
○ギャップレス再生
LINN DS:当たり前のごとく機能
LUMIN :当たり前のごとく機能(DSDも問題なし)
まぁ、一応。
○シークへの追従性
LINN DS:完璧
LUMIN :完璧
どちらも非常にスムーズ。
○本体ディスプレイの輝度調節
LINN DS:有り(100段階調節)
LUMIN :有り(4段階調節 Bright・Normal・Dim・OFF)
LINN DSが至れり尽くせりというだけで、LUMINもこれだけあれば十分だろう、という感じ。ただし、「Dim」にしてもあまり暗くならない気がする。
○汎用コントロールアプリへの対応
LINN DS:ほぼすべてのアプリで問題なく動作(DiXiM DMCは駄目)
LUMIN :問題なく動作を確認したのはSongBook Lite・SongBook’11 UPnP・PlugPlayer
汎用コントロールアプリへの対応力という意味ではLINN DSが優れている。とはいうものの、LUMIN Appは極めてよくできたアプリであり、他のアプリを使う必要性を(iPhoneを使う場合を除き)感じないため、問題にはならない。
なお、LUMIN AppがLINN DSにも使えるのでもしかしたらと期待していたのだが、残念ながらChorusDSはLUMINには使えなかった。プレーヤー一覧で表示されるし、選択もできるのだが、そこから先へ進めない。
○PC側での設定機能
LINN DS:有り(Konfig)
LUMIN :無し(ブラウザのアドレスバーにIPアドレスを打ち込んでも無反応)
そのかわり、LUMINはコントロールアプリ(LUMIN App)内に詳細な設定機能を有している。その辺はまた後日。
○アプリ等での表示名の変更
LINN DS:可能(Konfigにて)
LUMIN :可能(LUMIN Appにて)
まぁ、一応。
○結論
「快適な音楽再生」という点において、LUMINはLINN DSとほとんど同等の機能を有している。
実際、DSからLUMINに切り替えて三日ほど暮らしてみたが、使い慣れたChorusDSが使えないという一点を除き、LINN DSと比べて「快適さ」はほとんど低下していない。LINN DSからLUMINに替えて違和感を覚えたことは一度もない。
さらっと書いてはいるが、これはネットワークオーディオ史上における大事件と言っても過言ではない。ついに、ついに、「快適さ」においてもLINN DSと比肩し得るプレーヤーが登場したのである。
ところどころ詰めの甘さも見受けられるが、それは今後のファームウェアのアップデートでどうにでもなるだろう。
LUMIN、その名のとおりネットワークオーディオを照らす光となるか。
続く!