【レビュー】LUMIN A1
LUMIN A1を試す・音質編
【インプレッション】LUMIN S1
半年間に及ぶハードな運用で、中身もだいぶあったまったはず。
S1との比較も含めつつ、あらためてA1の音を語ろう。
とにかく今回は聴く。
○再生環境
LUMIN A1
↓RCA
DAC2 HGC(プリとして使用)
↓XLR
X-PW10
↓
Dynaudio Sapphire
今回の記事に向けて聴いた音源。
オーディオ的なチェックとしても使える曲もあれば、純粋に趣味で選んだ曲もある。
下に行くにつれて色々とやけくそ気味になるのは気にしてはいけない。
「Corrinne May / Safe in a Crazy World」より「Littele Superhero Girl」
私のゴールデン・リファレンスたる「Angel in Disguise」を含むアルバムの一曲目。
冒頭のピアノからして素晴らしい鮮やかさ。そして声のエネルギッシュさときたら最高だ。
「Iona / Beyond These Shores」より「Prayer on the Mountain」と「Treasure」
この2曲は冒頭から途切れることなく続き、実質的な1曲と捉えていいだろう。
闇の中に清廉な音が漂い、右へ左へ光の粒子を撒いていく。そして雪崩れ込む「Treasure」が奏でるめくるめく多幸感。必ずしも録音的に優れているわけではないものの、再生機器がどれだけこの多幸感を表現できるかが肝だ。
「Iona / Open Sky」より「Open Sky」
もういっちょIonaから。アルバムの表題曲にして、これまた多幸感に満ち溢れた爽快極まる曲。Ionaはちょっと捻ったというか、独特の渋みのある曲が多い中で、「Treasure」と「Open Sky」は実にストレートな喜びを感じさせる曲。Joanne hogg嬢の歌声に酔うべし。ゼノギアスとゼノサーガをプレイした人は特に聴くべし。
「Tingvall Trio / Vattensaga」より「Hajskraj」
ジャズ素人が聴いても楽しめるうえに録音的にも超優秀という美味しすぎるTingvall Trio。その中でも特に清涼感と疾走感に満ちた曲。
ちなみにタイトルをどう発音するのか不明。
「吉本佳代 / duodji」より「Life」
NHKみんなのうたで聴いた「アオゾラ」の衝撃。滋味溢れる歌声は素晴らしいの一言。
実質的な活動停止状態が残念でならない。
「Yes / Relayer」より「Sound Chaser」
ドラムとベースが全力疾走を始めたと思ったら、今度はギターとキーボードも加わって爆走する文字通りの「音の追いかけっこ」。
ステレオ感全開で展開するドラムとベースの躍動をいかに解きほぐし、いかに力強く再生するかが肝。
「The Winery Dogs / The Winery Dogs」より「I'm No Angel」
やたらめったらパワフル、元気いっぱいに音が飛んでくるくせしてちっとも平面的ではないし、そこはかとない立体感さえ感じる海外ロックの音。なぜこうも日本と音が違うのだろうか……
GOD OF WAR2のサントラより「The Isle of Creation」
ラスボス戦BGM。至高神と物理的に殴り合う異様な昂揚感をこれでもかと盛り立てる神曲。
Halo3のサントラより「One Final Effort」
神曲揃いのHALOシリーズの中でも特に神曲。HALO3のテーマ曲にして最終局面で流れるという実に素敵な曲。しかし残念ながら録音的にはそれほどでもないので、本編の興奮を再現するのはたやすいことではない。
「サラ・オレイン / SARAH」より「Beyond the Sky」
ゼノブレイドのエンディングテーマ。このアルバムに入っているものはそのアレンジ版。
声の魅力としては極致にある一曲。光田節全開なのがさらによし。
「現代日本の音楽名盤選(5)」より「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」
一応クラシック枠。
Genius Party BeyondのBD化はまだですか。
「toe / songs, ideas we forgot」より「Leave word」
インストゥルメンタル・ロックという音楽があるということを知った記念すべき曲。各楽器が大暴れしつつオーディオ的な均整もしっかり取れている稀有な名盤。
一瞬の静寂の後に吐き出される「ばしゃーん!」は、学生時代にこのアルバムを教えてくれた友人と二人して新しいオーディオ機器を仕入れるたびに聴いていた懐かしの音。
アナ雪のサントラより「Let It Go」
流行りものもひとつ。
それにしても、「魔法にかけられて」にも出演していたイディナ・メンゼルがこんなに歌が上手だとは思わなんだ。
ブレンパワードのサントラより「In My Dream」
これもBD化はまだだろうか。
「The pillows / Fool on the planet」より「フール・オン・ザ・プラネット」
アウイエー!
LUMIN A1はネットワークオーディオプレーヤーである。
ネットワークオーディオプレーヤーである以上、その価値を音質だけで判断することはできない。
しかし、ネットワークオーディオプレーヤーである以前にオーディオ機器である以上、音質が重要であることに変わりはない。
LUMIN A1は100万という値付けに相応しい音質を備えている。高音質であると胸を張って言える。
解像度にせよ、情報量にせよ、帯域の伸びにせよ、高級なオーディオ機器に求められる音質水準は軽くクリアしている。半年間の運用を経て、空間もよりストレスなく前後左右に広がるようになった。「Sound Chaser」や「I'm No Angel」の狂騒も余裕で解きほぐしてみせる。「Leave word」の一撃もかつてない鮮烈さだ。
何より、LUMIN A1は「魅力的な音」がする。音はいいけど聴いていて楽しくない、そんなことはまるでない。
LUMIN A1の音は中低域に独特の厚みを持っている。私以外の色んな人も似たようなことを言っているし、的外れな感じ方ではないはず。フラットにして透徹した音を提示するLUMIN S1とはこの点で異なる。
そして、この中低域の厚みこそ、LUMIN A1が奏でる音に大いなる躍動感を与えている。ともすれば力感がないなどと言われがちなPC/ネットワークオーディオの領域において、この音は貴重であるはず。
私のシステムは決して低音をもりもり出すシステムではない。それどころかかなり控えめであるにも関わらず、LUMIN A1を導入した途端、耳で聴け、腹でも感じられる輪郭明瞭な低音が突如として現れた。低域の盤石な下支えに厚く熱い中音域が重なり、高域も実に爽快に抜けていく。とにかく何を聴いても楽しいのである。CD/ハイレゾ問わず良録音の音源はさらに実力を発揮し、それほどでもない音源でも躍動的に聴かせてくれる。ストイックな高音質追求路線はS1に譲って、A1は聴かせ上手であり楽しませ上手。無論、非常に高いレベルの音質を実現して上でのことだが。
LUMIN A1の「魅力的な音」を構成するうえで、もう一つ非常に重要な要素がある。
それが「声」だ。
ジャンル問わず「歌」が大好きな私にとって、魅惑のボーカルは何ものにも代えがたい。
LUMIN A1の紡ぐ「声」は、強い実在感を伴って一歩前に出て、力強くユーザーに働きかけてくる。生命力に漲り、輝かしい。上品一辺倒ではなく、荒々しさも刺々しさもありのままに表現し、情熱的で官能的。
あくまで整然と端正に歌うLUMIN S1とはこの点でも決定的に異なる。やはりどことなくハイエンドの色香を感じさせるS1に対し、A1はとにかくストレートに音が飛んでくる。
こと声の魅力に関していえば、私はS1よりもA1を圧倒的に推したい。
LUMIN A1は卓越した性能からオーディオ的な快楽を存分に味わわせつつ、その主眼はあくまで音楽を楽しませることにある。
毎日楽しいことこの上ない。
ちなみに、L1と組み合わせるとさらに豹変するのだが、現状でもまったく不足も不満も感じない。
長く付き合っていきたいものだ。