音楽ストリーミングサービスが世の中に完全に浸透した現在、それらサービスへの対応、つまりネットワークオーディオの機能が強くオーディオ機器に求められるようになった。
USB DACを中心に据えていたメーカー(中華系も含む)も続々と製品にネットワークオーディオ機能を盛り込むようになったし、今までネットワークオーディオどころかファイル再生全般と縁の無かった著名な海外ハイエンドブランドでも急激にネットワーク対応が進んでいる。音楽ソースの劇的な変化がいかにオーディオに対しても影響を及ぼしているか、よくわかるというものだ。
(中略)
だいたい、オーディオメーカーたるもの1から100まで自社開発してナンボとか言い出したところで、ネットワークオーディオ製品でそれを実現できるメーカー/ブランドは現実的に極めて数が限られる。それに、上述した「ファイル再生全般と縁の無かった著名な海外ハイエンドブランド」が次々とネットワークオーディオに対応できているのも、蓋を開けてみれば外部のソリューションを使っているから、という理由が大きい。
近年では世界中のハイエンドブランドから続々とネットワークオーディオに対応する製品が登場しており、それを実現するソリューションとしてかなり大きな存在感を放っているのがConversDigitalのプラットフォーム「mconnect」である。ちょっと目を凝らせば、みんな知ってるあんなメーカーやこんなブランドなど、かなりの数の製品がmconnectを採用している状況が見て取れる。
ConversDigital……? mconnect……? という人も多いと思うが、コントロールアプリ「mconnect Player」を作っている会社だと言えばわかるだろう。
つまるところ「mconnect Player」「mconnect Control」といったアプリを含めて、ConversDigitalが提供する「mconnect」という名のプラットフォームというわけだ。ちなみに「mconnect Player」は2022年現在からすれば一線級とは言えないまでも、汎用アプリとしてはそれなりの出来栄えといったところである。
ConversDigitalは「CDMCM-2121R」「CDMCM-210」というモジュールをリリースしており、プラットフォームにmconnectを採用する今までの製品は基本的にこれらを搭載していた。
しかし、「CDMCM-2121R」「CDMCM-210」には「再生対応はPCM192kHz/24bit・DSD64まで」という重大な制限があり、これらを搭載する製品は往々にして「USB DACとして使った場合と、ネットワークプレーヤーとして使った場合では、再生可能な音源にスペック差がありすぎる」という問題が生じていた。
BluOSのようにそもそもハイスペックな音源で喜ぶようなオーディオマニアを相手にしていないプラットフォームならばさておき、ガチのハイエンドなオーディオ機器で、USBとネットワークで再生可能な音源に大きな差が生じるというのは、言うまでもなくほめられたものではない。
「同一機器におけるUSBとネットワークでのスペック格差」はmconnect採用製品に限らず今なお広く見られる問題であり、ハイエンドオーディオにおけるUSB DACとネットワークプレーヤーの立ち位置にも大きく影響している。
さすがにConversDigitalもこうした状況を座視していたわけではないようで、2020年に新しいモジュール「CDM4140」をリリースしている。
以下はデータシートからの引用。
Audio Interface
• I2S digital audio out – Master and Slave mode.
• DSD audio out
• 2 channel (stereo)
• PCM: Resolution up to 32bit, Sample rate up to 384KHz
• Native DSD up to DSD256 (11.2MHz), Supports DSD to PCM and DSD to DoP conversionNetwork Support
• Via USB interface, flexible selection of USB-WiFi & USB-LAN • WiFi: IEEE 802.11 b/g/n/ac (2.4&5GHz dual band)
• 10/100/1000 EthernetWiFi Mode and Setting
• Station Mode & Soft AP Mode
• Setting by Control App & PC setup programConnectivity
• DLNA 1.5 & UPnP AV 1.0 Digital Media Renderer
• Apple’s official AirPlay2 *Apple’s Authentication Coprocessor is required. Mconnect product does not include it.
• Spotify Connect • Roon ReadyMQA (Master Quality Authenticated) Support
• MQA Full decoding up to 32bit/384kHz
• Supports Core decoding only.Audio Format Support
• AAC, AIFF, MP3, FLAC, WAV, WMA, Apple Lossless, OGG, Monkey’s
* License and/or cost for codecs is not included in mconnect product.Internet Streaming Music Service Integration
• Spotify, Deezer, TIDAL, Qobuz, vTuner Internet Radio
* New internet music services can be added when they are available to integrate.
* Integrated internet music services can be removed depending on the service provider’s policy.Multi-room synchronous audio technology
Control App
• Music Player & DLNA/UPnP Controller, Integrated Internet Streaming Music
• Gapless Play ON/OFF, Multi-room control / Device setup
• Can be licensed with own Brand.
というわけで、晴れてmconnect搭載製品でもネットワークでPCM384kHz/32bit・DSD256まで再生可能になる。最新のモジュールなのにOpenHomeに対応しないのはいかがなものかと思うが、まぁその辺はユーザー側でBubbleUPnP Serverを使えばどうにでもなる。
既にConversDigitalがCDM4140を推奨していること、今までmconnectを採用していたメーカー/ブランドはそのまま(惰性で)採用を続けるであろうことを考えれば、今後登場する多くの製品でスペックアップが期待できる。これで「USB DACとして使えばPCM384kHz/32bit・DSD256まで再生できるのに、ネットワークプレーヤーとして使えばPCM192kHz/24bit・DSD64までしか再生できない」といった悲しい思いをする機会は間違いなく減るはずだ。
こうしたネットワークオーディオの機能を実現するためのソリューション、ないしプラットフォームは近年ますます重要性が高まっている。その中でも結構な存在感を占めるConversDigitalが、このようにしっかりとスペックアップを果たすというのは喜ばしいことだ。ネットワークオーディオ界隈ではConversDigital以外にも何社かソリューションメーカーがあるが、それらも負けじと頑張ってもらいたい。
そしてもちろん、ITF-NET AUDIOにも頑張ってもらいたい。
とにかく早いところ各種ストリーミングサービスに対応してもらわんことには……