サーバーソフト。
ライブラリ機能やネットワーク共有・配信を司るソフトであり、サーバーをサーバーたらしめているものの正体。
ユーザーが明示的に「サーバーソフト」として使用可能なソフトの大半がUPnPベースのため、ネットワークオーディオの文脈で単純にサーバーソフトと言った時、もっぱらUPnP/DLNA対応サーバーとして機能するソフトを意味する思って差し支えない。
それ以外の、PCの再生ソフトやMPDなどの「サーバー」と「プレーヤー」双方の機能を持つソフトでも、他のプレーヤーへの配信も可能なサーバーソフトとして機能する場合がある。
というわけで、この記事では基本的にUPnP/DLNA対応のサーバーソフトを扱うが、後述する「ナビゲーションツリー」は、UPnPベースのシステムに限らず、あらゆるファイル再生のシステムに共通する概念である。
必要に応じて以下の記事を参照されたし。
そもそもUPnP/DLNAって何だ?
DLNAにおけるデバイスクラスについて
ネットワークオーディオの三要素――『サーバー』・『プレーヤー』・『コントロール』
UPnP/DLNA対応のサーバーソフトであれば、UPnP/DLNA対応のプレーヤーはもちろん、OpenHome対応のプレーヤーとも自由に組み合わせて使うことができる。
システムの中でサーバーがハードとソフトの両方で独立し、さらに「自由に組み合わせ可能」ということがUPnPベースのシステムの大きな特徴であり、メリットにもデメリットにもなり得る。
さて、ここからは「サーバーソフトにはこんなのがある」というのを紹介する。
重複するものは除き、上から、
・Twonky
――(T)のアイコン。おそらく最もメジャーなサーバーソフト。サーバーの名称も、アイコンも、Twonkyのバージョンが上がるごとに変化してきた。
・MediaMonkey Server
――猿のアイコン。おなじみの再生ソフトMediaMonkeyのUPnPサーバー機能。
・Windows Media Player
――Windowsのアイコン。実はWindows7のMedia Playerに備わっているサーバー機能。
・Asset UPnP
――ディスクから電波? のアイコン。しばらく見ないうちに随分アイコンがダサくなった。昔は山というか三角形というか、そんな具合だったのに。
・MinimServer
――楽譜&音符のアイコン。LUMINとの絡み、DSD配信が可能ということで最近名前を見るようになった新鋭サーバーソフト。
・foobar2000 Media Server
――宇宙人のアイコン。おなじみの再生ソフトfoobar2000のサーバー機能。要追加コンポーネント。
・JRiver Media Center
――再生ボタンとかがくっついた丸っこいアイコン。マイナーな再生ソフトJRiver Media Centerのサーバー機能。DSD配信が可能だとかなんとか。
手元にあるものをパッとかき集めただけでもこんなにある。
ちなみに、この中で「純粋なサーバーソフト」はTwonky・Asset UPnP・MinimServerの3つで、それ以外は「サーバーソフトとしても機能する再生ソフト」である。
それでは、ひとつひとつ見ていこう。
・アイコンがそれぞれのサーバーソフトを示すのはわかった。じゃあ「PC」とか「4th」ってのは何だ?
→サーバーの「名前」。ひとつひとつ自分で設定する。たとえば「逆木一の巣」とか、「伏魔殿」とか、「パンデモニウム」とか、ノリと勢いでいかようにも名づけられる。
・foobar2000とかMediaMonkeyってPCの再生ソフトだったような?
→その通り。しかし、彼らはUPnPサーバーの機能を備えているため、サーバーソフトとしても機能する。この手の再生ソフトの機能を使ったPCのサーバー化は、サーバーを手に入れる最も手っ取り早い方法である。
・Twonkyのアイコンが三つもあるのはどういうこと?
→「Twonkyが走っているサーバー(機器)が三つある」ということ。この場合、デスクトップPC(PC)、ノートPC(Note)、NAS(TwonkyMedia[NASC00...])という具合に。
・ということは、サーバーソフトの数だけ機器があるってこと?
→否。現在私のシステムでサーバーになっている機器はデスクトップPCと、ノートPCと、NASの三つ。
NASはTwonkyのみ。
ノートPCはTwonkyとWindows Media Playerの2種。
デスクトップPCにはTwonky含め6種。
つまり、複数のサーバーソフトを走らせることで、ひとつの機器が複数のサーバーとして機能する、ということ。
そんなことをして意味があるのかと言われれば……あるにはあるのだが、実際の運用はなかなかに難しい。
さて、一言で『サーバーソフト』と言っても、実は多種多様なものがあるということを分かってもらえただろうか。
決してTwonkyだけがサーバーソフトというわけではないのである。
しかし、大事なのはここからだ。
何度も何度も述べてきたが、PCオーディオにおいてもネットワークオーディオにおいても、基本的にタグに基づいて音源のブラウズ/選曲を行う。
それではサーバーソフトによって何が違うのか。
サーバーソフトは何を担うのか。
『どのタグを参照してデータベース化を行い、どのような階層構造で音源/ライブラリを提示するか』。
これこそ、サーバー/サーバーソフトが担う極めて重要な部分である。
核心である。絶対に覚えてほしい。
そして、このサーバーソフトによって異なる『ブラウズ/選曲の際の階層構造』のことを、特に『ナビゲーションツリー』と呼んでいる。呼び方は色々あるようだが、意味するところは同じ。
このタグベースのナビゲーションツリーは、サーバーが読み込んでいる音源のフォルダ構造とは独立している。
例えば、「NASには作曲家→指揮者→アルバムという風に音源フォルダを構築しているのに、コントロールアプリではそのように表示されない!」という話を聞く。
しかし残念ながら、フォルダの構造をどれだけ頑張って構築したところで、あくまでタグに基づくナビゲーションツリーには反映されないのである。
一方で、フォルダベースのライブラリを活用する方法もきちんと存在する。大抵のサーバーソフトのナビゲーションツリーには直接フォルダ構造を見ていく――いわゆるフォルダ掘りをするための「フォルダー」という項目が用意されている。こだわりを持ってフォルダベースのライブラリを構築している人はこれを使おう。ただし、ブラウズ/選曲の際にフォルダ掘りをしたところで、ソフトにおける音源の情報は基本的にタグが参照されることに変わりはない。決してタグをおろそかにしていいということにはならない。
サーバーソフトが変わればナビゲーションツリーも変わる。死ぬほど重要なことだ。
最悪の場合、「何の気なしにNASを買い替えたら、今までの選曲方法がまったく使えなくなってしまった」なんてことが起こり得る。
よって、サーバーソフトやナビゲーションツリーの検証や吟味もなしに、「オーディオ用NAS」とかなんとか言って製品をすすめること自体、本来であればあり得ない。
無責任の極みである。
では、今回の記事で登場したサーバーソフトについて、それぞれのナビゲーションツリーの一端を見ていくとしよう。
こんなに違うのか、と思うかもしれない。
その通り、こんなに違うのである。
サーバーソフトそれぞれの詳細は個別記事を参照のこと。