canarino Filsはまだ何度か変身を残していると書いたが、その中で最も重要な時がやってきた。
付属する電源アダプタは決して悪いものではないのだろう。
ただ安定してPCが動作すればいいのだから。
しかし、私がcanarino Filsに求めているのは「PCの汎用性と機能性を持ったオーディオ機器」という在り方である。
QNAP TS-119に付属したスイッチング電源アダプタは、「ピー」という耳に聴こえるレベルの決して無視できないノイズを発していた。あくまでもそれを何とかしようとアナログ電源を導入したところ、QNAP TS-119、LUMIN L1では明らかな音質の向上が得られた。canarino Filsの試作機でも、fidelixの電源は巨大な威力を発揮した。
せっかくのオーディオ用PCなのにオーディオ的な配慮とは無縁のスイッチング電源。画竜点睛を欠くとはまさにこのことだ。
そんなこんなでアナログ電源をオーディオ用PCと同時に導入すること自体はずーっと前から考えていたのだが、実際にはエーワイ電子/EL SOUNDののアナログ電源を導入することに決めた。私のcanarino Filsを動かすに足る12V5A仕様が製作可能なこと、そして同社の12V3Aアナログ電源が約3年間の使用(サーバーとの組み合わせなのでほぼ常時)で盤石の安定性を証明したことが決め手である。
ところがどっこい、先方に問い合わせをしたのとほぼ同時期に同社のラインナップがモデルチェンジされ、12V5Aアナログ電源は筐体にファンが搭載されてしまった。
エーワイ電子/EL SOUND 汎用アナログ電源 DC12V5A Improved
NASの時代から、音質云々は置いといて純粋に「カリカリ」という動作音が嫌だからHDDではなくSSDを使ってきた。
そして「静寂感だのS/Nだの言う前にまず轟々と音を立てているファンを何とかしろ!」という発想から、私の中ではファンレスであることが厳格なオーディオ用途にPCを使う際の絶対条件だった。
それなのに、いくら50cm離れれば回転音は聞こえませんと書かれていても、いまさらファン搭載というのは……
……やはり受け入れがたい!
というわけで、ありゃこりゃ話して、ファンレス仕様で特注をお願いした。
ファンレスを実現するために筐体は大型化。
サイズは230×230×70mmで、重量は風呂場の体重計で測ったら3キロもあった。
ファンレス筐体、様々なソフトが十全に動作し得るスペック、SSD、アナログ電源。
canarino Filsはまだ変身を残しているとはいえ、オーディオ用PCに絶対的に必要な要素は揃った。ハブだって万全だ。
現状最もCPUを働かせるであろう、Roon ServerによるDSD256再生をぶっ続けで行ってもcanarino Fils本体同様ほんのりと温かくなる程度で、今のところ発熱も問題なさそうだ。
PCで再生ソフトを走らせてUSB DACと組み合わせる狭義のPCオーディオ≒USBオーディオであれ、単体サーバーとネットワークオーディオプレーヤーを組み合わせる狭義のネットワークオーディオであれ、これからは音質と機能の両面でcanarino Filsが判断基準/比較対象となる。
これでようやく、オーディオ好きとしての良心の呵責を感じることなく、狭義のPCオーディオの文脈でも音質を語れるようになった。
音の詳細は続く単体サーバー編の記事に譲るが、端的に言って、別物である。