【レビュー】Ediscreation Fiber Box 2 “JAPAN STANDARD MODEL”

【レビュー】Ediscreation Silent Switch OCXO “JAPAN STANDARD MODEL” - DELA S100との比較https://youtu.be/DFBamf4E7YQ  ハブで音は変わるか、なんて話をしていたのも今は昔、すっかり確立された感...

 私は光アイソレーションにおいて重要なのは、「オーディオ用ハブの前」プレーヤー(あるいはLAN DAC)の前」の二か所だと考えている。前者は「オーディオ用ネットワークへのノイズの侵入を上流で防ぐ」、後者は「システムの後段に直接繋がる機器をネットワーク由来のノイズから解放する」という意味で。後段のシステムに直接繋がるので、光アイソレーションの重要度/効果は後者の方が大きい。

 それを踏まえて、私のシステムの接続図はこうなっている。

 光メディアコンバーターを使ってオーディオ用ハブ/DELA S100の前、Diretta Aperitivo USB-SFPを使って「プレーヤー」でもあるオーディオ用PCの前、SONORE opticalModule Deluxeを使ってDST-Lepusの前、この3か所を、上流から光で直結(光LAN接続)している。この「光で直結」という部分が重要であり、これこそ機器がSFPポートを搭載することの価値だと考えている。

 とりあえずオーディオ用PCのことは考えないとして、以上のような構成はオーディオ用ハブであるS100がSFPポートを2個搭載し、さらにプレーヤーであるDST-LepusがSFPポートを搭載しているからこそ実現するものだ。もしここでハブもプレーヤーもSFPポートを搭載していなかったら、光アイソレーションを実践しようと思えば複数の箱が追加で必要になる。

 この「箱が増える」という問題、「こんなんじゃ光アイソレーションのメリットよりも、箱やら電源やらケーブルやらが増えまくることのデメリットが上回るんじゃ……?」という疑問は、LUMIN X1とSOtM sNH-10Gの組み合わせを試した時点でいろいろと考えた。

 その結果、光アイソレーションの効果そのものは認めるにしても、そもそもSFPポートを搭載しない製品に対しては、大量に箱やケーブルを増やしまくってまでやるほどのことではないのではないか、というのが私の到った考えである。

 では、もし、SFPポートを搭載しない製品に対しても、諸々のデメリットを抑えつつ光アイソレーションのメリットをもたらす「何か」があったら……?

 
 ……まさにその「何か」に該当するのが、Ediscreationの「Fiber Box 2」である。どのように呼べきか悩むが、オーディオの文脈からすれば「光アイソレーター」といったところだろうか。

概要

 Fiber Box 2は、「LANケーブルで接続する機器に対し、1台で光アイソレーションを行う」ための製品である。次の図を見てもらうのが一番手っ取り早い。

 光メディアコンバーターを使って光アイソレーションを行うためには、

・光メディアコンバーター×2
・光SFPモジュール×2
・光ファイバーケーブル
・電源ケーブル×2
(外部電源を使う場合はそれも追加)

 という具合で、色々なものが必要になり、考えなければならないことが多い。「こんなんじゃ光アイソレーションのメリットよりも、箱やら電源やらケーブルやらが増えまくることのデメリットが上回るんじゃ……?」と思ってしまうのも当然なのだ。ここで光メディアコンバーターにオーディオ用の製品、例えばSONORE opticalModule DeluxeやSFORZATO MC-RJ45を使うことで音質的に担保されるとしても、モノが多いことに変わりはない。

 一方、Fiber Box 2を使って光アイソレーションを行うためには、

・Fiber Box 2
・電源ケーブル

 だけで済む。

 光アイソレーションに関わる要素、変換モジュールや光ファイバーケーブルやリニア電源を徹底的に吟味したうえでオーディオ的にしっかりした筐体にパッケージングし、さらに高精度なクロックを搭載して動作の最適化とジッター低減に万全を期した製品、それがFiber Box 2というわけだ。

 
 ちなみにブランドを主宰するエディソン氏によれば、

FiberBox2単体で使用する場合はネットワークプレーヤーなどの手前に、Silent Switch OCXOと併用する場合は、ルーターの直後に接続することを推奨しています。

 とのことだ。

外観・仕様


 Fiber Box 2の筐体は同ブランドのSilent Switch OCXOと同様の思考で作られており、航空機グレードのアルミニウムから機械加工され、じゅうぶんな剛性感と重さ(2.8kg)を持つ。


 背面。LANケーブルの入出力用にRJ45ポート(1G)が2つあるだけで、使い方で迷うような部分はない。


 底面。平坦なのでインシュレーターの類は使いやすい。

音質

 私は光アイソレーションにおいて重要なのは、「オーディオ用ハブの前」プレーヤー(あるいはLAN DAC)の前」の二か所だと考えているので、それに沿ってFiber Box 2の検証を行った。

 
 まずは「オーディオ用ハブの前」で、次の①と②の比較。


 ①でS100の前段に使っている光メディコンは例によってオーディオ用の製品ではない。

 つまり、「オーディオ用ではない光メディアコンバーターを使ってS100に光で直結する場合」と、「Fiber Box 2で光アイソレーションを完結させ、LANケーブルでS100に繋ぐ場合」の比較である。
 
 これ、単純に考えれば通過する経路が少なく光で直結できる①の方が良さそうなものだが、意外なことに、②に軍配が上がった。

 今回のメイン試聴曲となったLuther Vandross「She’s A Super Lady」では、②にするとベースやドラムの音像がぎゅっと引き締まって解像感が向上し、コーラスの存在感も増す。メインのボーカルはより力強く飛んでくるようになる。歴然とした、ぎょっとするような差ではないものの、トータルではFiber Box 2を使った方がよりグレードの高い音が得られた。

 ①ではオーディオ用ではない光メディアコンバーターを使っていること、Fiber Box 2とS100にそれなりのグレードのLANケーブルを使っていることなど、この結果に到った理由はいろいろと考えられるが、いずれにせよ「光アイソレーションを行ううえで、必ずしも光直結がすべての場合において勝るわけではない」という認識にFiber Box 2は大きな実感をもたらす。S100の前段のメディコンも換えなくちゃいかんな……

 
 次に、プレーヤー(あるいはLAN DAC)の前」ということで、①と次の③の比較を行った。

 ①において光で直結しているDST-Lepusに、③ではあえてRJ45用モジュールを使ってLANケーブルで繋げるようにし、S100とDST-Lepusの間にFiber Box 2を挟むという形である。

 これまた単純に考えれば光で直結できる①の方が良さそうなものだが、③では低域の厚みや空間の広がりにおいて優位性を感じさせた。ただし①と比べて音像はいささか肥大し、音の輪郭にも曖昧さが感じられる。面白いことに①と②の比較とは逆の方向性で、良く言えば「聴き応え」が増し、悪く言えば「大味になった」印象だ。好き嫌いの範疇と言っていいレベルではある。

 これはむしろ、①ではS100のSFPポートを使わずSONORE opticalModule Deluxeを追加するというかなり「盛った」内容で光直結をしているにもかかわらず、絶対値においてそれに迫る音を聴かせたFiber Box 2を讃えるべきだろう。

 ①と②、①と③の比較は、「SFPポートを搭載している機器で、光直結をしている状態とのガチ比較」である。そのうえでこの結果なのだから、Fiber Box 2の効果の大きさは言うまでもない。

 
 最後にお楽しみ・Ediscreationフルセットということで、④Silent Switch OCXOとFiber Box 2の組み合わせを①と比較する。

 これはエディソン氏の推奨する使い方でもある。オーディオ用PCがDiretta Aperitivo USB-SFPで光直結できなくなってしまうが、fidata HFAS1-XS20から再生するので特に試聴で問題はない。

 こうなるともう④は①を全面的に上回る。Silent Switch OCXOの静けさにFiber Box 2の研ぎ澄まされた描写があわさり、音楽が精緻に、深々とした空間でもって描かれる。ぐいぐいと音楽を押し出してくる方向性とは異なるが、エネルギー感や熱量といった要素が①から落ちているわけではない。

映像ストリーミングサービスでの効果

 光アイソレーションはオーディオだけではなく、映像、つまり映像ストリーミングにおいても威力を発揮することは以前から言われてきた。まぁ、私の映像における主戦場はあくまでUHD BD/BDだし、「光メディコン2個使って光アイソレーションするなんてめんどくさすぎて死ぬ」と思ってきたので、私自身は特に実践はしてこなかったのだが。

 そこにFiber Box 2である。一台で光アイソレーションが完結する、面倒くさがりの私にどんぴしゃな製品である。こういうのを待っていたのだ。

 というわけで、私が使っているUHD BDプレーヤー、DP-UB9000とS100の間にFiber Box 2を挟み、Netflixのコンテンツで効果を検証してみた。

 これは効く。画質にも効くし、音質にも効く。私がNetflixコンテンツの中では画質音質ともに現状最上級だと思っている『タイラー・レイク -命の奪還-』を中心に見たが、画質においてはS/N感や解像感、音質においてはダイナミックレンジやディテール描写の向上が得られ、体験のグレードが一段上がる。

 映像プレーヤーにおいて、クオリティの向上でこだわる部分はもっぱらHDMIケーブル・電源ケーブル・セッティング関連の三点だと思うが、映像ストリーミングサービスを使ううえでは「ネットワーク」という要素も加わる。そこにFiber Box 2は見事にハマった。

 Fiber Box 2の価格は198,000円で、これはほぼDP-UB9000と変わらず、プレーヤーと同等の金額をアクセサリーに注ぎ込むのはいかがなものかと思わなくもない。しかし、今後間違いなく映像コンテンツの主流がディスクからストリーミングに移行していくなかで、Fiber Box 2のような製品が存在することは、オーディオビジュアルの趣味にとってきっと意義深いことだ。

 機会があれば、DP-UB9000だけでなくApple TV 4K(こないだ最新モデルを買った)との組み合わせも試してみたい。

まとめ

 私は光アイソレーションを行ううえで、SFPポートを搭載する機器に光で直結(光LAN接続)するに越したことはない、と今でも考えている。

 しかし、Fiber Box 2によって「必ずしも光直結がすべての場合において勝るわけではない」ということもあらためて実感した。やはり再生音は個々の要素の積み重ね、トータルで考えなければならない。たとえSFPポートを搭載する機器であっても、いい加減な光直結ではFiber Box 2にひっくり返されるを可能性はあるし、これは同時に「SFPポート非搭載の機器であっても光アイソレーションの恩恵をじゅうぶんに受けられる」ということでもある。

 実際問題、SFPポートを搭載して光LAN接続が可能な製品は現在でも極めて少数であり、Fiber Box 2の活躍の場はいくらでもある。
 
 

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