Bluesoundは独自のネットワークオーディオのプラットフォーム「BluOS」を擁し、それを搭載する比較的リーズナブルな価格帯の製品を手掛けるブランド。2019年、Bluesoundが日本に導入されたのとほぼ同じタイミングで始まったAmazon Music HDにいち早く対応したことで、一気に日本における立ち位置を確立した感がある。
Bluesoundはワイヤレススピーカー等も手掛けているが、オーディオコンポーネントとしては基本となるネットワークプレーヤーの「NODE 2i」、アンプ一体型の「POWERNODE 2i」、CDドライブとストレージを搭載する「VAULT 2i」の3モデルを日本導入時にラインナップしていた。
ちなみにBluesoundはNODEを「ワイヤレス・ミュージック・ストリーマー」と呼称しており、手持ちの(ローカルの)音源よりも、各種音楽ストリーミングサービスを聴くことに軸足を置いていることが伺える。
昨年には「NODE 2i」が「NODE」に、「POWERNODE 2i」が「POWERNODE」にそれぞれモデルチェンジされ、年末には日本にも導入された。NODEが8.5万円前後、POWERNODEが13万円前後で、少々価格は上がったものの、後述する機能と音質の向上からすればお得感すらある。
なお、モデル名の末尾に数字を付けなくなるのはiPadと同様で、これだと区別が付きづらいので記事タイトルに(2021)と表記している。厳密には「NODE(N130)」がモデル名のようだが……
今回、NODEの2021年モデルをリビングシステムのリファレンス機材として導入したので、前モデルのNODE 2iとの比較も念頭にレビューする。NODE 2iも動画でレビューしているので、興味のある人はそちらも参照。
目次
外観・仕様・機能
NODEの外観は基本的にサイズも含めてNODE 2iとほとんど同じだが、天板のデザイン(タッチLED)と仕上げの質感が変わっている。
天板のタッチLEDは近接センサーによって点灯し、5つのプリセットボタンのほか、再生/一時停止、ボリュームコントロール、前後の曲へのスキップが可能。天板についてはデザインと操作性の両面で前モデルから改善され、よりスタイリッシュな見た目に貢献している。近接センサーのオンオフとタッチLEDの点灯時間はアプリから設定も可能。
前モデルと同様にアナログ/デジタル音声の入出力、サブウーファー出力、LANとUSBポートを搭載。もちろんネットワーク接続はWi-Fiでも可能。電源はメガネ端子で変わりなし。そして、前モデルにはなかったeARC対応のHDMI入力が追加された。これによりテレビとの接続性、つまるところ一般的なリビングルームとの親和性が高まった。
NODEのネットワークプレーヤーとしての仕様は基本的にNODE 2iと同じ。各種ストリーミングサービスはAmazon MusicやTIDALをはじめ膨大な数に対応しており、そのほかにもBluetooth、Spotify Connect、TIDAL Connect、AirPlay 2、Roon Readyなど、相変わらず超が付くほどの多機能となっている。
再生可能な音源のスペックも192kHz/24bitで据え置きだが、その一方で搭載するCPUが強力になり(8倍高速化!)、DACも変更され、土台となる部分は大幅に強化された。
また新機能として、NODEはUSB音声出力が可能となり、USB DACと接続できるようになってシステム構築の幅が広がった。USB DACを使う場合はアプリの「設定」→「オーディオ」から「出力を選択」する。
しかし、USBで出力可能なのはS/PDIFと同じく192kHz/24bitが上限で、今までどおりDXDやDSDは再生できない。NODE本体の再生では192kHz/24bitまでの音源に限られるので、USB DACと繋いで352.8kHz/24bitやらDSD256やら再生してやろう、という密かな期待は叶わなかった。
もっとも、ロスレス/ハイレゾストリーミングであるAmazon Music HDもApple MusicもQobuzも音源のスペックは192kHz/24bitが上限値。世の中の限りなく大多数の人はそれが再生できればまったく困らないのだから、Bluesoundの姿勢は現実的に文句を言われるようなものではない。この辺りの仕様は、Bluesoundの「我々はDXDやDSDを聴いて喜ぶようなオーディオマニアではなく、各種ストリーミングサービスを楽しむ一般の音楽ファンの方を向いている」という意思表示と捉えるべきだろう。
どうしても手持ちのDXDやDSDの音源をネイティブに再生したいなら、その時は他の製品を選ぶしかない。
運用
NODEの操作は音楽再生から本体設定にいたるまで、iOS/android・スマートフォン/タブレット両対応の純正アプリ「BluOS Controller」で行う。ちなみにBluOS ControllerはPC版も用意されているが、もっぱらスマートフォン/タブレットで操作することになるだろう。
ネットワークプレーヤーとして
BluOS Controllerはネットワークオーディオのコントロールアプリとして、最上位の部類ではないものの、インターフェースやデザインを含めて完成度は高い。「使う機器を選び、音源をブラウズし、思うがままにプレイリストに登録し、再生操作を行う」という一連の流れはスムーズで、特にひっかかるところはない。
Bluesound製品が搭載するBluOSはネットワークプレーヤーの大勢を占めるUPnP/DLNAとは異なるプラットフォームであり、UPnP/DLNA畑でありがちな「純正アプリが貧弱でも使いやすいサードパーティ製アプリがあるからいいや」という逃げ道は使えない。
とはいえ肝心の純正アプリであるBluOS Controllerを含めてユーザビリティは良く練られており、今まで使っていたアプリの操作性によほどハマっているということでもない限り、使っていて不満噴出ということはまずないと思われる。
CPUの強化は音源のブラウズや各種操作へのレスポンスの改善に貢献するものだが、前モデルの時点でじゅうぶんレスポンスが良かったので、普通に音楽を聴くだけならあまり「早くなった」という感覚はない。とりあえず使っていてストレスのない「サクサク感」があることは確かである。
一方で、音源(NASまたはUSBストレージ)を読み込んでデータベース化(インデックス作成)するスピードは明らかにNODE 2iから向上している。BluOSはローカルの音源を再生する際には「サーバー」の役割も担っているため、この点でもCPU強化の恩恵は間違いなくある。
BluOS搭載製品はローカルの音源とストリーミングサービスの音源を同一のプレイリスト上で扱うことが可能で、音源の在処の区別なく、聴きたい音楽を縦横無尽に楽しめる。「Amazon Musicに対応するが、ローカルの音源と同一のプレイリスト上で扱えない」製品もあるなかで、これはBluOSの大きな強みといえる。
※上の画像でも明らかなように、BluOS Controllerは日本語表記の一部で文字上端が欠けている。実使用上の問題はないのだが……
ローカルの音源を再生する場合と、ストリーミングサービスの音源を再生する場合とでは、レスポンス(再生開始までの時間やシークへの反応など)に違いがある。具体的にはローカルの方が早い。ストリーミングでも、サービスによってレスポンスが違い、例えばTIDALとAmazon Musicでは前者の方が早い。「ローカル>TIDAL>>Amazon Music」くらいの明確な差がある。前モデルでも同様の結果だったことから、Amazon Music再生時のレスポンスがいまいちなのはNODE側ではなく、やはりサービス側の問題と思われる。
また、ブラウズの際のデザインもそれぞれ異なる。
ローカルの音源だとこうなる。BluOSが提供するナビゲーションツリーはごく基本的なものだということもわかる。
ここでもAmazon Musicだけしょぼいのだが、これもBluOS側ではなくAmazon Music側に何かしら原因があるのだと思われる。TIDALはオーディオ機器との統合を果たしてからだいぶ経つが、その点Amazon Musicはまだまだ道半ばなので、時間が経てば色々と変わってくるはずだ。
Roon Readyデバイスとして
製品の立ち位置的に、別途それなりに投資が必要なRoonではなく本機単体での使用が多いと思われるが、Roon Readyデバイスとして使った場合の動作も盤石である。Roon経由であれば、ネイティブではないもののDXDやDSDもNODEで聴ける。
BluetoothやSpotifyやAirPlayについては特に語ることがないので省略。
HDMI ARCを使ってテレビと組み合わせる
HDMI ARCを使ってテレビと接続する際は、「設定」→「プレーヤー」→「入力のカスタマイズ」→「HDMI ARC」から、「自動検知」を有効にすると便利。これでテレビの電源を入れると自動的にNODEの入力がHDMIに切り替わり、テレビの音声をNODE経由で楽しめるようになる。
なお、テレビ側の設定として、ARCを有効にするのはもちろんだが、音声出力をPCMにする必要がある。そうしないとBluOSに怒られる。
HDMI入力時はテレビのリモコンでNODE側の音量調整を行うことが可能になる。
POWERNODEと異なりアンプを搭載しないNODEでも、然るべきアクティブスピーカーと組み合わせるなどすれば、テレビを中心にしたシンプルかつ便利なシステムを構築可能だ。
音質
NODEの価格と仕様はオーディオファンだけでなく幅広い音楽ファンに訴求し得るものなので、音質の評価はリビングシステムで行っている。
端的に言って、NODEの再生音はNODE 2iと別物レベルで良くなった。NODE 2iからの最大の変化はずばり音質だ、と言ってしまえるほどに。
NODE 2iもじゅうぶんに価格を納得させるだけの音は出していたが、今回のNODEは(リビングシステムの必ずしも高価ではない機材との組み合わせだろうと)オーディオ的な快感、音楽を聴いていてスリルと興奮を味わえる次元に達している。レンジの広さは高低両方に申し分なく、S/N・ディテール描写・空間表現、いずれも素直に感心する。ロッシーとロスレスの違い、CD相当とハイレゾの違いなどもしっかりと描き分ける能力がある。DACの変更だけでなくCPUの強化も再生音にプラスの影響を与えているのか、いずれにせよNODE 2iからの改善は期待値を大きく越えている。
NODEはハーフサイズのごく小さな筐体で、他の機器のように「◯◯回路搭載」やら「◇◇技術採用」といった、いかにもオーディオファンが喜びそうな、マニアックな宣伝文句はあまり使われていない。精々「いいDAC使ってますよ」くらいのものだ。それでいて、再生音において「音楽が聴ける便利アイテム」とは一線を画し、「オーディオ機器」として胸を張れるクオリティを実現しているのだから、素晴らしいと言うべきか、奥ゆかしいと言うべきか。
ここまでくると、伝統的なフルサイズ筐体のネットワークプレーヤーは、最低でも優れたユーザビリティという同じ土俵に立たない限り、もはや製品トータルの魅力でNODEに太刀打ちできなくなるのではないか、とさえ思えてくる。
ただし一点。NODEは本体でボリューム調整が可能だが、ボリュームの品質はおまけレベルと思った方がいい。上述したようなテレビと組み合わせるシーンならばさておき、音質を重視するなら基本的に本機のアナログ音声出力は固定で使うべきだ。
まとめ
BluOS搭載機は純正アプリも含めて一台で「サーバー」「プレーヤー」「コントロール」の三要素が揃うため、UPnP畑のように組み合わせでアレコレ悩む必要がなく、安定して高い水準の体験が得られることは大きい。本機で初めてネットワークオーディオに触れる人は幸いであり、BluOSを通じてネットワークオーディオの何たるかを学んでステップアップするもよし、そのままBluOSに安住の地を見出すもよし。
前モデルの美点をすべて引き継ぎ、出来ることを増やし、CPUの強化で将来にわたる発展の土台を確保し、音質も大きく向上。NODEは価格と機能性と音質を高次元でバランスさせ、現代の音楽事情に即して高度に作り込まれたネットワークプレーヤーであり、オーディオファンだけでなく、一般の音楽ファンを含む多くの人にとって魅力的な製品に仕上がっている。
ただし、仕様上ガチのオーディオマニアに向けた製品ではないので、その点だけは要注意。