【レビュー】M2TECH Young MkIV

 かつて「hiFace」というスティック型のUSB DDCがあった。

 ファイル再生がいよいよ本格化を始めた当時、ドライバやらなにやらの問題からUSB接続で96kHz/24bitまでしか対応しないUSB DACが多かったなかで、hiFaceは192kHz/24bitまで対応。そして同軸デジタル出力によって、様々なDACで当時の(ほぼ)上限値だった192kHz/24bitのハイレゾ音源を楽しめる環境を作り出した、そんな製品だった。そりゃー大ヒットしていたし、当時のUSB DACを買った人でも、結局hiFaceを介して同軸デジタルで接続していたなんて人も少なからずいるはずだ。ちなみにhiFaceは現在も「hiFace Two」となって販売継続中。

 というわけでhiFaceを手掛けたM2TECHというイタリアのメーカーは、私にとって「PCオーディオに強いブランド」というイメージで、今までのラインナップを見てもその印象から大きく外れることはなかった。

 そんなM2TECHは現在「Rockstar」シリーズをラインナップしており、単にPCオーディオ向けというよりはもっと幅広い用途にマッチする、コンパクトなサイズの製品が中心となっている。

 今回、先にレビューしたPro iDSD Signatureと同時にM2TECHのUSB DAC/プリアンプ「Young MkIV」もお借りしたので、再び「デスクトップオーディオに使う本気のDAC」という観点を中心にレビューしたい。なお、Young MkIVの価格は税込み385,000円。最近値上げされたPro iDSD Signatureとは少々値が離れてしまったが、それでもエントリークラスのDACとは一線を画した立ち位置であることに変わりはない。

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外観・仕様

 Young MkIVのサイズは幅200 x 奥行き200 x 高さ50mmで、とりあえずハーフサイズのカテゴリに入ると思うが、この価格帯の製品としては非常にコンパクト。

 フロントパネルはアクリルで、ディスプレイの表示も含めて徹底的にシンプル。ちなみにディスプレイはリモコンで消灯可能。フロントには6.3mmヘッドホン出力もある。

 厚みのあるアルミで外側をぐるりと覆う、シンプルかつ強度に優れた合理的なデザインとなっている。

 底面。申し訳程度のポッチ足があるのみ。一方で平坦なので、インシュレーターなりなんなり、対策をしようと思えばやりやすくはある。

 背面。USB DACとしての基本的な入出力を備える。他の特徴として、デジタル入力としてI2S(HDMI)と、アナログRCA入力があることが挙げられる。前者は対応製品との組み合わせで音質的に凝った接続が、後者は本機を純粋なプリアンプとして使うことが可能になるため、使用の幅が広がる。また、本機は外部電源仕様であり、電源アダプターが付属する。

 USB DACとしての仕様はリニアPCM768kHz/32bit・DSD512対応と万全で、MQAのフルでコードにも対応する。

 かなり立派なリモコンも付属する。

機能・運用

 Young MkIVはDSDフィルターの切り替えやTHD+N・SN比の調整、ボリューム挙動の変更等が可能だが、実使用上それほど機能面で気にするようなものはないという印象。それだけシンプルな使い勝手の製品ということでもある。RCA・XLRで個別に基準レベルを設定できるという点は、組み合わせるシステム次第では有効に使えるだろう。

 本機は非常にコンパクトなので、机の邪魔にならない位置に置くことも余裕と言える。

 デスク以外にラックを使えるデスクトップオーディオのセットアップの場合でも、Young MkIVはコンパクトなので導入はいたって楽に行える。「Rockstar」シリーズは基本的に同様のサイズの製品で揃えられているため、組み合わせて置く場合でもスペースファクターに優れる。

かつて「機材単体10万円までを目安に」ということで導入したのに、
デスクトップオーディオのリミッターを外されたばかりに無差別級試合に駆り出されるNEO iDSD……

音質

 音質評価はデスクトップシステムにて、常用しているNEO iDSDと聴き比べる形で行った。なお、電源は付属のアダプターではなく、iFi audioのiPower Eliteを組み合わせて聴いた。このクラスの製品なのだから、組み合わせる電源には可能な限り高品質なものを使いたいところだ。

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 「高性能」をストレートに叩き付けてくる感のあるPro iDSD Signatureを先に聴いていたということもあってか、Young MkIVは一聴して落ち着いた印象を受ける。空間が前よりも後方に展開するタイプだということもこの印象を強めている。

 Young MkIVの再生音は全体的に中低域が豊かで、ベースラインの存在感はPro iDSD Signatureを上回る。Neil Youngの「Herart of Gold」では神経質にならないふくよかさ、泣きのハーモニカを筆頭に各楽器の情感も繊細に表現してくれる。無論、単にゆったりまったりしただけのDACではなく、情報量、空間の広がり、音の分離感、細部の描写といったオーディオ的な要素も、価格から期待されるレベルにはじゅうぶんに優秀。

 が、Pro iDSD SignatureのようにNEO iDSDと「断絶」レベルで音に差があるかというとそれほどでもなく、Young MkIVはある意味NEO iDSDを順当にグレードアップさせたようにも感じる。音の傾向も大枠では似ている。

 いずれにせよ、Young MkIVもPro iDSD Signatureと同じく、デスクトップオーディオという厳しい環境下でも、DACとしての性能差をはっきりと聴かせるだけの能力を持っていることは確かである。

 アナログ入力もいざという時に活用できそうだし、クリティカルリスニングではなく、「普段使いするDAC」としては、Young MkIVの穏やかな音調はPro iDSD Signatureよりも好適と言えるかもしれない。

 特に中低域が豊かで色んな曲を楽しく聴けるというのは本気の美点であり、それは「PCと組み合わせる」際に存在感の大きなソースとなるYouTubeなど、「ロッシーゆえにしぼんだ音源」を聴く際にうまい具合に作用する。

まとめ

 気合いを入れてI2S接続を試そうというのでなければ、Young MkIVは見た目同様シンプルなDAC/DACプリであり、必要十分な機能とクラスに違わぬ優れた音質を兼ね備える。

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 上の記事でも書いたように、とりあえずハーフサイズ程度の大きさの機器であれば、机の上に直接置くことも視野に入るし、製品の数自体もそれなりにある。しかし、いかんせんそうした機器はエントリークラスやもうちょい上の価格帯に集中しているのが現実だ。高額な機器になればなるほど大きく&重くなる傾向を考えると、ある意味これは仕方のないことかもしれない。

 だからこそ、限られた設置スペースという制約のなかでもより上位クラスの製品を求めるオーディオファンにとって、Young MkIVは貴重な選択肢のひとつとなろう。究極の音質追求というよりは日々の音楽鑑賞を豊かなものにしたい、と考える人ならばなおさらだ。
 
 

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