【レビュー】Bluesound POWERNODE (2021)

 2021年末にモデルチェンジしたBluesoundの製品のうち、「プレーヤー」の「NODE」に対し、アンプを搭載し、「あとはスピーカーを繋ぐだけでシステムが完成するよ」というモデルが「POWERNODE」である。

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 価格はNODEが83,600円に対し、POWERNODEが127,600円。「エントリークラスのオーディオ機器」として見るとなかなかだが、同様の性格のマランツ「NR1200」が値上げの結果定価ベースで同程度になっていることを考えると、この手の製品としては順当なところと言うべきか。

 なお、このPOWERNODEしかり、マランツのNR1200しかり、近年世界中のオーディオメーカーから登場している「基本はプリメインアンプであり、単体でストリーミングサービスに対応し、テレビとの連携も考慮した、スピーカーを繋げるだけでシンプルなシステムを構築できる、現代的なスタイルに適応したオーディオ機器」をどのように呼称すればいいのか、まだ私の中で結論を出せていない。

 「ネットワークオーディオ対応アンプ」と呼ぶのはしっくりこないし、単に「多機能アンプ」と呼ぶのも芸がないし、DARKOに倣って「Future-Fiアンプ」とでも呼ぶべきだろうか?

 ……いや、既に「未来」ではなく「現在」だしな……

 
 まぁそれはさておき、近い将来にやろうと思っているとある企画を見据えて最近POWERNODEを導入したので、NODEとの比較も交えてレビューを行う。

外観・入出力

 外観はそのまんま、「厚くなって奥行きが伸びたNODE」である。

 そうはいってもサイズは220 x 190 × 70mmであり、依然としてコンパクト。Wi-Fiに対応していることもあいまって、きっと様々な場所に苦も無く置ける。

 NODEとPOWERNODEを並べてみたの図。

 天板のデザイン、近接センサー&タッチLEDもNODEと同様。

 背面。アンプ内蔵なのでスピーカー出力がある。NODEと異なり、本機を「プレーヤー」として使うための音声出力は基本的に持たない。電源は3Pタイプなので、こだわる余地はある。

 底面。実際の設置に使うゴムは底面積に比べてかなり小さい。

機能・運用

 POWERNODEは当然ながらBluesoundのネットワークオーディオのプラットフォーム「BluOS」を搭載しており、ストリーミングサービス対応など、基本的な機能のほとんどはNODEと共通。

 というわけで、NODE(あるいはさらにその前のNODE 2i)のレビューも参照されたし。

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NODEとの違い

 NODEと大きく異なる点、そしてPOWERNODEを選ぶ/使う際の大きな注意として、スピーカー以外の出力はヘッドホン・サブウーファー・Bluetoothのみという点が挙げられる。

 POWERNODEの背面にはUSB端子もあるが、NODEと異なりUSB DACとの接続に対応しない。試しにiFi audioのZEN DACと繋げてみたら、ZEN DACの電源は入るものの、機能はしなかった。

NODEと異なり、USB出力のオプションが用意されていない

 以上のことから、POWERNODEはあくまで単体で完結するアンプとして見るべきで、プレーヤーとして使うことはまず無理と考えるべきだ。

二台のPOWERNODEを使ったサラウンド再生

 POWERNODEは基本的に2chステレオアンプだが、もう一台のPOWERNODE、あるいは同社製ワイヤレススピーカーを追加することで、4chサラウンドのシステムを構築できる(それとは別にサブウーファーも追加できる)。もちろんAVアンプのように多種多様なマルチチャンネル・サラウンドを扱えるというわけではないにせよ、これはなかなかに凄い機能である。

POWERNODEでホームシアターシステムをワイヤレスにステップアップ

 
 輸入元のPDNにもう一台POWERNODEを貸してもらい、実際に二台のPOWERNODEを使ったサラウンド再生を試してみた。後方のPOWERNODEは、リビングシステムにサラウンドスピーカーとして常設しているParadigmの「Monitor SE 3000F」に接続した。

 二台のPOWERNODEをネットワークに接続し、アプリ「BluOS Controller」から「固定グループ」を選択。

 「固定グループを作成」。

 「ホームシアターグループ」。

 「続ける」。

 グループ名はテキトー。

 テレビに接続、つまりHDMI ARCで繋いでいるPOWERNODEを選択し、「次へ」。

 プレーヤー(スピーカー)の距離を選択。ちなみに調整は20cm刻みだった。
(この部分だけスクショを撮り忘れていたことに後で気付いたのでPDNのマニュアルから引用)

 音量調節。例によって、こういう時は後方の音を気持ち大きめにするとよい。

 セットアップ完了!

 こんな感じでホームシアターグループが作成されている。

 以降の設定はこんな感じで行う。

 サラウンドの効き具合は「サラウンドトリム」で調整可能で、その幅なんと±30dB!

 ここで設定できる「ステレオサラウンド」は「マルチチャンネルステレオ」とは異なり、あくまでメインのPOWERNODE側をフロントとした、DSPによるサラウンド創出になっている。ステレオサラウンドを有効にした状態で色々と曲を聴いてみたが、不自然さ、胡散臭さを感じさせることなくいい塩梅であり、例えば広い部屋を隅々まで、しかも極力違和感なく音楽で満たしたいといった時に活用できるだろう。

 また、この「ステレオサラウンド」はHDMI eARC経由の映像ソースにも使用可能である。

デスクトップオーディオでこんな使い方もできる

 POWERNODEはコンパクトであり、いかにもデスクトップオーディオに使いたくなるサイズといえる。

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 ただ、POWERNODEは(ステレオミニだけど)アナログ入力が可能とはいえ、音質上、さすがにPCのヘッドホン出力から直接繋ぐなんてことは正直したくない。

 となれば、なにかしらPCとPOWERNODEの仲立ちをするUSB DACが必要になるわけだが、機器が二台となるとそれなりのスペースが必要になり、ただでさえ貴重な机上のスペースをどうやりくりするのか、という問題が出てくる。

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 そんな時にひとつの選択肢、解決策として考えられるのが、いわゆる「モニター台」の活用。

 こんな風に。

このセットアップではモニターが31.5インチと大型なぶん、視線がかなり上を向いてしまうのが難点だが、それはそれということで

 POWERNODEとUSB DACの組み合わせにより、「PCを使っている際はUSB DACを介してPCの音を再生し」「PCの電源を落としてもPOWERNODE単体でストリーミングサービス等で音楽を聴ける」という環境が出来上がる。

ここでPOWERNODEをNODEに&パッシブスピーカーをアクティブスピーカーに置き換えても、本質的には同様の環境が構築可能

 入力切替でPOWERNODEのアナログ入力を選択するめに、その都度BluOSアプリを使わなければいけないというのが少々手間だが、致し方なし。

 いずれにせよ、POWERNODEによって「オーディオシステムがデスク上で完結、なおかつPCを介さずとも音楽が聴ける」環境が構築可能であり、「こんな使い方もある」ということで紹介しておきたい。

音質

 試聴はリビングシステムで、スピーカーにはB&W 706S2を主に組み合わせて行った。

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 ちっこいPOWERNODEにスピーカーを繋ぐだけで、ローカルの音源も、Amazon Musicを含むストリーミングサービスも、テレビの音も全面的に楽しめるシステムが完成する。「スピーカーを追加するだけ」という売り文句は決して間違いではない。

 再生音は、見た目に反して押し出しの強さや豊かなエネルギー感が真っ先に意識されるパワフルなもの。ローカル音源の再生、Amazon Musicを使ったストリーミング再生の両方において、とにかく音楽をめいっぱい浴びる楽しさ、充実感がある。もちろんパワー一辺倒の雑な表現ではなく、価格帯を考えればじゅうぶんなディテール描写、繊細さといった要素も備えている。

 生真面目なHi-Fiアンプとは方向性が違い、再生音には演出や加工の存在をそこはかとなく感じるとはいえ、結果として音楽を聴いた際の満足度の高さに繋がっており、悪くない。NODEのレビューで「オーディオ的な快感、音楽を聴いていてスリルと興奮を味わえる次元に達している」と書いたが、POWERNODEの音質傾向も共通と言っていい。一体型の強みとして、プレーヤー部分との相乗効果を最大限出せるようにアンプ部分もしっかりと作り込んでいる印象だ。

 そして、最初「こんなもんだろう」と思って設定していたボリュームを慌てて下げたほどに、POWERNODEの出力には余裕がある。巨大なホールを大音量で充満させようとでも思わない限り、パワーが不足するなんてことはないと思われる。

 あまりにも軽々と706S2を駆動するので、「Dynaudioならどうなん?」と思い、Emit20を組み合わせてみたが、こちらもまったく問題なしで、しっかりと躍動する音を楽しめた。

Dynaudio Emit20
私のディナウディオ愛を抜きにしても、10万円台で買えるスピーカーとしては最強クラスだと思う

 POWERNODEを二台使った4chサラウンド再生についても触れておく。

 この状態のPOWERNODEは「Dolby Audio」の再生に対応しており、「はたしてどの程度入力されたオリジナル音声に忠実か」はもう一台のPOWERNODEの貸出期間中には判断できなかったが、「ステレオサラウンド」とは別物の、「明確な意味のあるマルチチャンネル・サラウンド」を実現する。例として、Netflixのコンテンツと、PS5でのBD再生でサラウンド再生を確認した。

 4chでもサラウンド再生の醍醐味は十全に味わえるのはもちろんだが、ここで驚いたのは純粋な音。元々が2chステレオアンプであるPOWERNODEを贅沢に二台使っているおかげか、毎度おなじみNetflixの『タイラー・レイク -命の奪還-』では、前から後ろから襲い掛かる銃撃の威力と、それに伴うリアリティが半端ではない。それこそ、下手なAVアンプの4ch再生を軽く越えていると思えるほどに。

 当然ながら自動音場補正だのDolby Atmosだの大量のHDMI入出力だの、そういったAVアンプが備える機能とPOWERNODEは無縁だが、「テレビと親和性の高いアンプ」から一歩進んで、「同社製品の追加でサラウンド再生も可能」という拡張性・発展性を備えるのには素直に感心する。

まとめ

 「NODE」「POWERNODE」どちらがおすすめか?

 オーディオを趣味にしたい人は、NODEがおすすめである。アナログ可変出力が可能なので、アクティブスピーカーと直接繋げてもいいし、パッシブスピーカーを使う場合でも、POWERNODEを買うのと同じ合計予算で何かしらプリメインアンプが買える。将来的にもっとハイクラスのDACを買った暁には、純粋なネットワークトランスポートとしてNODEを使うのもアリだ。

 音にはこだわりたいが、オーディオに凝るつもりはない人は、POWERNODEがおすすめである。NODEと異なり単体プレーヤーとは使用できず、発展性は(Bluesound製品同士によるサラウンド化を除き)ないに等しい。とはいえ、純粋なアンプとしてもPOWERNODEのクオリティは立派である。上位クラスのスピーカー、具体的にはB&Wの706S2を元気いっぱいに鳴らせる力があり、より難物(と私は思っている)のDynaudioのEmit20が相手でも力不足感はない。

 BluOSというプラットフォームの高い完成度、今なお貴重な「Amazon Musicに万全に対応するオーディオ機器」という点も含め、POWERNODEはその小さな体に大きな可能性が、「きっと現代のオーディオに求められる姿というのはこういうものなんだろうなあ」という実感が満ちている。

 
 

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